ソーラーパネル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/27 08:10 UTC 版)
概説
ソーラーパネルは一般に、ひとつひとつは小さな太陽電池を複数集めて、何らかの枠・構造体に入れてパネル状にしたものである。枠はアルミが用いられることが多い。また、2枚のガラスの間にセルを挟みこみ、建材一体型として使用するケースもある。(右写真 建材一体型太陽電池 参照)
ひとつひとつの太陽電池の起電力は小さいが、それを複数直列に組むことで電圧を上げ、使いやすくしている。一般に、鉛蓄電池(12V)と組み合わせることも想定されたソーラーパネルは、蓄電池を充電するために、ソーラーパネル側の起電力は(蓄電池の12Vよりも高く)17~20V程度になるように設計されている。また電流量を増やすために、上述の直列のユニットが複数、並列に組んであることもある。
ソーラーパネルは硬いものがほとんどだが、柔軟性のあるもの(薄膜型の太陽電池を使ったもの)もある。
ソーラーパネルは、1枚単体でバッテリーなどと接続して使用することも可能である。1枚のソーラーパネルが発電できる電力は、そのサイズや結晶のタイプによる発電効率などによってそれぞれ異なっていて一概には言いにくいが、おおむね、一辺が数十センチメートル程度ならば、10ワット~100ワット程度である。一辺が数センチ程度の小さなソーラーパネルの場合は、1W以下~せいぜい数ワット程度である。住宅用は1枚が100W~200W程度。産業用は、大型で、250wから数百w程度のものが主流である。
住宅で用いられる太陽光発電システム(住宅の屋根の上などに設置するもの)では、複数のソーラーパネルが用いられていて、接続箱を介してパワーコンディショナーに接続されている。ソーラーパネルで発電された電力は家庭内で消費され、また売電という形で電力網ともつながっている場合があり、その場合は電力網へと供給される。
複数のソーラーパネルを組み合わせたものは、「ソーラーアレイ」「太陽電池アレイ」と呼ばれている。太陽光発電所を構築するには、その「ソーラーアレイ」を多数設置する。
ソーラーパネルは、人工衛星や宇宙ステーションでも使われている。
構造と仕組み
ソーラーパネルは太陽電池をパネル状にしたものである。パネル状の構造を保持する部分は、パネルの上層の場合も、下層の場合もある。上層にある場合を「表板構造」下層にある場合を「基板構造」という。
太陽電池は、光起電力効果を応用して、太陽光のエネルギーを電力へと変換する。よく使われるのはウェハーベースの結晶シリコンを使った太陽電池とテルル化カドミウムまたはシリコンを使った薄膜型の太陽電池である。結晶シリコンは半導体製造の原料でもある。
ソーラーパネルは、その内部で、複数の太陽電池を電気的に相互接続している。必要な電圧を得るため、直列に太陽電池を接続し、電流を確保するためにそれらをさらに並列に接続している。
ソーラーパネルの性能(太陽光を電力に変換する「効率」)を表す「太陽光変換効率」は、市販されているもので5%から18%。性能がほどほどに良いものなら、単結晶系は18%前後、多結晶系は16%前後となっている。(なおパネルの発電効率は、「太陽電池 1個」の発電効率より低い。太陽電池と太陽電池の間に「スキマ」があり、「スキマ」の部分は発電していないからである。)
一部のソーラーパネルは、レンズまたは鏡を使って太陽光をより小さな太陽電池に集める集光装置を採用したデザインのものもある。単位面積当たりの単価が高い太陽電池(ヒ化ガリウムを使ったものなど)を使って比較的安価なソーラーパネルを作ることができる[1]。
- 配慮すべき点、注意が必要な点
一部または全部が影に入ったり、夜になると電流の逆流が起きることがある。それを防ぐため、別途ダイオードを使うこともある[2]。単結晶シリコンの太陽電池のpn接合は光が当たっていないときに逆電流を生じさせる特性があるが、これは不要である。逆電流は単に電力を無駄に消費するだけでなく、太陽電池が熱を持つという問題もある。太陽電池は高温になるほど効率が低下するため[3] 、ソーラーパネルはなるべく熱を持たないのが望ましい。冷却を考慮した設計のソーラーパネルはほとんどないが、設置する際に背面から放熱できるようにするなどの工夫をすることが望ましい。
なお製造・輸送・設置・利用の各段階で壊れないように配慮しないといけない。特に、雹(ひょう)や雨、積雪の重みが問題となる。特にウェハーベースの太陽電池は脆いので注意が必要である。湿気が内部に入り込むと金属の配線や接続部分が腐食する危険性があり、薄膜型の太陽電池や透明導電性薄膜層も湿気に弱いため、注意しないと性能低下や寿命短縮に繋がる。
- 新しいアイディア
ソーラーパネルの構成によっては様々な波長の光で発電できるが、一般に太陽光のあらゆる波長をカバーすることはできない(特に紫外線、赤外線、間接光など)。つまり太陽光エネルギーの大部分を捨てていることになる。ソーラーパネルは適切な単色光を照射したとき最も効率がよい。そこで、太陽光を複数の波長に分け、それぞれのビームをその波長が得意な太陽電池に当てるという仕組みのソーラーパネルが提案されている[4]。また、赤外線を中心として発電できる太陽電池を使ったTPV(熱起電力)発電も提案されている[5]。
- ^ 高本達也、兼岩実「集光型化合物太陽電池」(PDF)『シャープ技報』第93号、シャープ、2005年12月。
- ^ “Diodes”. Kpsec.freeuk.com. 2010年10月18日閲覧。
- ^ 特許庁 技術分野別特許マップ「太陽電池」1.2.1 太陽電池が電気を発生する理由(半導体中での光変換:光起電力効果)
- ^ Very High Efficiency Solar Cell (VHESC) DARPA STO
- ^ IMECが廃熱で発電する太陽電池を開発、製造プロセスを低コストに 日経エレクトロニクス 2010年6月10日
- ^ “Global flexible and thin-film PV market expected to reach US$58b in 2019,reports by IntertechPira study”. Globalsolartechnology (2009年9月11日). 2011年1月11日閲覧。
- ^ “CTI Solar sales brochure” (PDF). cti-solar.com. 2010年9月3日閲覧。
- ^ 日本の自動車産業をさらに衰退させる「電動車」というまやかし - 政治・国際 - ニュース|週プレNEWS
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- ^ “保全地区内で太陽光パネルを設置する場合”. 奈良県. 2013年5月27日閲覧。
- ^ a b c 日本放送協会. “どうする!? 太陽光パネルの“終活””. NHKニュース. 2022年2月4日閲覧。
- ^ 稲生陽 (2015年9月6日). “太陽光発電:業者、無許可で危険斜面掘削 和歌山の山林”. 毎日新聞. 2015年9月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月14日閲覧。
- ^ 蒔田備憲 (2015年9月11日). “関東・東北豪雨:太陽光装置設置工事で堤防削られる 常総”. 毎日新聞. 2015年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月14日閲覧。
- 1 ソーラーパネルとは
- 2 ソーラーパネルの概要
- 3 モジュール
- 4 性能と寿命
- 5 設置システム
- 6 ギャラリー
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