コンブ 漁業

コンブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 01:35 UTC 版)

漁業

日本のコンブ生産量は約7万6千トン(2021年度 生重量)。生産量全体に占める養殖物の割合は約40%(2021年度)。天然物の生産量の95%以上、養殖物の75%を北海道が占める(2021年度)[19]。輸出入は乾燥昆布の輸出は行われているが、輸入は割当はあるが実際は行われてない[20][21]。また、中国でも80万トン前後が養殖されている[要出典]

北海道の函館市沿岸ではマコンブの養殖が盛んに行われている。マコンブは2年生のため、その養殖には2年の時間と手間が必要であり、2年栽培の物に近い質を目指した1年の促成栽培もある。また、産業上重要種であるミツイシコンブ、リシリコンブ、オニコンブに関しても、その養殖法は確立されている。その他の種に関しては天然の現存量が多い、もしくは前述の種より利用価値が低いことから、養殖法が確立されていない。

収穫と加工

コンブの収穫は、小舟から箱メガネなどで海中を見ながら昆布の根元に竿を差し入れ巻き付けてねじり取る[22]。コンブ漁に用いられる先が二股になった棒は「マッカ」などと呼ばれる[22]。また、ロープの先に鈎を付けた物を船の上や岸から投げて収穫する方法もある(マッケ曳き)[23]。この他には、海岸へと押し寄せてきたコンブを、海岸で拾ったり、鈎でたぐり寄せる方法もある。

こうして収穫したコンブを、小石を敷き詰めた干場に運び並べて干す。1〜2回裏返しにし、まんべんなく乾燥させる。乾燥し過ぎると折れやすくなるため、加減が必要である。乾燥時間は半日程度だが、この間に雨に当たると商品価値は無くなるので、天気予報で雨が確実な日は出漁を見合わせることもある。天日ではなく乾燥機で干す方法もあり、品質は落ちるが、濃霧や日照不足などの理由で乾燥機の使用頻度が多い地域もある。コンブ干しは最適の天候時に、手早く、かつ何度も表裏を返し、適切に干す必要があるため、干し方専門のアルバイトが募集されるほか、コンブ漁場の近くに番屋を張り寝泊まりする地域もある[24]。また、干した後も、専用の蔵にて「寝かせ」(熟成)の過程が1〜3年、上級品では5〜10年ほど必要であり、大変に手間がかかる[25]

産地と種類

コンブの乾燥風景(利尻島)

日本におけるコンブ科の有用種はその有用度から見て、水産物として価値が高く重要な種にマコンブ(真昆布)、オニコンブ(羅臼昆布)、リシリコンブ(利尻昆布)、ホソメコンブ、ミツイシコンブ(日高昆布)、ナガコンブ(長昆布)、ガッガラコンブ及びガゴメコンブが挙げられ、補助的な種としてはチヂミコンブ、カラフトトロロコンブ、トロロコンブ、アツバスジコンブ及びネコアシコンブがあり、さらに地域的に利用されている種としてエナガコンブがある[26]。なお、日本におけるコンブの主な産地は北海道であり、特に真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布(三石昆布)、長昆布などが知られる。

マコンブ Saccharina japonica[27](真昆布)
主に津軽海峡噴火湾沿岸で獲れる道南産のコンブ。昆布の最高級品とされることもある。非常に多くの銘柄と格付があり、旧南茅部町周辺(現在は函館市)に産する真昆布が最高級品とされ、「白口浜」と言う銘柄で呼ばれる。その他に旧恵山町周辺で産する「黒口浜」、津軽海峡の「本場折」、それ以外の海域で取れた物を「場違折」などの銘柄に分ける。市場価値もおおよそこの順番となるが、銘柄内でも品質により数段階の等級に分けられる。だし汁は上品で透き通っていて、独特の甘味がある。大阪ではこの味が好まれ、だし昆布と言えば、大抵この真昆布を用い、取扱量は日本国内の90%に及び、大阪などでは最も価格が高い。また、他の用途として、おぼろ昆布、白髪昆布などの薄く削った加工品や、代表的な大阪寿司であるバッテラに用いる白板昆布がある。現在の分類においては、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブは本種の変種とされている。
オニコンブ Saccharina japonica var. diabolica[27](羅臼昆布)
真昆布と並ぶ昆布の最高級品。濃厚な味のため、関東地方、北陸地方などではだし昆布として、この羅臼昆布が好まれ、料亭などで使用される最高級品となっている。関西でも消費量は多いが、使用され始めたのは明治時代と、マコンブなどと比較して歴史は浅い。主な用途はうどんだし、おでん、鍋物の味付け、佃煮などである。また、食用にも適しており、北陸地方、特に富山県は一大消費地である。
リシリコンブ Saccharina japonica var. ochotensis[27](利尻昆布)
真昆布や羅臼昆布と並ぶ最高級品で、生産地は利尻島礼文島及び稚内沿岸であり、礼文島香深の物が最高級品とされる。味は前者より薄いが、澄んでおり、やや塩気のあるだしが採れる。素材の色や味を変えないため、懐石料理や煮物で重宝される。また、京都では最も高級、かつ一般的なだし昆布でもあり、千枚漬湯豆腐、木の芽煮など用途が広く、料亭などでは、上質なだしを採るために1年以上寝かせた「ひね物」を用いる店もある。また、肉質が硬いため、高級おぼろ昆布やとろろ昆布の材料にもなる。だし昆布に限って言えば、生産量の約7%は福岡のうどん店チェーン牧のうどんで消費される[28]
ホソメコンブ Saccharina japonica var. religiosa[27](細目昆布)
渡島半島松前道北留萌を主体とした日本海沿岸で獲れる昆布。他の昆布と異なり寿命が1年であるため、1年目で刈り取られる。切り口がどの昆布よりも白いために、おぼろ昆布、とろろ昆布に加工されることが多い。以上の4種は分布域が連続しており、遺伝的距離も非常に近く種間交雑が可能である。
ミツイシコンブ Saccharina angustata[27](日高昆布、三石昆布)
太平洋岸、日高地方で獲れる。繊維質が多いため、早く煮え、非常に柔らかくなるので、昆布巻き、佃煮、おでん種など、昆布そのものを食べる料理に適している。また、関東での消費量が多く、一般的なだし用昆布として用いられる。
ナガコンブ Saccharina longissima[27](長昆布、浜中昆布)
釧路地方で多く獲れるコンブ。全長15 mにも及ぶ。生産量は最も多いが、旨味成分が少ないために、廉価品として取り引きされる。日高昆布同様、柔らかいために一般では昆布巻きなどに用いられる。沖縄県周辺の島嶼群では大陸輸出を行っていた歴史もあって市場流通が多く最も一般的な昆布であり、古くから野菜代わりに重宝され、切り刻んだ物をそのままサラダ感覚で食べたりする他に、豚肉との相性が非常に良いため、炒め物にしたりする。特に棹前昆布と呼ばれる、成熟前の軟らかい長昆布が好まれた。ミツイシコンブと遺伝的距離が近く、本種をミツイシコンブの変種とする説もある[29]
ガッガラコンブ Saccharina coriacea[27](厚葉昆布)
釧路地方で多く獲れるコンブで、がっがらとも呼ぶ。ナガコンブと同じ海域に生息するが、ナガコンブと異なって、波の穏やかな場所を好む。表面は白粉(マンニット)を帯びており、独特の刺激と苦味がある。主な用途は加工用で、佃煮、塩吹昆布、ばってらなどに利用される。
ネコアシコンブ Arthrothamnus bifidus[27](猫足昆布)
分布は釧路沿岸から千島列島。コンブ科の褐藻だが、他のコンブのようにコンブ属ではなく、ネコアシコンブ属に属する。長さは2 mから4 m程度で、葉の基部両縁に耳型の突起ができる。根の部分が猫の足に似ていることから「猫足」と呼ばれるようになった。他の昆布と比較すると、粘りと甘味が強い点が特徴で、主にとろろ昆布、おぼろ昆布の材料になる。その他、医薬品、試薬に欠かせない沃化カリウムの原料としても知られていた。養殖法は確立されていない上に、下述のガゴメと同様、フコイダンという粘性多糖類が多く含有されていることから、価格が急騰し、入手が困難になってきている。
ガゴメコンブ(ガゴメ) Saccharina sculpera[27](籠目昆布、シノニムKjellmaniella crassifolia, Saccharina crassifolia[12]
葉(正確には葉状部という)の表面に籠の編み目のような龍紋状凹凸紋様があることからこの名を持つ。北海道函館市の津軽海峡沿岸〜亀田半島沿岸(旧南茅部町)〜室蘭市周辺(噴火湾を除く)、青森県三厩〜岩屋、岩手県宮古市重茂、樺太南西部、沿海州、朝鮮半島東北部に生育する。水深10 mから25 m付近に生育することが多く、浅い側ではマコンブと混じって分布するため、昔は雑海藻と見なされていた。最大で長さ2 m程度に成長し、寿命は3年から5年と考えられている。ダシを取る用途には使われないため、主にとろろ昆布や納豆昆布、松前漬などの加工品などに用いられた。そのため、他の昆布と比較して価格が低かったが、「フコイダン」という粘性多糖類が他のコンブよりも多量に含まれ、それがいわゆる機能性成分として作用するらしいことが分かり、価格が急騰した。これまではもっぱら天然に分布する物が採取されていたが、生産量は一時期の10分の1まで落ち込んだ。しかし、現在では栽培方法も確立されており、ガゴメの栽培に従事する漁業者が増え、生産量も安定してきている。

主な陸揚げ都道府県

  • 2019年度

   全国 — 46,543t

    • 第1位 - 北海道 91.1%(根室市、浜中町、えりも町) — 44,711t
    • 第2位 - 青森県 2.4%(六ヶ所村、東通村、大間町) — 1,118t
    • 第3位 - 岩手県 1.5%(宮古市、久慈市、洋野町) — 714t

  1. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  3. ^ 吉江由美子、「海藻の食物繊維に関する食品栄養学的研究」 『日本水産学会誌』 2001年 67巻 4号 p.619-622, doi:10.2331/suisan.67.619
  4. ^ 米原万里『旅行者の朝食』にはソビエト連邦で深刻な食料品不足の時ですら誰にも買われず商品棚を満たしていた缶詰に「昆布のトマト煮」という物があったと書いてある。
  5. ^ a b c d Guiry, M.D. & Guiry, G.M. (2013年). “Family:Laminariaceae”. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. 2013年6月6日閲覧。
  6. ^ コンブ科 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月7日閲覧。
  7. ^ 大野正夫 「16 世界の海藻資源の概観」『有用海藻誌』 大野正夫 編、内田老鶴圃、2004年、初版、ISBN 4-7536-4048-5、pp.318-319.
  8. ^ Guiry, M.D. & Guiry, G.M. (2013年). “Macrocystis C.Agardh, 1820: 46”. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. 2013年6月6日閲覧。
  9. ^ ネコアシコンブ属 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月9日閲覧。
  10. ^ ミスジコンブ属 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月9日閲覧。
  11. ^ コンブ属 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月9日閲覧。
  12. ^ a b c d e 吉田忠生・吉永一男 (2010) 日本産海藻目録(2010年改訂版), 藻類 Jpn.J.Phycol. (Sorui) 58:69-122, 2010 2013年6月9日閲覧。
  13. ^ カラフトコンブ属 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月9日閲覧。
  14. ^ クロシオメ属 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月9日閲覧。
  15. ^ ワカメ BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月9日閲覧。
  16. ^ コンブ目 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月7日閲覧。
  17. ^ 川井浩史「海の森をつくる海藻, コンブ類のはなし」『プランタ』第82号、研成社、2002年7月、55-62頁、NAID 40005535422 
  18. ^ レッソニア科 BISMaL (Biological Information System for Marine Life) 独立行政法人海洋研究開発機構構築 2013年6月9日閲覧。
  19. ^ https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/
  20. ^ https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/04_suisan/download/20220726_02.pdf
  21. ^ https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/index.html#r
  22. ^ a b “羅臼天然コンブ 霧中の初水揚げ 「流氷の影響それほどない」”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年7月15日). http://www.hokkaido-np.co.jp/news/agriculture/551355.html 
  23. ^ 2.7 海藻類”. 国土交通省. 2020年2月9日閲覧。
  24. ^ 読売オンライン北海道発2004年8月2日 [リンク切れ]
  25. ^ 蔵囲昆布について 奥井海生堂
  26. ^ 川嶋昭二 「6 コンブ」『有用海藻誌』 大野正夫 編、内田老鶴圃、2004年、初版、ISBN 4-7536-4048-5、pp.59-60.
  27. ^ a b c d e f g h i 吉田忠生、鈴木雅大、吉永一男「日本産海藻目録(2015年改訂版」『藻類』第63巻第3号、2015年11月10日、144頁、NAID 40020642430 
  28. ^ zuleta42 (1570138200). “やわらかい福岡うどんはなぜ美味い?三大チェーンが語る「コシよりも大切なもの」”. メシ通 | ホットペッパーグルメ. 2019年10月19日閲覧。
  29. ^ 元北海道立函館水産試験場長 川嶋昭二. “形態的特徴から見た北海道産コンブの分類学的考察” (PDF). 北海道大学総合博物館. 2011年5月13日閲覧。
  30. ^ 早煮昆布は、その製造工程で出汁の成分は流れてしまうため、出汁を取るには向かない。
  31. ^ 総務省統計局の家計調査(2人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(平成23年(2011年)~25年(2013年)平均)で消費金額では富山市が2205円、消費量では青森市が668 gで1位だった。
  32. ^ 大阪府立大学ハーモニー博物館 発酵塩昆布 2013年6月11日閲覧。
  33. ^ a b 食品成分ランキング”. 2016年3月2日閲覧。
  34. ^ 日本で市販されている食品中のヨウ素含有量”. 日本衛生学雑誌. p. 729 (2008年9月). 2016年3月4日閲覧。
  35. ^ 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)6.2.5 ヨウ素 (PDF) 厚生労働省
  36. ^ 布施 養善 「ヨウ素をめぐる医学的諸問題-日本人のヨウ素栄養の特異性」 『Biomedical Research on Trace Elements』Vol. 24 (2013) No. 3 p. 117-152
  37. ^ 軟水と硬水について
  38. ^ 硬水・軟水で料理の味が変わる
  39. ^ 軟水、硬水はどのように使い分けされているのでしょうか。
  40. ^ 橋爪一男「「ラミナリア」桿」『醫科器械學雜誌』第17巻第3号、日本医療機器学会、1939年9月20日、65-66頁、NAID 110002532213 
  41. ^ 宮部雅之「国産「ラミナリア」(「ヤポラミア」に非ず)に就て」『The Journal of Japanese Medical Instruments』第15巻第9号、Japanese Society of Medical Instrumentation、1938年3月20日、299-304頁、NAID 110002532165 
  42. ^ パピルス」『紙パ技協誌』第45巻第5号、紙パルプ技術協会、1991年、605-608頁、doi:10.2524/jtappij.45.6052018年1月14日閲覧 
  43. ^ 北海道昆布館”. 昆布館. 2018年1月15日閲覧。
  44. ^ a b c d Wikisource 李時珍『本草綱目』 草之八
  45. ^ 爾雅 釋草 199
  46. ^ 日本ひじき協議会わかめ健々学々
  47. ^ 武則要秘録
  48. ^ 奥井隆『昆布と日本人』日本経済新聞出版社〈日経プレミアシリーズ〉、2012年、初版、ISBN 978-4-532-26177-1、p.71
  49. ^ 奥井隆『昆布と日本人』日本経済新聞出版社〈日経プレミアシリーズ〉、2012年、初版、ISBN 978-4-532-26177-1、p.72
  50. ^ 宮本義己『歴史をつくった人びとの健康法』(中央労働災害防止協会、2002年、129-130頁)





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「コンブ」の関連用語

コンブのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



コンブのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのコンブ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS