アーベリアン射影
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/12/24 22:02 UTC 版)
QCDのような非可換ゲージ理論において磁気単極子を定義することは単純な問題ではない。この問題に関して、1981年にトホーフトによって提案されたのが、アーベリアン射影(Abelian projection)と呼ばれる手法である。これは、非可換ゲージ理論に対して部分的なゲージ固定を行うことで、独立な自由度のみを抜き出し、可換ゲージ理論へと引き下げる処方である。この結果として、カラーSU(3)の非可換ゲージ群はU(1)×U(1)の可換ゲージ群へと移り(カラーSU(Nc)の場合はU(1)Nc-1)、古典的なQCDには存在しなかったアーベリアン・モノポールが自然と出現する。もちろん、ゲージ固定の選び方は無数に存在するが、双対超伝導描像を説明することに成功している最もよく知られているゲージは最大アーベリアンゲージ(最大可換ゲージ)と呼ばれるものである。 このようにアーベリアン射影された後の可換ゲージ理論において、クォーク間に働く弦張力のような低エネルギーQCDの物理量には、グルーオン場の対角成分のみが支配的に効くことが知られており、この性質をアーベリアン・ドミナンスと呼ぶ。このとき、グルーオン場の対角成分は光子のような長距離相互作用を媒介するゲージ場として振る舞うが、非対角成分は有限の質量を持つ物質場として振る舞うため、長距離相互作用には関わらない。さらに、グルーオン場の対角成分に対しては磁気モノポールからの寄与が支配的であり、この性質をモノポール・ドミナンスと呼ぶ。 最大アーベリアンゲージを用いた格子ゲージ理論による数値シミュレーションによって、アーベリアン・ドミナンス、モノポール・ドミナンス、モノポール凝縮と閉じ込めの関係、フラックスチューブの形成といった諸性質が導かれており、これらは、QCD真空中に磁気単極子が凝縮してクォークを閉じ込める描像を示唆する結果である。
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