ソニック・ザ・ヘッジホッグ3
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制作、仕様
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背景
1992年にセガに入社した飯塚隆は、新人研修の一環として『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』のデバッグ作業を通じてその完成度の高さに惹かれていた矢先、上司から本作『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3』を作るよう依頼され、二つ返事で引き受けた[11]。本作の開発はアメリカで行われるため、当時21歳だった飯塚は生まれて初めて海外に赴任することとなった[11]。
開発
渡米した飯塚は3人の企画メンバーのうちの1人であると同時に、レベルデザインを担当した[11]。 飯塚は2021年のシリーズ30周年記念インタビューの中で、レベルデザインの仕事を気に入っていたと話しており、「私が担当したステージは『メガドライブの性能を限界まで使う』という意気込みで,2面しかないBG(背景画像の表示枠)をそれ以上に見せるために,先輩に相談しながら工夫したりしました。」とも振り返っている[11]。
ソニック&ナックルズとの関連性
初期の企画では、ソニック&ナックルズとソニック3は一本のゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3』として発売される予定だった。
開発当初は3Dポリゴン演算処理用の特殊チップである「SVP(セガバーチャプロセッサ)チップ」を組み込む予定であったが、SVPチップの開発が遅れ、その影響で『ソニック3』の開発も停滞気味となっていた。しかし、北米市場では既に全米のマクドナルドで子供向けのファミリー層を購買対象にしたハッピーミール・キャンペーンとのタイアップにより『ソニック3』の発売日は1994年2月2日と確定していたため、開発リーダーの中裕司はそれまで1年かけて開発していた当初の『ソニック3』を断念して殆どゼロからの状態で新たに作り直す必要に迫られ、「製作期間の兼ね合いから、予定していたボリュームの半分を削らなくてはならなかった…」と語っている[12]。
また、バックアップ機能の搭載によって、当時としてはゲームに必要とするROMの容量が大きくなり、ROM製作に費用が掛かることになってしまったため、前編を『ソニック3』、後編を『ソニック&ナックルズ』へと内容を分け、後にROMカセット同士をドッキングで接続させるロックオンシステムを採用する事で、コストの低下も図っている[13]。これらの理由により、2つのソフトを組み合わせた時に完全版として遊べるため、ソニック3単体でプレイした場合は遊べるステージ数が少ないが、中裕司はユーザーに対して謝罪の意味も込めて『ソニック&ナックルズ』にはどんなROMを挿しても遊べるように膨大なパズル面を用意しており、そのうち『ソニック1』を挿した場合、収録されている2億面全てを遊び切ることができるようになっている。
前後編への分断前の名残として、ソニック3の裏技のステージセレクト画面には『CARNIVAL NIGHT ZONE』と『ICE CAP ZONE』の間の5面の位置に『FLYING BATTERY ZONE』の名前があり、『LAUNCH BASE ZONE』の後に『MUSHROOM VALLEY ZONE』(『MUSHROOM HILL ZONE』の初期の名前と思われる)と『SANDOPOLIS ZONE』の名前が残っている。
またソニック&ナックルズにおいてプレイすることができるナックルズ専用のステージのルートは、ソニック3単体の時点ですでに準備されており、裏技を使うことで入り込むことができる。そしてソニック3単体のミュージックセレクトでもソニック&ナックルズの通常ステージ、ボス、ボーナスステージの音楽を聞くことができる。
音楽
『ソニック1』、『ソニック2』のBGMはDREAMS COME TRUEの中村正人、『ソニックCD』のBGMは日本・欧州版が尾形雅史と幡谷尚史、北米版ではスペンサー・ニールセンによる作曲であったが、今作のBGMは社内のみでの制作となっている。 その中には、後にソニックシリーズに作曲家として携わる瀬上純(1993年入社)もいた[14][15]。
初期の企画では作曲をマイケル・ジャクソンに委託する予定だったという説がある。マイケル・ジャクソンの1993年の性的虐待疑惑の最中、セガはこれを取り消し社内での作曲に変更した。しかし、すでにこの時点でマイケル・ジャクソンは曲をほとんどすべて完成させていたので、これらの曲は作曲スタッフによって編曲されてゲームに収録されたといわれる。スタッフロールに彼と関係の深い数名がクレジットされていることや、後に発表された彼の曲に類似した曲が存在することなどから推測が飛び交ったが、中裕司をはじめ開発者はこの説を否定している(ただし、中は2022年にマイケル・ジャクソンが関わっていたことを示唆するようなツイートをしている[16])。
2009年12月、同ゲームの音楽に関わっていたブラッド・バクサーがフランスの雑誌『Black&White』のインタビューで、マイケル・ジャクソンと共に作曲をしていたことを明かした。また、エンディングのクレジットで流れるテーマ曲と『ストレンジャー・イン・モスクワ』の類似性は偶然ではないと語っている[17]。
また、この影響からかWindows用ソフト『ソニック&ナックルズ コレクション』(1997年)ではZONE4、5、6、エンディングテーマなどの音楽が全く別のものに変更されている(ただし、ZONE5についてはマイケル・ジャクソンとは関係なく、ブラッド・バクサーがかつて所属していたバンド、ザ・ジェットゾーンズの未発表曲『Hard Times』〈1981年〉からの流用[18])。なお、『ソニック&ナックルズ コレクション』で差し替えられた曲は2019年に発見されたプロトタイプにも存在し、それらの曲がマイケル・ジャクソンが関わった曲(メガドライブ版の製品版で実装されたもの)に入れ替わる前に作曲されていたことをほのめかしている[19]。さらに『ソニックオリジンズ』(2022年)でもこれらのステージの曲はプロトタイプ版を基に差し替えられている。
注釈
- ^ タイトルとしてはシリーズ第3作目だが、1993年に『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』(1992年)と本作の合間に『ソニック・ザ・ヘッジホッグCD』(1993年)が発売されているため、実質的にはシリーズ第4作目となる。
- ^ 『ソニック&ナックルズ』での名称。
- ^ ドリームキャスト用ソフト『ソニックアドベンチャー』(1998年)以降の作品ではマスターエメラルドがカオスエメラルドを制御する設定となっている。
- ^ 取扱説明書17ページ、『あやしい場所にアタック』の文中に「上に乗って方向ボタン上下で動かせるものもある」と記述されている。
出典
- ^ 前田尋之 2018, p. 151- 「Chapter 2 メガドライブトソフトオールカタログ 1994年」より
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- ^ “Sonic the Hedgehog 3(Genesis)”. 2014年8月22日閲覧。
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- ^ “セガPC:ソニック&ナックルズ コレクション”. セガ公式サイト. セガ. 2001年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月17日閲覧。
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- ^ ginger (2009年6月11日). “「ガンスターヒーローズ」「獣王記」など,セガの名作6タイトルがXbox LIVE アーケードに登場”. 4Gamer.net. Aetas. 2021年4月17日閲覧。
- ^ “『ソニックオリジンズ』6月23日発売決定。『ソニック』初期4作品のリマスターにストーリーモードなどの新要素を追加”. ファミ通.com. Gzブレイン (2022年4月20日). 2022年5月9日閲覧。
- ^ a b c d (インタビュアー:稲元徹也)「ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して」『4gamer.net,Aetas』、2021年7月22日 。2021年7月22日閲覧。
- ^ メガドライブ大全 2004, p. 285- 多根清史「特別企画 ソニックを創った男 中裕司 スペシャルインタビュー」より
- ^ “ビデオゲームの語り部たち 第13部:豊田信夫氏が駆け抜けた“ワイルドな時代”の北米ゲーム機戦争”. www.4gamer.net. Aetas (2019年6月1日). 2021年7月22日閲覧。
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- ^ 飯塚隆; イヴォ・ガースコビッチ; 瀬上純『『ソニック』を支えるキーパーソン飯塚氏、イヴォ氏、瀬上氏が語る 25周年を迎えてのアツい思い 「ソニックは永遠に続く“エバーブルー”」』(インタビュアー:古屋陽一)、ファミ通.com、2016年9月22日 。2021年7月22日閲覧。
- ^ ソニック・ザ・ヘッジホッグ3、プロデューサーがマイケル・ジャクソンが楽曲制作に関わったという都市伝説を認める - NME Japan Gaming (2022年6月25日)
- ^ notrax (2009年12月6日). “マイケルが人気ゲームのエンディング曲に関わっていた!?”. BARKS. ジャパンミュージックネットワーク. 2021年4月17日閲覧。
- ^ Why Sonic Origins Fans Are Upset About Sonic the Hedgehog 3's Soundtrack (英語) - CBR.com (2022年6月25日)
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- ^ a b メガドライブ大全 2004, p. 231- 「Chapter 07 1994年」より
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