クロックタワー 概要

クロックタワー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/05 07:39 UTC 版)

概要

セプテントリオン』(1993年)、『ザ・ファイヤーメン』(1994年)に続くシネマティックライブシリーズの完結編、ならびに、「クロックタワーシリーズ」の第1作目。

正体不明の殺人鬼の住むに招かれた主人公が、殺人鬼や超常現象からひたすら逃げながら館からの脱出を図るアドベンチャーゲーム。三人称視点のフィールド内のキャラクターに間接的な指示を与えるというゲームシステムを取り入れている[注釈 1]。このシステムと「非力でか弱いヒロイン」という設定を活かし、ホラー映画さながらの「逃げ惑うキャラクターを鑑賞者の視点で見守るもどかしさ」を演出するとともに、ゲーム上の恐怖演出として成立させた点に大きな特徴と独自性がある[2]。イタリアの映画監督ダリオ・アルジェントのホラー映画のオマージュ作品であり[3]、特に『フェノミナ』の影響が強く主人公の名前や容姿は同作に因んでいる[4]

スーパーファミコン版はゲーム誌『ファミコン通信』の「クロスレビュー」にてシルバー殿堂を獲得した。

『リワインド』以外は日本のみで発売され、海外でファンによる非公式の翻訳が行われていた[5]

ゲーム内容

基本システムの名称はSFC版の時点では存在せず「2」以降に付けられたもの。本稿ではPS版「The First Fear」のマニュアルに準拠した名称で解説する。

クリックポイント
調査可能な対象物を「クリックポイント」と呼び、これらにカーソルを合わせると、カーソルの形が変化する。その状態で決定ボタンを押す(クリックする)ことにより、その箇所を調査し、ドアや階段であればそこを経由して別のエリアへ移動する。何も無い場所をクリックしても、ジェニファーをその方向に歩かせることができ、部屋の端や障害物などに当たるとその場で停止する(ボタン操作でその場に停止させることも可能)
このゲームでは行きたい方向にカーソルを指し示すとジェニファーは自動的に移動する。「ジェニファーに指示を出す」というスタイルとなり、ジェニファー自身を直接動かすことは基本的にできない。
カーソル操作以外では、左右の方向に走らせることが可能だが、体力が減少する。
通常状態
シザーマンに追跡されていない状態。基本的にBGMは鳴らない無音の状態だが、特定の状況ではBGMが鳴ることもある。この状態の時に、特定の地点を調べて敵出現のフラグを立てることによりシザーマンが出現し、逃走状態に移行する。
逃走状態
主人公がシザーマンに追跡されている状態。クリックポイントが通常状態と異なり、敵を撃退もしくは回避するためのポイントにしかクリックポイントが発生しなくなる。シザーマンを撃退もしくは回避しない限り解除されない。逃走状態中でもシザーマンが絶対に入ってこないエリアが存在するが、そこに入っただけでは回避したことにはならない。逃走状態では一部の動作を除いて常に走って移動する。
本作では『2』以降と異なり、時間経過によるランダム出現はなく、特定の地点を調べた時[6]と特定のイベントでしか出現しない。
パニック回避
シザーマンに近接したり、シザーマン以外の敵に襲われたり、トラップが発動したりして主人公の生命が危険に晒されている時、Bボタン(PS版では×ボタン。初期配置による)を連打することにより一時的に回避できる。ただしシザーマンに近接したときに使用した場合、一時的に突き放すだけであり、完全に回避するには隠れるか撃退するしかない。このシステムは「Renda Sezuniha Irarenai(連打せずにはいられない)」の頭文字を取って、「RSIシステム」と命名されている。
本作におけるRSIシステムは比較的『2』に近く、後先考えずパニック回避をしていてはすぐにやられてしまう。[注釈 2]
無論、いずれの場合でも体力が最低の状態でシザーマンに接近されれば無条件でゲームオーバーとなる。このイベントは廊下などの開けた場所でシザーマンに近接した場合に発生するものであり、個室などの狭い空間、或いはマップの端付近で近接した場合はRSIシステムが発生すらせず、一方的に殺されてしまう。
シザーマン以外の即死トラップ等で発生する場合では連打に失敗すると同時に死亡するものが多い。ただし、続編と異なり体力の状態は回避の成否には影響せず、体力が最低でも連打さえ成功すれば回避できる。
疲労と体力回復
本作の独自要素として「疲労」の概念が取り入れられており、体力を回復させるためにジェニファーを立ち止まらせ、床や地面に座らせることにより回復させなければならない(『2』と異なり、通常状態中の時間経過での回復はない)。体力の状態は画面左下に表示されている、ジェニファーの顔の背景色(青>黄>橙>赤の4段階)で見分ける事となる。[7]
画面両端以外の場所で、Xボタン(PS版では△ボタン。これらは初期配置による)を押すか立ち止まると、ジェニファーが座り体力を回復する。本作では敵からの攻撃やショックイベントの他に走るだけでも体力を消耗してしまうため、こまめな回復が必要になる。逃走状態中でもシザーマンが入ってこないエリアであれば回復は可能。体力の減少と共にジェニファーのフェイスウィンドウの色が変わっていき、それに合わせてジェニファーの表情も変化していく[注釈 3]。体力が最低の状態でも走る事は可能。
ゲームオーバー(DEAD END)
敵の攻撃やトラップによってジェニファーが死亡してしまうとゲームオーバー(デッドエンド)となり、タイトル画面に戻る。メインメニューからコンティニューを選択すれば、ゲームオーバー直前からやり直せる。ただし、次回作以降のように体力が一段階回復するといった措置はない。
バッドエンディングに到達したことによりジェニファーが死亡した場合は通常の死亡時同様にデッドエンド画面が表示されるが、コンティニューは不可能。
オートセーブ
本作では次回作以降のように任意でセーブすることはできず、部屋に出入りを繰り返す度にオートセーブが入り進行状況が自動的に保存されるようになっている[8]
データ枠も1つしかないため、別のデータから仕切り直すことはできない。
ランダム要素
一部のアイテムや、特定の状況下での人物の配置、一部の部屋と部屋の繋がりが、プレイする度にランダムで変化する。
マルチエンディング
本作はフラグ立ての流れによってエンディングが分岐し、全9種類のエンディングが用意されている。

ストーリー

北欧の山間にひっそりとたたずむ屋敷があった。屋敷には高くそびえる時計塔があり、土地の人々はそのの音を合図に放牧を行ったものである。いつしか土地の人々はこう呼び習わしていた。CLOCK TOWER ―時計塔屋敷―と……。しかし、ある日時計塔の鐘の音は途絶えてしまう。まるで時を無くしてしまったかのように。

1995年―。とある孤児院にひときわ目立つ美少女を見出すことができる。名は、ジェニファー。父は失踪、その後に母親とも死に別れ、孤児院に引き取られたのである。そしてある日、彼女と友人達3人の養育先が見つかったという知らせが入った。彼女は引率してくれる教師メアリーと3人の友人達と共にその養育先へ向かう。そこがCLOCK TOWERと呼ばれる屋敷とも知らずに……。[9]


注釈

  1. ^ 同システムの先駆けになったシエラオンライン社の『King's Questシリーズ』のシステムにほぼ近い。
  2. ^ PS版においては『2』のように「成功したら体力減少で回避、失敗もしくは体力最低値の時に即死」といった判り易いものではなく、特にシザーマンが相手の場合は「成功したら僅かに体力が減少し、一時的に回避。失敗したら攻撃を受けて体力が大幅に減少する」となっている。
  3. ^ 青は「真顔」、黄は「目を閉じる」、橙は「困ったような表情」、赤は「辛そうな表情」である。
  4. ^ a b c SFC版では名前のみの表記で、PS版の~The First Fear~にてフルネームが表記された。
  5. ^ 続編『2』における本作のストーリー解説及び小説版では「ジェニファーを残して蒸発した」とされている。
  6. ^ SFC版マニュアルでは「5歳の時に父親が失踪し、その後母親とも死別した」と記載されていた。
  7. ^ PS版ではその直後に焼かれた肉片の中から人影が立ち上がって目を光らせるというシーンが伏線として追加されており、後の『2』におけるシザーマンの正体が示唆されている。
  8. ^ SFC版ではパッケージ裏のCAST一覧にて名字だけ掲載されるのみで素性については伏せられており、PS版の説明書では存在自体が言及されていない。
  9. ^ 移植版ではもみ合いになる前にカラスが飛んでくる。

出典

  1. ^ 前田尋之「Chapter 2 スーパーファミコンソフトオールカタログ 1995年」『G-MOOK176 スーパーファミコンパーフェクトカタログ』ジーウォーク、2019年9月28日、183頁。ISBN 9784862979131 
  2. ^ 株式会社QBQ編 『懐かしスーパーファミコン パーフェクトガイドマガジンボックス(M.B.ムック)、2016年。ISBN 9784866400082 p47
  3. ^ a b NUDE MAKER | Hifumi Kono's Biography
  4. ^ a b c d e f ライターM (2015年10月20日). “『クロックタワー』時と肉を刻み続けて20年……名作ホラーの思い出をややネタバレありで掲載【周年連載】”. 電撃オンライン. KADOKAWA. 2020年9月6日閲覧。
  5. ^ Pinsof, Allistair (2011年10月20日). “It Came from Japan! Clock Tower”. Destructoid. 2023年4月14日閲覧。
  6. ^ 特定の部屋に入った際にランダムで出現する地点も存在する。
  7. ^ 週刊ファミコン通信 no.357. 株式会社アスキー. (1995年10月20日). p. 32 
  8. ^ プレイステーション版のみ、メニュー画面を呼び出してセーブすることが可能だが、データ枠が1つしかないのは変わらない。
  9. ^ SFC版説明書ストーリー項より。
  10. ^ 小説版『クロックタワー2』より。
  11. ^ 「バーチャルコンソール」「Wiiウェア」8月3日配信作品”. iNSIDE. イード (2010年8月3日). 2020年9月6日閲覧。
  12. ^ 木原卓/パンチョ(ねこひげ合同会社) (2011年11月9日). “週刊ダウンロードソフトウェアカタログ 2011年11月第3週分” (日本語). GAME Watch. インプレス. 2020年9月6日閲覧。
  13. ^ 津久井箇人 a.k.a. そそそ (2013年10月30日). “Wii Uバーチャルコンソール11月6日配信タイトル ― 『クロックタワー』『ドンキーコング3』の2本”. iNSIDE. イード. 2020年9月6日閲覧。
  14. ^ 『クロックタワー(コンシューマー版)』プロジェクトEGGにて配信開始”. D4エンタープライズ (2017年5月24日). 2019年10月11日閲覧。
  15. ^ 今藤祐馬 (2017年5月23日). “「プロジェクトEGG」、非力な少女と恐怖を描く「クロックタワー」をリリース”. GAME Watch. インプレス. 2020年9月6日閲覧。
  16. ^ サン電子株式会社 (2023年7月13日). “CLOCK TOWER 戦慄と絶望のホラゲ復活!恐怖はここから始まった... サン電子株式会社のプレスリリース”. PRTIMES. PRTIMES. 2023年7月14日閲覧。
  17. ^ PlayStation Magazine』 No.11、徳間書店、1997年6月13日、36頁。 
  18. ^ 「Clock Tower: Rewind」,日本版パッケージをSUPERDELUXE GAMESからリリース。北米版は5月31日に予約受付を開始”. 4Gamer.net (2024年5月24日). 2024年5月24日閲覧。
  19. ^ a b クロックタワー まとめ [スーパーファミコン]”. ファミ通.com. KADOKAWA CORPORATION. 2020年9月6日閲覧。
  20. ^ a b クロックタワー 〜ザ・ファースト・フィアー〜 まとめ [PS]”. ファミ通.com. KADOKAWA CORPORATION. 2020年9月6日閲覧。
  21. ^ a b クロックタワー for ワンダースワン まとめ [ワンダースワン]”. ファミ通.com. KADOKAWA CORPORATION. 2020年9月6日閲覧。
  22. ^ a b 「超絶 大技林 '98年春版」『Play Station Magazine』増刊4月15日号、徳間書店/インターメディア・カンパニー、1998年4月15日、205頁、ASIN B00J16900U 






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「クロックタワー」の関連用語

クロックタワーのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



クロックタワーのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのクロックタワー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS