スイングバイ スイングバイの概要

スイングバイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/20 08:50 UTC 版)

天体の「固有運動」の後ろ側あるいは前側の近傍を通過(フライバイ)することにより、天体と宇宙機の相互のあいだで、重力によって運動量と運動エネルギーがやりとりされ、それぞれの運動ベクトルが通過前と通過後で変化する[注 1]

スラスタ(ロケットエンジン)によるロケットエンジンの推進剤の噴射による加減速と違い、推進剤の消費が無い。そのことから、内惑星や外惑星、さらには太陽系外へといった、地球軌道外の目的軌道へ宇宙探査機などを送り出すためによく使われる。スイングバイを初めて使用した探査機は水星探査機マリナー10号であり、1974年2月5日に金星を用いたスイングバイによって太陽を約半年(水星の公転周期の約2倍)で周回する軌道に乗り、水星へと向かった。

軌道傾斜角を大きく変えるために有効な手段のひとつでもある。アメリカ航空宇宙局欧州宇宙機関による太陽極軌道観測機「ユリシーズ」で、太陽の両極を観測するために使われた。ユリシーズはいったん木星に行き、1回のスイングバイで黄道面からほぼ直角に方向を変えて太陽の南極側へと向かった。日本の例では、「のぞみ」を当初の予定から外れた軌道から火星へ到達させるため、当初の予定には無かった、2度の地球スイングバイにより軌道傾斜角の大きな軌道を半周させたことがある。「はやぶさ2」でも、地球スイングバイにより、増速度と同時に軌道傾斜角の変更もおこなっている。


注釈

  1. ^ ただし、一般に天体の質量のほうが何倍も大きいので、天体側の運動ベクトルの変化は誤差の範囲である。
  2. ^ : Venus-Earth-Earth gravity assist

出典

  1. ^ a b 高野亮, 細井淑子, 中村泰久, 鳴澤真也, 石田俊人, 「スイングバイ(かすめ飛行)の理解へ向けて:Voyager号の運動を試すモデル・ソフトウェアの作成」『兵庫県立西はりま天文台年報 平成8年度』 7号 p.1-17, 1998-03-31


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