R4600とは? わかりやすく解説

R4600

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/19 08:09 UTC 版)

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IDT製のR4600

R4600MIPS III命令セットアーキテクチャ (ISA) を実装したマイクロプロセッサの一種で、Quantum Effect Devices (QED) が設計した。開発コード名は "Orion"。QEDは設計専門企業で工場を持たないため、ライセンス提供を受けてR4600を実際に最初に製造したのはIDTで、その後東芝、さらに日本鋼管 (NKK) が製造した。これらの半導体企業はR4600をそれぞれ製造し販売した。R4600が対象としたのは、ローエンドのワークステーション市場とハイエンドの組み込みシステムである。例えばシリコングラフィックスが Indy ワークステーションに採用し、DeskStation TechnologyWindows NT ワークステーションに採用した。R4600を採用したIndyは低価格だが整数演算性能が高かった。組み込みシステムでは、シスコシステムズがルーターなどに採用し、キヤノンがプリンターに採用した。

歴史

R4600を最初に製造したのはIDTで、1993年8月に最初の試作品が完成した。100MHz版は1993年10月に発表された。1994年3月のCeBITでIDTは133MHz版を発表。どちらも0.65μmのCMOSプロセスで製造されており、電源電圧は5Vだった。NKKは1994年中ごろにNR4600として発表。最初のNR4600は100MHzで、0.5μmプロセスで製造し、電源電圧は3.3Vだった。

解説

R4600は設計が単純化されている。1サイクルに最大1命令を整数パイプラインまたはFPUに発行する。整数演算命令の多くは1サイクルのレイテンシで実行できるが、乗算と除算はその限りではない。乗算は32ビットでも64ビットでもレイテンシが8サイクル、スループットが6サイクルである。除算は32ビットの場合レイテンシとスループットが32サイクル、64ビットの場合は61サイクルかかる。

FPUはパイプライン化されておらず、それによってチップサイズとコストを低減している。このため浮動小数点演算性能が低い。しかし、ローエンドのコンピュータや組み込み用途ではそれで十分だった。単精度および倍精度の加算はレイテンシとスループットが4サイクルである。単精度および倍精度の乗算は一部パイプライン化されており、レイテンシが8サイクルで、スループットが6サイクルとなっている。単精度の除算はレイテンシとスループットが32サイクルで、倍精度ではそれらが61サイクルとなる。平方根の計算は対応する除算より1サイクルだけ短い。

一次キャッシュは、命令とデータそれぞれが16KBで、2ウェイセットアソシアティブ方式になっている。二次キャッシュを接続可能だが、R4600本体にはそれを制御するハードウェアは備わっていないので、外部にカスタムASICまたは何らかのチップセットを必要とする。つまり、R4000SCなどとは異なり、SysADバスとCPUの間に二次キャッシュが位置する構成になる。SysADバスは64ビット幅で、最高50MHzで駆動され、帯域幅は最大で400MB/sとなる。R4600はマルチプロセッシングをサポートしていない。各種クロック信号を生成するために、3種類のクロック信号を外部から供給する必要がある。

R4650とR4640

派生品のR4650は1994年10月19日に発表された。デジタル信号処理 (DSP) 向けに固定小数点数演算用の命令が独自に追加されている。R4650の廉価版R4640は1995年11月27日に発表された。こちらは外部インタフェースが64ビットから32ビットに縮小されている。1997年9月16日、これらの150MHz版と180MHz版が登場した。1万個ロットでR4640を購入した場合、150MHz版は30ドル、180MHz版は39ドルだった。同じくR4650は60ドル(150MHz)と74ドル(180MHz)だった。R4650には133MHz版と167MHz版もある。ナムコのアーケードゲームの基板SYSTEM23でR4650が使われた。R4640はWebTVの WebTV Plus で使われた。

R4700

IDT製R4700。チップ本体のカバーを外したところ

R4600を0.5μmのCMOSプロセスに移植したのがR4700で、こちらも開発コード名は "Orion" である。100MHz、133MHz、150MHz、175MHz、200MHzの版が存在した。

参考文献

関連文献


R4600

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/10/08 15:16 UTC 版)

Quantum Effect Devices」の記事における「R4600」の解説

R4000基づいた設計QED創設者R4000開発にも関わっており、もっと単純な実装をすれば価格性能比向上する考えていた。そのため R4600ではパイプラインを5段に戻しキャッシュメモリ大容量化したこの方針は成功し当時としては高性能を誇るマイクロプロセッサとなった当初ラップトップ型コンピュータへの搭載意図していたが、そのような市場形成されなかった。シスコシステムズルーターにこれを採用したRISCとしては初)。アタリなどがモータルコンバットなどのアーケードゲーム使用した。R4600の製造・販売IDT東芝が行った。

※この「R4600」の解説は、「Quantum Effect Devices」の解説の一部です。
「R4600」を含む「Quantum Effect Devices」の記事については、「Quantum Effect Devices」の概要を参照ください。

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