ゲージ理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 14:19 UTC 版)
ゲージ場の量子化
ゲージ理論は、場の量子論に適用される方法の特別化により量子化することが可能である。しかし、ゲージ固定(gauge constraint)による微妙な点があるので(上の数学的定式化のパラグラフを参照)、他の場の理論では発生し得ない問題の解決に多くの技術的な問題がある。と同時に、ゲージ理論の豊富な構造により、簡単に計算することができる量になることもあり、例えば、ウォード・高橋の恒等式は、もうひとつ別な繰り込み定数の定義に結び付いている。
方法と目的
最初に量子化されたゲージ理論は量子電磁力学(QED)であった。最初の方法は、ゲージ固定し、それから正準量子化へ適用するという方法であった。グプタ・ブロイラー(Gupta–Bleuler)の方法も、この問題を扱うために開発された。非可換ゲージ理論は、今では、多くの方法により扱われている。量子化の方法は、量子化の記事で記述されている。
量子化の主要な点は、理論で記述されている様々な過程の確率振幅(probability amplitude)を計算することを可能とすることである。テクニカルには、確率振幅は真空期待値のある相関函数の計算である。このことは理論の繰り込みを含んでいる。
理論の結合定数が充分に小さいとき、求めるべき量の全ては摂動論により計算することができる。量子化のスキームはそのような計算(正準量子化)の単純化を意図していて、摂動量子化スキームと言われることもある。現在は、これらの方法のからゲージ理論の詳細な実験検証の大半が導かれる。
しかしながら、ほとんどのゲージ理論では、多くの興味のある量は非摂動的である。この問題に適合する(格子ゲージ理論のような)量子化スキームは、非摂動的量子化スキームと呼ばれる。このスキームの詳細な計算は、スーパーコンピュータを必要とし、他のスキームよりもうまく開発されているとは言えない。
アノマリ
古典理論の対称性のうちのいくつかは、量子理論では保たれないことが分かる。この現象をアノマリと言う。知られているもの列挙すると、
- スケールアノマリ(scale anomaly)、このアノマリは結合定数をもたらす。量子電磁力学(QED)では、ランダウの極(Landau pole)の現象をもたらす。量子色力学(QCD)では、漸近自由性をもたらす。
- カイラルアノマリ(chiral anomaly)、フェルミオンのあるカイラル場やベクトル場でのアノマリである。このアノマリはインスタントン(instanton)の考え方を通して、トポロジーと密接な関係を持っている。量子電磁力学では、このアノマリはパイ中間子の 2個の光子への崩壊を引き起す。
- ゲージアノマリ(gauge anomaly)、全ての整合性のある物理理論でキャンセルされるべきアノマリである。電弱理論では、このキャンセルは、クォークとレプトンの数が等しいことを要求する。
注釈
- ^ ヤンとミルズが強い力のゲージ理論を見つけたころ、数学でもほぼ同時にファイバーバンドルの理論が整備された。これはゲージ場の理論と数学的に等価であることが徐々に認識され、その後の数学と物理の交流の元となった。
出典
- ^ Wolfgang Pauli (1941) "Relativistic Field Theories of Elementary Particles," Rev. Mod. Phys. 13: 203–32.
- ^ Yang and Mills (1954)
- ^ Pickering, A. (1984). Constructing Quarks. University of Chicago Press. ISBN 0226667995
- ^ Sakurai, Advanced Quantum Mechanics, sect 1–4
- ^ Kaku, Michio (1993). Quantum Field Theory: A Modern Introduction. New York: Oxford University Press. ISBN 0-19-507652-4
- ^ Misner, Charles W.; Thorne, Kip S.; Wheeler, John Archibald (1973-09-15). Gravitation. San Francisco: W. H. Freeman. ISBN 978-0-7167-0344-0
ゲージ理論と同じ種類の言葉
- ゲージ理論のページへのリンク