VFTS_352とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > VFTS_352の意味・解説 

VFTS 352

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/07 22:10 UTC 版)

VFTS 352
VFTS 352の想像図。出典: ESO / L. Calçada[1]
星座 かじき座
視等級 (V) 14.38 [2]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α) 05h 38m 28.456s[2]
赤緯 (Dec, δ) -69° 11′ 19.18″[2]
距離 ~1.6 ×105 光年
(~ 4.9 ×104 パーセク
物理的性質
半径 7.22 ± 0.02 / 7.25 ± 0.02 R(平均)[3]
質量 28.63 ± 0.30 / 28.85 ± 0.30 M[3]
表面重力 15 / 15 G[3]
スペクトル分類 O4.5 V(n)((fc)):z: / O5.5 V(n)((fc)):z:[3]
表面温度 42,540 ± 280 / 41,120 ± 290 K[3]
年齢 3.4 ± 0.2 / 2.4 ± 0.2 ×106 [3]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 17.55 R[3]
離心率 (e) 0.012[4]
軌道傾斜角 (i) 55.60°[3]
別名称
別名称
2MASS J05382845-6911191
Template (ノート ■解説) ■Project

VFTS 352は、大マゼラン雲の中にあるタランチュラ星雲にある、O型主系列星同士からなる連星である[5]。この連星を形作っている2つの恒星はどちらも、太陽の約28倍の質量と40,000Kを越える表面温度を持つ。この連星は、恒星同士の表面が接触している接触連星であるが、表面だけでなく外層までもが接触しているため、過剰接触連星と呼ばれる極めて珍しい分類に属する。

発見

タランチュラ星雲の南側(写真中央下部のループ状構造内)にVFTS 352はある。

2011年VLTの多天体高分散分光装置(FLAMES)によるタランチュラ星雲内の大質量星の網羅的な分光観測によって発見された[6]。観測計画の"VLT-FLAMES Tarantula Survey"の頭文字に、目標天体の352番であったことを加えて、"VFTS 352"と呼ばれることになった。

VLTによる更なる分光観測と測光観測によって、2015年にこの天体がO型星同士の連星系であることが発見された[3]

連星系

この連星系は、お互いの表面と外層を共有しながら1.124143日で公転している[4]。お互いの恒星の中心は、1200万Kmしか離れていない[5]。一般的に接触連星の場合、小さい方の恒星が大きい方の恒星の物質を吸い込むが、VFTS 352の場合は双方の恒星の質量にほとんど差がないため、そのような現象は発生せず、物質を共有するような状態になっていると考えられる[5][1]。試算では、双方の恒星を形作っている物質の30%が共有されているという結果が出ている[5]

このような連星は寿命が非常に短い為、観測されることは非常に珍しい[5]

将来の姿

VFTS 352が今後どのような運命を辿るかについては、2つの説がある。一つは、最終的に2つの恒星が合体し、高速で自転する1つの巨大な恒星になるという説である[5]。その場合、この合体した恒星は、最後は崩壊してロング(継続時間が長い)ガンマ線バーストを引き起こす可能性がある[5][3]

もう一つは、双方の恒星がよく混ざり合うと、通常の恒星の進化から外れて2つの恒星が小さいままで、完全に合体せずに進化を続け、超新星爆発を経て、双方の恒星からそれぞれブラックホールが誕生し、ブラックホール同士による連星が誕生するという説である[5][3]。この場合、できたブラックホール連星は、重力波源になることが期待される[5]

出典

  1. ^ a b Final Kiss of Two Stars Heading for Catastrophe”. ESO (2015年10月21日). 2017年6月14日閲覧。
  2. ^ a b c 2MASS J05382845-6911191 -- Spectroscopic binary”. SIMBAD. CDS. 2015年11月4日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k Almeida, L. A.; et al. (2015-10), “Discovery of the Massive Overcontact Binary VFTS 352: Evidence for Enhanced Internal Mixing”, Astrophysical Journal 812 (2): 102, Bibcode 2015ApJ...812..102A, doi:10.1088/0004-637X/812/2/102 
  4. ^ a b Almeida, L. A.; et al. (2017-02), “The Tarantula Massive Binary Monitoring. I. Observational campaign and OB-type spectroscopic binaries”, Astronomy and Astrophysics 598: A84, Bibcode 2017A&A...598A..84A, doi:10.1051/0004-6361/201629844 
  5. ^ a b c d e f g h i ブラックホール連星誕生か、珍しい過剰接触連星”. AstroArts (2015年10月27日). 2015年11月4日閲覧。
  6. ^ Evans, C. J.; et al. (2011-06), “The VLT-FLAMES Tarantula Survey. I. Introduction and observational overview”, Astronomy and Astrophysics 530: A108, Bibcode 2011A&A...530A.108E, doi:10.1051/0004-6361/201116782 

関連項目

座標: 05h 38m 28.456s, −69° 11′ 19.18″


「VFTS 352」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「VFTS_352」の関連用語

VFTS_352のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



VFTS_352のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのVFTS 352 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS