Stirling numberとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > Stirling numberの意味・解説 

スターリング数

(Stirling number から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/29 02:28 UTC 版)

スターリング数(スターリングすう、: Stirling number)は、上昇階乗冪 (rising factorial) や下降階乗冪 (falling factorial) を数値の冪乗と関係づけるための級数の展開係数として、イギリスの数学者ジェームズ・スターリング英語版が1730年に彼の著書 Methodus Differentialis で導入した数[1]である。スターリング数は第1種スターリング数と、第2種スターリング数に分類される。第1種スターリング数はべき乗から階乗への変換に、第2種スターリング数は階乗からべき乗への変換に現れる。また、スターリング数は組合せ数学において意味をもった数値を与える。

第1種スターリング数

第1種スターリング数 (en:Stirling numbers of the first kind) は、上昇階乗冪 のべき級数:

で表現したときの展開係数として定義される。この定義では である。また、便宜上 と定義する。第1種スターリング数は、

なる漸化式で計算できる。この漸化式は、べき級数の展開係数としての定義から導出できる。第1種スターリング数の中で、簡単な数式で書ける成分として、

が挙げられる。なお、 は二項係数(二項定理を参照)である。これらは上記の漸化式を用いれば証明できる。特に、第1の関係式は、 であることから導くこともできる。上に示した漸化式に従い、第1種スターリング数は下表のように計算される。なお、表中の空欄に位置する数値はゼロであると解釈する。

nk 0 1 2 3 4 5 6 7
0 1
1 0 1
2 0 1 1
3 0 2 3 1
4 0 6 11 6 1
5 0 24 50 35 10 1
6 0 120 274 225 85 15 1
7 0 720 1764 1624 735 175 21 1

下降階乗冪 も第1種スターリング数を含む展開係数を伴い、 のべき級数で表現できる。具体的には、

と書けるので、展開係数は第1種スターリング数に符号補正 を施した値である。この展開式は、

であることに注意すれば容易に証明できる。

第1種スターリング数の性質

第1の関係式は、 から導かれる。第2の関係式は から導かれる。第3の関係式は に関して、 であることから導かれる。

第1種スターリング数はベルヌーイ数 と次のような関係がある。

第1の関係式は、上昇階乗冪の和の公式:

から導くことができる。第2の関係式は、第1の関係式に第1種スターリング数の漸化式を適用すれば導かれる。

組み合わせ数学における意味

第1種スターリング数 は、組合せ数学において、 個の要素を 個の巡回列に分割する組み合わせの数を与える。巡回列は山手線の駅のように繰り返される要素を示したデータ列である。ここでは、巡回列を のように書こう。この場合、0, 2, 1, 3の順に数値が繰り返される場合を意味する。巡回列の場合、順列ではあるが のように要素を巡回置換した巡回列どうしは同一とみなす。したがって、 個の要素で構成される巡回列の組み合わせは 通りである。また、 は1個の要素で構成される巡回列であると考える。

例として4個の要素を巡回列2個に分割する組み合わせを考えよう そのような分割においては、構成要素が1個と3個の巡回列に分割する組み合わせと、構成要素が2個と2個の巡回列に分割する組み合わせがある。前者の分割法では、4個の要素から、単独で巡回列をなす要素1個を選び、残りの3個の要素で巡回列を作る組み合わせを考えればよい。要素4個から1個を選ぶ組み合わせは4通りであり、3個の要素から巡回列を作る組み合わせは2通りである。したがって、前者の分割法による組み合わせは全部で8通りとなる。後者については、4個の要素から巡回列をなす2個を選び、それぞれ2個の巡回列の組み合わせを考えればよい。要素4個から2個を選ぶのは6通りの組み合わせがあり、2個の要素が巡回列は1通りしかない。しかし、得られる2個の巡回列は同一構造の巡回列なので、6通りの組み合わせからその自由度を補正する必要がある。つまり、2分の1するということであり、後者の分割法による組み合わせは3通りである。つまり、4個の要素を巡回列2個に分割する組み合わせは全部で11通りとなる。この数値は と一致する。そのような組み合わせをすべて列挙すると以下のようになる。

上で説明した直接的な順列の作り方のほかに、4個の要素から巡回列2個を作る方法として次の手順を考える。手順1として、3個の要素から巡回列1個を作り、4番目の要素を単独要素の巡回列として追加する。手順2として、3個の要素から巡回列2個を作り、4番目の要素を既に作られた巡回列に追加する。手順1では、3個の要素から巡回列を作る組み合わせとして2通りが可能である。手順2では、3個の要素から巡回列2個を作る組み合わせが3通りある。さらに、4番目の要素を既存の巡回列に挿入する組み合わせは3通りずつあるので、手順2による組み合わせは9通りとなる。よって、手順1と手順2による組み合わせの合計として11通りになる。

この考え方を一般化し、 個の要素から 巡回列 個を作るには、手順1として、 個の要素から 巡回列 個を作った後、 番目の巡回列として 番目の要素を単独で追加する。その組み合わせの数は、 個の要素から 巡回列 個を作る組み合わせの数に等しい。手順2として、 個の要素から巡回列 個を作った後、 番目の要素を既存の巡回列に挿入する。その組み合わせの数は、 個の要素から 巡回列 個を作る組み合わせの数を 倍した値となる。手順1と手順2の組み合わせの和であることを考えると、 個の要素から 巡回列 個を作る組み合わせの数は第1スターリング数の漸化式で与えられることがわかる。したがって、その組み合わせの数は第1スターリング数 に等しい。

第2種スターリング数

第2種スターリング数 (en:Stirling numbers of the second kind) は、 を下降階乗冪 の級数:

で展開したときの展開係数として定義される。この定義では、 である。便宜上、 と定義する。第2種スターリング数は

なる漸化式で計算できる。この漸化式は、上記の級数展開による定義から導出できる。その漸化式に従うと、第2種スターリング数は下表のよう計算される。

nk 0 1 2 3 4 5 6 7
0 1
1 0 1
2 0 1 1
3 0 1 3 1
4 0 1 7 6 1
5 0 1 15 25 10 1
6 0 1 31 90 65 15 1
7 0 1 63 301 350 140 21 1

第2種スターリング数 は、第1種スターリング数に符号補正を施した に対して逆行列の関係、すなわち、

の関係を満たす。ただし、 とする。また、クロネッカーのデルタである。この関係は、 を下降階乗冪 で展開した数式に対し、 のべき級数で展開すれば導出できる。べき乗 は 上昇階乗冪 で展開した場合も、第2種スターリング数を含む展開係数を伴う。その展開した結果は、

となり、展開係数は第2種スターリング数に符号補正 を施した値である。この展開式は、 であることに注意すれば導出できる。

第2種スターリング数の性質

第1の関係式は第2種スターリング数の漸化式から導出できる。第2の関係式は、 であることから導出できる。第3の関係式は から導出できる。

第2種スターリング数もベルヌーイ数との関係を示すことができる。

第1の関係式は、第1種スターリング数とベルヌーイ数の関係式から導出できる。第2の関係式は、第1の関係式に第2種スターリング数の漸化式を適用すれば導出できる。さらに、第2種スターリング数は公式:

によって一般項が計算できる。しかし、この公式も総和記号を含んでいるため、漸化式よりも便利な公式とは言いがたいが、この公式をベルヌーイ数との関係式(第2の関係式)に代入すればベルヌーイ数の一般項を得ることができる。

組み合わせ数学における意味

第2種スターリング数 は、組合せ数学において、番号づけされた 個の要素をグループ 個に分割する組み合わせの数を与える。分割する要素は番号付けされているので個別に区別できるが、グループは順序を特に区別しないものとする。選択された要素を と書いた場合、 のように要素を置換した列も同一であるとみなす。分割されたグループに含まれる要素の数は均等である必要はなく、1個の要素しか含まないグループがあってもよいとする。要素4個をグループ2個に分割するには、要素が1個と3個のグループに分割する場合と、要素が2個と2個のグループに分割する組み合わせが挙げられる。前者の分割法では、要素4個から単独グループをなす要素1個を選ぶ組み合わせ、すなわち、4通りだけが存在する。後者の分割法では、要素4個から一方のグループを構成する2個を選ぶ組み合わせを考えればよい。その組み合わせは6通りあるのだが、分割される双方のグループが要素2個で構成されることから、グループ間に対称性がある。その対称性から2の自由度がある。その自由度を補正すると、後者の分割法は3通りの組み合わせがあることになる。したがって、要素 0, 1, 2, 3 をグループ2個に分割する組み合わせは、全部で以下の7通りがある。

上で列挙した要素4個をグループ2個に分割する組み合わせは、次のように構成することもできる。手順1として、要素3個をグループ1個に分割し、4番目の要素を第2のグループとして単独で追加する。手順2として、要素3個をグループ2個に分割し、4番目の要素をどちらかのグループに挿入する。手順1で構成される組み合わせは、要素3個をグループ1個に分割する組み合わせの数:1通りに等しい。手順2で構成される組み合わせは、要素3個をグループ2個に分割する組み合わせの数:3通りに対して、4番目の要素を2つのグループのどちらかに挿入する組み合わせ(2 通り)があるので、全部で6通りである。手順1と手順2による組み合わせの和は7通りとなり、上で列挙した組み合わせの数と一致する。

これを一般化して、要素 個をグループ 個に分割するには、次の2つの手順で組み合わせを作ればよい。手順1として、要素 個をグループ 個に分割し、 番目の要素を 番目のグループとして単独で追加すればよい。手順2として、要素 個をグループ 個に分割し、 番目の要素を 個のグループのどれかに挿入する。手順1で構成される組み合わせの数は、要素 個をグループ 個に分割する組み合わせの数に等しい。手順2で構成される組み合わせの数は、要素 個をグループ に分割する組み合わせの数の 倍に等しい。したがって、手順1と手順2で構成される組み合わせの和として、求める組み合わせの数は第2種スターリング数の漸化式で与えられる。要素 個をグループ 個に分割する組み合わせは、第2種スターリング数 で与えられる。

脚注

  1. ^ Charalambos A., Charalambides, "Combinatorial Methods in Discrete Distributions," John Wiley & Sons, Inc., p.73, 2005.

関連項目

外部リンク


「Stirling number」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Stirling number」の関連用語

Stirling numberのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Stirling numberのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのスターリング数 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS