ウルトラファイト
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ウルトラファイト | |
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ジャンル | ミニ番組 |
企画 | 円谷一 |
監督 | 鈴木俊継、大平隆、谷清次 ほか |
ナレーター | 山田二郎 |
オープニング | 作曲:宮内國郎 |
製作 | |
制作 | 円谷プロダクション |
放送 | |
放送局 | TBS |
音声形式 | モノラル放送 |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 1970年9月28日 - 1971年9月24日 |
放送時間 | 月 - 金曜 17:30 - 17:35 |
放送分 | 5分 |
回数 | 196 |
特記事項: 制作No.45は現在欠番 |
概要
1968年、『マイティジャック』が視聴率不振で打ち切られ、『怪奇大作戦』も「ウルトラに比べて視聴率が低い」という局側の判断で終了。その後、『恐怖劇場アンバランス』も過激な描写が仇となって放送が見送られ、さらに1970年1月25日、社の創業者でもあった円谷英二が逝去するという危機的な状態にあった円谷プロダクションで、英二の長男・円谷一による「現金支出ゼロの番組を作ろう」との発案から企画された。
当初は、円谷プロダクションとTBSとの間で『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』のフィルムから戦闘シーンを抜き出して再編集して帯番組に仕立て[1]、総数130本を制作する契約が交わされた[2][注釈 1]が、見込みに反して5分間番組として放送するには尺の足りないものが予想以上に多く、既存のフィルムでは130本に満たないことが判明。急遽、両番組の撮影に使用した着ぐるみに加えアトラクション用の着ぐるみも用いて、原野などで新規に格闘の映像を撮影し[1]、最終的に総数196本が制作されるに至った。初回放送時から再放送作品が随時挟み込まれており、結果として全253回の放映となった[3]。
放送開始当初こそマスコミから「円谷プロは出涸らしのお茶で商売をしている」と散々に非難されたが、第一次怪獣ブームが終了して怪獣を扱った番組を見ることがなかった、いわば隙間世代の児童にとっては毎週月曜から金曜にかけてブラウン管を通じて怪獣と出会える機会となり、瞬く間に人気番組となる。その結果、新たな特撮番組を求める声が高まり、第二次怪獣ブームを生み出す原動力となっていった[4][5]。
「過去の作品から映像を抜き出し、新しく編集・ナレーションを加えて再構成する」という手法は、後に映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』や、テレビ東京系列で放送された『ウルトラ怪獣大百科』『ウルトラマン列伝』などの番組でも踏襲されることになる。また、「ヒーローと怪獣の着ぐるみを野外で格闘させる番組」というコンセプトも『レッドマン』に受け継がれた。
ナレーションは当時TBSのアナウンサーだった山田二郎が務めた。山田は「(当時山田が担当していた)プロレス実況のイメージと要望されたが、原稿はなく、怪獣の資料と映像を一度見ただけで本番に入っていた」と証言しており[6]、怪獣の名前と技名を確認してプロレスの実況中継風の解説を即興のノリで付けたという[1]。
番組の内容
『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のフィルムから戦闘シーンを抜き出し、プロレス風の実況ナレーションを加えたものと、ヒーローおよび怪獣の着ぐるみを用い、怪物的巨大感や特殊攻撃(光線技・火炎放射など)といった演出はほとんど行わず、野外での格闘を展開するものに分かれる。『円谷プロ特撮ドラマ DVDコレクション』(2016年2月16日創刊、デアゴスティーニ)では前者を「抜き焼き編」、後者を「新撮影編」と呼び分けており[7]、本項もそれに従うものとする。
抜き焼き編
映像自体は本編のものだが、怪獣が登場する経緯を大幅に省略することが多く、話によっては編集とナレーションで本編と全く異なる展開に再構成される場合もある。ウルトラ戦士が直接怪獣にとどめを刺さない回に顕著[注釈 2]。
新撮影編
毎回即興に近い形で作られており、当初は怪獣とセブン、もしくは怪獣同士がばったり出くわしてそのままなし崩し的に格闘へ突入するシンプルな筋立てがほとんどであった[注釈 3][注釈 4]。回が進むにつれ、「ゲバゲバ」「ハレンチ」「マキシ」「スキャット」などといった当時の流行語をサブタイトルに散りばめた[注釈 5]、不条理かつ怪しげな筋書きの寸劇が頻発するようになってゆく[注釈 6]。
野外ロケは予算の苦しい当初は手近な生田・多摩の造成地や三浦半島の剱崎、よみうりランドなどで行われていた。番組の人気が出始めてからは、北軽井沢や伊豆半島の下田にまで遠征している。
5人ほどのスタッフとスーツアクター3人でマイクロバスに乗り込みロケに出かけていた。その時々に怪獣倉庫にあった着ぐるみをロケ地に持っていき、簡単な脚本に基づいて1日で5本分ほど撮影していたという[9][1]。
着ぐるみを新たに作る余裕もなく、撮影やアトラクションで使用した着ぐるみを流用したため、アトラクション用の着ぐるみは本編での造型が忠実に再現されていないものも珍しくなく、撮影に使用されたいわば「本物」の着ぐるみであっても経年劣化などで変形しているものもあった[注釈 7]。後年、DVD-BOX発売の際には意図的にこの劣化具合を再現したソフビ人形が作られ、特典として付けられた。
オープニング
抜き焼き編は白地にタイトルが書かれたシンプルな画面だったが、「キーラの眼が問題だ!」から、炎をバックにタイトルがクローズアップされるという演出になる。新撮影編でも、このオープニングを継続して使用。
オープニング音楽は「進め!ウルトラマン」のカラオケを使用。新撮影編では途中からドラムのBGM(3バージョンある)もランダムに使用されるようになる。
登場キャラクター
ここでは新撮影編に登場するキャラクターを紹介する。詳細は各リンク先を参照。
注釈
- ^ このため、当初は『ウルトラファイト100』や『ウルトラファイト130』というタイトルが予定されていた[1]。
- ^ 例として、アントラーの回は本来「スペシウム光線が効かないアントラーに、科学特捜隊が弱点であるバラージの青い石をぶつけて倒す」という筋書きだが、『ウルトラファイト』ではウルトラマンがスペシウム光線を撃つカットとバラージの青い石が命中した瞬間のカットを直接つなげ、ウルトラマンがスペシウム光線でアントラーを倒したことにしている。
- ^ 監督の一人である大平隆は「撮影は紙にあらすじを書いてぶっつけ本番だった」と証言している[8]。
- ^ プロデューサーの熊谷健は「台本はなかったが、大体の取り組みのバターンは決めていた」と証言している[9]。
- ^ サブタイトルの数々は、熊谷健の命名によるもの[10][3]。監督の一人である大平隆は「クマさん(熊谷)も好き放題つけていた」と証言している[8]。また大平は「『怪獣餓鬼道』などひねたものは自身が考えた」とも述べている[8]。
- ^ 監督の一人である大平隆は「行き詰まった末のアイデアである」と証言している[8]。
- ^ その顕著な例がテレスドンで、『ウルトラマン』本編で使用された着ぐるみは経年劣化のために鼻先などの変形が激しく、この着ぐるみが後に『帰ってきたウルトラマン』に再利用された際は造形に一切手を加えないまま名前を「デットン」に変更することで、別怪獣として登場するに至った。ただし、足の節数が『ウルトラマン』のものと違うという指摘もある[11]。
- ^ 抜き焼き編の編集を担当[3]。
- ^ 新曲はなく、『ウルトラQ』『ウルトラマン』の楽曲を流用。タイトルバックには「進め!ウルトラマン」のカラオケが使われている。
- ^ 原版サウンドトラックに流れていたもので、ライブラリー音源の流用は行われていない[3]。
- ^ 本放送では使われていないが、実況を吹き込んだバージョンは存在しており[12]、LD-BOXとDVD-BOXに映像特典として収録された。
- ^ DVDBOXブックレットの久須美欽一インタビューでは「石光豊」と表記。
- ^ 映像ソフトでは制作順で収録されている。
- ^ 現在は欠番。
- ^ ルビは「おこれ」だがナレーションでは「いかれ」と言っている。
- ^ サブタイトルを「恐竜
戦車 」としているフィルムも存在し[12]、DVD-BOXに映像特典として収録された。 - ^ 『ウルトラセブン』第12話からの抜き焼き回であるNo.45が再放送できなくなり(詳細はスペル星人#第12話の欠番についてを参照)、本数を合わせるために急遽撮りおろしが行われた[12]。
- ^ 収録作品:創刊号→No.75・No.131・No.158、第2号→No.159・No.169・No.173、第3号→No.180・No.181・No.195。
読者全員プレゼント第1弾「ウルトラファイト 新撮影編」DISC1→No.72〜No.103、DISC2→No.104〜No.129・No.131〜No.136、DISC3→No.137〜No.167(※以上、創刊号〜第25号の購読で)。
第2弾「ウルトラファイト 新撮影編+抜き焼き編」DISC4→No.168〜No.196、DISC5→No.1〜No.36、DISC6→No.37〜No.44・No.46〜No.71・No.130(※以上、第26号〜第65号の購読で。全て製作ナンバー表記) - ^ 収録作品:第6巻→No.169、第7巻→No.103、第8巻→No.172、第9巻→No.143・No.165、第10巻→No.144・No.147(※以上、全て製作ナンバー表記)
- ^ 収録作品:Disc7→No.103、Disc8→No.172、Disc9→No.143、Disc10→No.144・No.147、Disc11→No.173、Disc12→No.169、特典ディスク→No.165(※以上、全て製作ナンバー表記)
- ^ 収録作品:第5巻→No.165、第6巻→No.169、第7巻→No.103、第8巻→No.172、第9巻→No.143、第10巻→No.144・No.147、第11巻→No.173(※以上、全て製作ナンバー表記)
- ^ このため、映像開始前に映画本編のネタバレ要素を含む旨の注意書きが表示される。
- ^ 2022年6月27日以降、TSUBURAYA IMAGINATION加入者も視聴可能となった。
- ^ 映画における「天体制圧用最終兵器」ではなく、『ウルトラマン』最終回に登場した本家ゼットン風に改変されている。
出典
- ^ a b c d e HISTORICA 2022, p. 20, 「帰ってきたウルトラマン」
- ^ CD-ROMソフト『ウルトラマン図鑑3』(講談社・1998年)「ウルトラ・ヴァリエーション」の「帯番組『ウルトラファイト』」の解説文p.2
- ^ a b c d 『ウルトラファイト』DVDBOXブックレット.
- ^ 竹書房/イオン編 編「BonusColumn 毎日戦うスーパーヒーローたち-帯番組-」『超人画報 国産架空ヒーロー40年の歩み』竹書房、1995年11月30日、123頁。ISBN 4-88475-874-9。C0076。
- ^ 「概説 変身ブームの変遷」『テレビマガジン特別編集 変身ヒーロー大全集』講談社、1995年11月30日、130-133頁。ISBN 4-06-178419-6。
- ^ a b 宇宙船158 2017, p. 76, 「ウルトラファイトVR」
- ^ 創刊号の「読者全員プレゼント」案内より。
- ^ a b c d 友井健人「INTERVIEW 『ウルトラマン』本編助監督 大平隆」『別冊映画秘宝 特撮秘宝』vol.3、洋泉社、2016年3月13日、pp.234-237、ISBN 978-4-8003-0865-8。
- ^ a b 石橋春海「初期ウルトラマンシリーズをすべて知る男」『ウルトラマン危機一髪からの大逆転SPECIAL』、彩図社、2016年8月10日、pp.75-77。
- ^ 青柳宇井郎・赤星政尚『懐かしのヒーロー・ウルトラマン99の謎』二見書房、1993年、116-117頁
- ^ 『ウルトラファイト』DVD-BOXブックレット.
- ^ a b c d e 円谷プロ画報 2013, p. 211.
- ^ 『河北新報』1972年5月8日 - 7月24日付朝刊、テレビ欄。
- ^ 『河北新報』1971年10月4日 - 11月30日付朝刊、テレビ欄。
- ^ 『河北新報』1971年5月12日 - 1972年4月24日付朝刊、テレビ欄。
- ^ 『福島民報』1971年10月1日 - 1972年6月30日付朝刊、テレビ欄。
- ^ 『北國新聞』1972年5月1日 - 5月5日付朝刊、テレビ欄。
- ^ よみうりランド・イベント情報
- ^ 『ウルトラ有馬記念@AKIBA』にあわせ、 ウルトラ騎乗動画『ウルトラJRA』を公開 PR TIMES 2014年12月12日
- ^ a b c d e f g 宇宙船158 2017, pp. 74–75, 「ウルトラマンゼロVR」
- ^ “ウルトラマンシリーズ初!全天球360度VR特撮作品『ウルトラマンゼロVR』『ウルトラファイトVR』が2017年10月1日(日)より全国の「VR THEATER」他にて展開決定!”. 円谷プロダクション. (2017年9月11日) 2017年9月11日閲覧。
- ^ “シン・ウルトラファイトの視聴が特典、『シン・ウルトラマン』ムビチケ発売 IMAX同時公開決定”. 2022年12月18日閲覧。
- ^ 大槻ケンヂミステリ文庫 「アルバムの主人公は相当やさぐれているんだな」/インタビュー後編、EXCITEニュース、2018年12月13日。
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