シュボ触媒とは? わかりやすく解説

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シュボ触媒

(Shvo catalyst から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/26 03:13 UTC 版)

シュボ触媒
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChemSpider
PubChem CID
性質
C62H42O6Ru2
モル質量 1085.13
外観 橙色の固体
融点 223 - 227 °C (433 - 441 °F; 496 - 500 K)
極性有機溶媒
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
 verify (what is  N ?)

シュボ触媒英語: Shvo catalyst)は、化学式(C
5
(C
6
H
5
)
4
O)
2
H(Ru(CO)
2
)
2
Hで表される有機金属化合物である。アルデヒドケトンイミンなどの極性官能基水素化触媒する。「外圏機構」による移動水素化触媒の初期の例として、学術的な関心を集めている[1]フェニル基のいくつかがp-トリル基に置換されたいくつかの誘導体が知られている。シュボ触媒は、作用機構に金属と配位子の両方を含む均一水素化触媒の一例である。

合成と構造

触媒の名称は、ドデカカルボニル三ルテニウムの触媒作用に対するジフェニルアセチレンの影響を研究していた過程で発見したYouval Shvoに由来する。ジフェニルアセチレンとドデカカルボニル三ルテニウムの反応は、ピアノ椅子錯体(Ph
4
C
4
CO)Ru(CO)
3
)を生成する。このトリカルボニルの水素化により、シュボ触媒が得られる[2][3]アナログであるKnölker錯体英語版も知られている。

シュボ触媒は、架橋ヒドリド配位子と強い水素結合により架橋された等価なRu中心対を含む。溶液中では、錯体は非対称的に分離する。

(C5Ph4O)2HRu2H(CO)4
シュボ触媒によるケトンの移動水素化における中間体の提唱された構造[1]
シュボ触媒を用いたカルボニルの水素化の例

適切な水素供給源や水素ガスの存在下では、シュボ触媒はアルデヒド、ケトン、イミン、イミニウムイオンなどの極性官能基の水素化に作用する。様々なアルケンやケトンは水素化が可能であるものの、その条件(145 ℃・500 psi)は限られている[1][4]アルキンの水素化におけるシュボ触媒の利用の障害の一つは、アルキンと強く結合し、徐々に触媒を毒する安定な錯体を形成してしまう傾向である。アリルアルコールのケトンへの変換に示されるように、分子内反応も進行する[5]。シュボ触媒は、脱水素化も触媒する[6][7]

シュボ触媒を用いたイミンの水素化の例

機構

シュボ触媒による水素化の機構は、速度決定における二重結合と錯体との相互作用に関する2つの異なる説明について、広く議論がなされてきた。提案されている2つの説明は、遷移状態において金属のみと相互作用する「内圏機構」と、シクロペンタジエノールプロトンも基質と相互作用する「外圏機構」である。反応速度論的同位体研究は、ヒドロキシ配位子と水素化金属の両方が速度に強い影響を与えていることから、協調的な遷移が起こっていることを示唆している[1]

その他の反応

シュボ触媒は、ティシチェンコ反応すなわちアルコールからエステルを形成する反応を促進する。この反応のはじめの段階では、第一級アルコールがアルデヒドへ変換される[8]

シュボ触媒を用いたプロパルギルアルコールのアミノ化から得られる生成物

アミンの付加は、イノンへの酸化を経て、生成物を還元することで促進される[9]

シュボ触媒を用いたアミンのアルキル化の例

「水素の借用」のもう一つの例として、他のアミンを用いたアミンのアルキル化もシュボ触媒によって促進される。この反応はイミンへの酸化を通して進行し、求核攻撃が可能となり、続いて脱離反応と二重結合の還元が行われる[10]

脚注

  1. ^ a b c d Conley, Brian L.; Pennington-Boggio, Megan K.; Boz, Emine; Williams, Travis J. (2010). “Discovery, Applications, and Catalytic Mechanisms of Shvo's Catalyst”. Chemical Reviews 110 (4): 2294–2312. doi:10.1021/cr9003133. PMID 20095576. 
  2. ^ Shvo, Y.; Czarkie, D.; Rahamim, Y. (1986). “A new group of ruthenium complexes: structure and catalysis”. J. Am. Chem. Soc. 108 (23): 7400–2. Bibcode1986JAChS.108.7400S. doi:10.1021/ja00283a041.  Y. Blum, D. Reshef, and Y. Shvo. H-transfer catalysis with Ru3(CO)12. Tetrahedron Lett. 22(16) 1981, pp. 1541-1544. Blum, Y.; Shvo, Y. Isr. J. Chem. 1984, 24, 144.
  3. ^ Lisa Kanupp Thalén, Christine Rösch, Jan-Erling Bäckvall (2012). “Synthesis of (R)-2-Methoxy-N-(1-Phenylethyl)Acetamide via Dynamic Kinetic Resolution”. Organic Syntheses 89: 255. doi:10.15227/orgsyn.089.0255. 
  4. ^ Samec, Joseph S. M.; Bäckvall, Jan-E. (2008). “Hydroxytetraphenylcyclopentadienyl(tetraphenyl-2,4-cyclopentadien-1-one)hydrotetracarbonyldiruthenium(II)”. Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis. John Wiley & Sons. doi:10.1002/047084289X.rn01063. ISBN 978-0471936237.
  5. ^ Bäckvall, Jan-E.; Andreasson, Ulrika (January 1993). “Ruthenium-catalyzed isomerization of allylic alcohols to saturated ketones”. Tetrahedron Letters 34 (34): 5459–5462. doi:10.1016/S0040-4039(00)73934-7. 
  6. ^ Conley, Brian L.; Williams, Travis J. (2010). “Dehydrogenation of ammonia-borane by Shvo's catalyst”. Chemical Communications 46 (26): 4815–7. doi:10.1039/C003157G. PMID 20508879. 
  7. ^ Choi, Jun Ho; Kim, Namdu; Shin, Yong Jun; Park, Jung Hye; Park, Jaiwook (June 2004). “Heterogeneous Shvo-type ruthenium catalyst: dehydrogenation of alcohols without hydrogen acceptors”. Tetrahedron Letters 45 (24): 4607–4610. doi:10.1016/j.tetlet.2004.04.113. 
  8. ^ Blum, Y.; Shvo, Y. J. Organomet. Chem. 1984, 263, 93.
  9. ^ Haak, E. Eur. J. Org. Chem. 2007, 2815.
  10. ^ Hollmann, D.; Bahn, S.; Tillack, A.; Beller, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 8291.



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