コンブ 語源

コンブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 01:35 UTC 版)

語源

和語では古くは、食用の海草一般(特にワカメを指して)を「め」と呼んでいた。漢字では、古くは「軍布」(万葉集、藤原京木簡)、「海布」(古事記)、「海藻」(平城京木簡、風土記正倉院文書)、「和布」(色葉字類抄)などと当てられていた。『本草和名』(9世紀初頭)には「昆布、一名綸布。和名比呂女、一名衣比須女」とあるように、とりわけ昆布を指しては「ひろめ」とか「えびすめ」と呼んでいた。「ひろめ」は幅の広いことに(すなわち広布)、「えびすめ」は蝦夷の地から来たことに(すなわち夷布)由来すると考えられる。「コンブ」に近い名称はやや時代を下り、『色葉字類抄』(1177-81年)に「コンフ」、『伊呂波字類抄』に「コフ」という訓が確認できる。

「コンブ」の語源には諸説あるが、特に次の2説が有力である。

1つは、漢名「昆布」の音読みであるとする説である(和訓栞他)。この漢名自体は、日本ではすでに正倉院文書や『続日本紀』(797年)に確認でき、さらに古くは中国の本草書『呉普本草』(3世紀前半)にまで遡ることができる。李時珍の『本草綱目』(1596年)には次のようにある。

考えてみると、『呉普本草』には「綸布、またの名を昆布」とある。ならば、『爾雅』で言われている「綸(という発音で呼ばれているもの)は綸に似ている。これは東海にある」というものは昆布のことである。「綸」の発音は「関 (gūan)」で、「青糸の綬(ひも)」を意味するが、訛って「昆 (kūn)」となった。 — 李時珍『本草綱目』 草之八[44]

ただし、中国で言う「昆布」は、文献によって様々に記述されており、実際にはどの海藻を指していたのか同定が難しい。例えば陳藏器は「昆布は南海で産出し、その葉は手のようで、大きさは薄(ススキ)や葦ほど、赤紫色をしている。その葉の細いものが海藻である」[44]と記しており、アラメ、カジメ、ワカメ、クロメといった様々な海藻を想起させる。昆布は、少なくとも当時は、東海(東シナ海)でも南海(南シナ海)でも採れる物ではなかった。また、李時珍も掌禹錫(11世紀)に倣い、「昆布」と「海帯」(後者は、現代中国語で昆布を指す)を別種の物として記述している[44]

もう1つは、アイヌ語で昆布を指す kompu の音訳とする説である(大言海他)。このアイヌ語は、先の中国語「綸布 (gūanbù)」または「昆布 (kūnbù)」と酷似しており、一方が他方の借用語である可能性がある。


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