逆刺
(鐖 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/26 13:37 UTC 版)
- 鉤元(チモト)
- 軸
- ベンド
- 逆刺、または鐖(あご)
- イケ先(針先から逆刺の針先まで)
- 懐(ふところ)幅
- 懐
逆刺(かえし)または逆棘は、釣り針や銛(もり)・簎(やす、矠)などの漁具や、槍(やり)や鏃(やじり)などの武器に付けられた、本体の刃先とは逆方向に突出した棘状の刃部。狩りの獲物や戦闘における攻撃対象の身体に刺さった際に体内に食い込んで抜けにくくし、獲物を逃さない、あるいは殺傷力を増すという機能がある[2]。名称は「逆刺」以外にも「鐖(あぐ/あげ/あご/あぎ/あら)」や「戻り(もどり)」などがあり[3]、鏃の場合「腸抉(わたくり)」とも呼ばれる[4]。また「逆刺」の読み方にも複数の読み方がある。
概要
釣り針や銛(または簎)、槍・鏃などの刃部の両側または片側に、刃の向きとは逆方向に突出する。獲物の動物などの肉体に刺さると逆刺が支障となって容易に抜くことが出来なくなる[2]。
釣り針の場合、針に食いついた魚の口から外れず、銛(または簎)であれば大型魚類の身体に突き刺した際に逃がしにくくなる[3]。また槍や弓矢の鏃の場合、戦闘や狩猟の際に、攻撃対象に突き刺さると容易に抜けないだけでなく、無理に引き抜こうとすれば内臓や筋肉を損傷して傷口を広げ、攻撃力・殺傷力を増す効果がある[4]。
歴史上、逆刺を持つ利器の出現は古代に遡る。日本列島の考古資料の場合、縄文時代草創期に出現した槍の1種である有舌尖頭器に逆刺状の突出が見られる[5]。
釣り針では、世界最古級の釣り針と見られる沖縄県南城市サキタリ洞遺跡から出土した旧石器時代の釣り針形貝製品には逆刺は見られないが[6]、縄文時代の骨製・角製の釣り針には逆刺が存在する。なお、現代の釣り針は、針の湾曲の内側に逆刺が付くものが多いが、縄文時代のものは湾曲の外側に付くものがある[7]。
呼び方・読み方
逆刺には、様々な呼称や、漢字の読み方が存在する。「逆刺」または「逆棘」と書いた場合、「かえし」のほか「かえり」と読む場合がある[8]。また、正倉院の宝物の1つである密教法具としての銛(鉄三鈷)の場合は「さかし」と読まれている[9]。
漁具の場合に「鐖」の字を用いて「あぐ」「あげ」「あご」「あぎ」「あら」などと呼ぶほか、「戻し(もどし)」と言う呼び方がある[3]。
鏃の場合「腸抉(わたくり)」と呼ばれる。これは先述のように「ワタ(臓物)を抉る」の意味と解されている[4]。日本列島の古墳時代中期(5世紀)の鉄鏃には、逆刺(腸抉)を2段持つものがあり、「2段逆刺(あるいは腸抉)鉄鏃」などと呼ばれる[10]。
脚注
- ^ 溝邉, p. 70.
- ^ a b 斎藤 2004, p. 74.
- ^ a b c 斎藤 2004, p. 5.
- ^ a b c 斎藤 2004, p. 465.
- ^ 名古屋市博物館. “有舌尖頭器”. 名古屋市博物館コレクション. 2026年2月19日閲覧。
- ^ 藤田 & 宇佐美 2020, pp. 1–5.
- ^ 茅ヶ崎市教育委員会 教育推進部 社会教育課 文化財保護担当 (2025年3月31日). “縄文時代の釣り針は何から作られていたのでしょう!?”. 丸博コラム. 2026年2月19日閲覧。
- ^ 横浜市歴史博物館. “読むのでしょうか?”. ためになる?豆知識. 2026年2月19日閲覧。
- ^ 奈良国立博物館. “逆刺(さかし)、第52回正倉院展(2000年〈平成10年〉開催)展示資料”. 正倉院展用語解説. 2026年2月19日閲覧。
- ^ 池田 2024, pp. 1–20.
参考文献
- 斎藤, 忠『日本考古学用語辞典』学生社〈改訂新版〉、2004年9月。ISBN 4311750331。 NCID BA68729429。
- 溝邉, 大介『図解特許用語事典』三和書籍、2007年11月。 ISBN 9784862510266。 NCID BA84007050。
- 藤田, 祐樹、宇佐美, 賢「旧石器時代の貝製釣り針の機能に関する検証」『沖縄県立博物館・美術館 博物館紀要』第13号、沖縄県立博物館・美術館、2020年3月1日、1-6頁、 ISSN 18831591、 NCID AA12429659。
- 池田, 旭「山形関を有する鉄鏃の威信財的性格に関する再検討」『史泉』第139号、関西大学史学・地理学会、2024年1月31日、1-20頁、 ISSN 03869407、 NCID AN00103634。
関連項目
鐖
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