オーロラ (歌手) 思想や価値観

オーロラ (歌手)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 15:30 UTC 版)

思想や価値観

感情と政治について

オーロラは、怒りや悲しみを含んだ感情の表現に対して肯定的である[4]。2018年のインタビューにおいては、「怒り」について、

私の身体の内側には新しいエネルギーがあって、それを私は怒りと勘違いしてしまいそうです。それは怒りとは違いますが、同じような輝きをもっていて……それは私を目覚めさせ、私に警告してくれるなにかなんです。

と述べている[35]。また自らの作品の中にある怒りについてTrendell (2019a) から問われた際には、それはとても特殊な種類の怒りであると答え、続けてつぎのように述べている。

それは、間違った行いへとあなたを差し向けるような盲目の怒りではありません。〔……〕それは、とても明らかで、あなたが変えたいと思う物事に……環境やこの地球上や政治に向けられるものです。それはむしろ、あなたが目覚め続け、目指し続け、そしてなにか重要なことのために力を使えるようになる、そうさせるための火のようなものなんです。

気候変動などの環境問題については、繰り返し声を上げているほか[79]、楽曲においても取り上げている[63](たとえば「ザ・シード[* 22]」は環境についての怒りを表現していると述べている[13])。Gokhman (2019) は、オーロラの歌について人類が地球上に残してきたものを守ることについて思い出させてくれるものであると評しており、オーロラ自身も環境問題はすべての人に関わる持続的で感情的かつ政治的なものであると述べている[27]。また、いまが団結して行動を起こすためには最適のときであるとの考えを述べ、Trendell (2019a) によるインタビューでは、諸々の問題の答えは言われているよりも単純であり、自分たちの世代においては人々が互いにバラバラになってしまっていると感じていたが、いまではそれぞれの力を繋ぎ合わせれば大きな力になることを知っていると語った。

その他、動物虐待女性に対する暴力人種差別といった問題にも関心を払っているという[10][80]村上 & 大原 (2022:2) は、古代の神々『ザ・ゴッド・ウィー・キャン・タッチ』において主題として描かれるギリシア神話の神々があんなふうに不完全で自由奔放だったのだから、現代の我々だってもっと自由に生きていいのでは?とオーロラの見解を要約し、それは同時代の多様性インクルーシヴの思想とも呼応するのだと述べている。

セクシャリティーについて

前述のとおりオーロラは、ブラジル訪問後に同性愛を巡る政治的立場は場所によって非常に劣悪であることに気付かされたと語り、2018年に次の作品の主題の一つとして政治性と官能性を挙げている。同じ時期、「クイーンダム[* 15]」のミュージック・ビデオについてのインタビューでは、次のように語っている[46]

私の女王国では、あらゆる種類の愛が受容されられ許容されていることを明らかにしたかったんです。キスすることは、あなたができることの中で最も脆く英語版美しいことの一つだと、私は考えています。それから私はキスをダンサーの一人に……とってもきれいな人にしています。これは、私からファンへの小さなメッセージのようなもので、なぜなら私のファンのとても多くがゲイ・コミュニティから来ているからです。彼女らや彼らが進む道にはいろんな障碍があることを知っているので、そのことを考えると私は落ち着いていられませんし、怒りを覚えずにはいられないんです。

2018年のインタビューにおいては、自分は女性なのでフェミニストであるが、同性愛は自分の曲に対してフェミニズム以上に大きな触発を与えたと述べている。このインタビューでは、いま自分には男性的なボーイフレンドがいるが、以前はガールフレンドがいたこともあるとも語り、以下のように続けている[38]

私はそこにあるものを享受し、そして探求したいんです。自分の周りの全てを愛しましょう、それだけで、あなたは自分自身を愛しているんです。

2019年の『ゲイ・タイムズ英語版』誌のインタビューにおいては、自らがLGBTQコミュニティーの一員であることを肯定するとともに、他人が自分を定義したりカテゴライズすることは構わないが、自分で自分を定義する必要があるとは思わないと述べている[48]。また、神話時代のようなあるがままの愛や性における快楽の享受を称揚し[48]、同年のほかのインタビューにおいては、ジェンダーや種族を超えた尊敬や愛の重要性についても語っている[70]。また2021年に発表した「キュア・フォー・ミー[* 23]」は、同性愛者に対する転向療法について私への治療はいらないと訴えるものである[80]

死について

はオーロラにとって、4歳のころから理解できないから、もっと理解したいと思い続けてきた概念であり[23]、作品においてしばしば取り上げられる主題でもある[27]。彼女は死を恐れることに否定的であり、死について考えると心が安らぐ、あるいは正気になれると語っている[14][27]。また2019年には、今後のアルバムにおいてこの主題についてさらに掘り下げたいと述べている[14]

各国の文化について

オーロラは、自分の曲のいくつかがもつ暗さは、ノルウェーの気候や文化の暗さ、ノルウェー人の内向性に由来していると述べている[30]

オーロラのスタイルは、日本の伝統的なファッションや美学からも影響を受けている[2]。2019年のアジア・ツアーにおける訪日時のインタビューでは、ジブリ映画や村上春樹といった日本文化が好きで、神秘的なものへの信仰やもったいない文化などの国民性を尊敬しており、日本語の勉強もしていると語っている[注 7]。また、着物が好きで、ヘア・スタイルやファッションはアニメを含む日本文化からインスピレーションを受けているという[74]

ネイティヴ・アメリカンの音楽は幼少時より好きで、ネイティヴ・アメリカンにずっと憧れているとも語っている[35]。たとえば「ザ・シード[* 22]」は、ネイティブ・アメリカンの文化に触発された曲である[81]。またインドのメディアにおけるインタビューによると、インドの伝統音楽の歌唱方法にも触発されているという[82]

英語圏の作品については、8歳のころから愛読している『ハリー・ポッター』に加え『スター・ウォーズ』のファンであることが公然となっている[4]


  1. ^ 2人は後に服飾デザイナーメイクアップ・アーティストになり、オーロラともコラボレートしている[2]
  2. ^ 2016年のインタビューにおいては、ダンサーや画家、あるいは宇宙飛行士になっていたかもしれないとも語っている[10]
  3. ^ ノルウェーの教育制度は6歳からの7-3-3制で、新学期は8月から始まる(1997年以降2019年現在)[29]
  4. ^ a b c d 本記事においては、『インフェクション・オブ・ア・ディファレント・カインド(ステップ1)』を『ステップ1』、『ディファレント・カインド・オブ・ヒューマン(ステップ2)』を『ステップ2』と略す。なお、日本国内盤は『ステップ1』と『ステップ2』をまとめボーナス・トラックを追加した『インフェクションズ・オブ・ア・ディファレント・カインド・オブ・ヒューマン』として2020年9月に発売されている[42][43]
  5. ^ 2020年3月には同曲のソロ・バージョンも発表している[55]
  6. ^ この反響は、#RunwayAuroraハッシュ・タグを用いて星空や夕日を背景にポーズを決めた動画を投稿するシルエット・チャレンジと呼ばれるバイラルに発展した[58]
  7. ^ 2021年現在も日本語の勉強は続けていると述べている[80]
  8. ^ オーロラは、「ファン」という表現が好きではないというWeiß (2019) の言葉に同意し、「サポーター」という表現を代わりに使うことを提案している。また2019年のインタビューにおいても、「サポーター」という表現を用いている[48]
  9. ^ 2016年にはファンを念頭において作った「ウォーリアー」という曲を発表している[19][83]
  10. ^ エド・シモンズらと連名[51]
  11. ^ ほか3名との共作[94]
  12. ^ ほか2名との共作[96]
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  95. ^ NetAktion (n.d.), Good Night Songs for Rebel Girls.
  96. ^ a b Genius (n.d.).
  97. ^ Robinson (2019).
  98. ^ 以下の収録アルバム/EPは、特記のないかぎりNetAktion (n.d.) に基づく。





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