HD 269810
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/14 22:09 UTC 版)
HD 269810 | ||
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星座 | かじき座 | |
見かけの等級 (mv) | 12.28[1] | |
位置 元期:J2000.0 |
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赤経 (RA, α) | 05h 35m 13.905s[2] | |
赤緯 (Dec, δ) | −67° 33′ 27.51″[2] | |
視線速度 (Rv) | 264 km/s[1] | |
固有運動 (μ) | 赤経: 0.9 ミリ秒/年[2] 赤緯: -0.9 ミリ秒/年[2] |
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距離 | 1.6 ×105 光年[注 1] (4.9 ×104 パーセク[3]) |
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絶対等級 (MV) | -6.6[1] | |
物理的性質 | ||
半径 | 18 R☉[4][注 2] | |
質量 | 150 M☉[4] | |
表面重力 | 10 G[3][注 3] | |
自転速度 | 173 km/s[5] | |
スペクトル分類 | O2 III(f*)[1] | |
光度 | 2.19 ×106 L☉[4] | |
表面温度 | 52,500 K[4] | |
色指数 (B-V) | -0.23[1] | |
他のカタログでの名称 | ||
RMC 122, Sk-67 211, GSC 09162-00101, TYC 9162-101-1, 2MASS J05351389-6733275 | ||
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HD 269810は、大マゼラン雲にある青色巨星である。既知の恒星の中で、質量が最も大きい恒星の一つ、且つ光度が最も高い恒星の一つで、スペクトル型がO2の数少ない既知の恒星の一つである。
名称
HD 269810は、ヘンリー・ドレイパーカタログ収録の恒星名だが、269810番はカタログ第1版には存在しなかった数字で、拡張版で追加されたものであり、正式にはHDE 269810という。
特徴
HD 269810は、スペクトル型がO2 III(f*)で、表面温度は52,500Kにもなるとみられる。光度階級がIIIであるので、主系列からいくぶん進化した段階にあることを示している。(f*)は、スペクトルの特異性を示す記号で、3階電離窒素イオン(波長4,058Å)の輝線が2階電離窒素イオン(波長4,634・4,640・4,642Å)輝線より強く、2階電離窒素イオンの輝線の強さは中程度で、そこに弱い1階電離ヘリウムイオン(波長4,686Å)の吸収線が付随することを示しており、HD 269810はこのようなスペクトル型の恒星の典型とされる[6]。
半径は、太陽の18倍程度だが、表面温度が非常に高いので、太陽の200万倍くらい明るい。高い温度は、高速の恒星風を生み出し、その終端速度は3,750km/sに達する[7]。この恒星風で、1年当たり太陽質量の100万分の1という質量の物質を放出している[3]。1995年の段階では、HD 269810の質量は太陽の190倍で、既知の恒星の中で最も大きいとされていた[7]が、その後の研究で太陽の150倍程度であろうと考えられている[4]。
進化
HD 269810くらい質量の大きい恒星が、大マゼラン雲に典型的な金属量だったとすると、強い対流と自転による撹拌で、化学的にほぼ均質な状態で進化すると予想される[8]。そのような恒星の表面での組成は、核で水素核融合が起こっている段階でも、ヘリウム、窒素が過剰になる。
この先は、高光度青色変光星を経ずにウォルフ・ライエ星へと進化し、ウォルフ・ライエ星としての進化を経てIc型超新星(またはIb型)となり、後にはブラックホールが残ると考えられる[9]。全体での寿命はおよそ200-300万年で、そのうち大半をO型星として過ごす。
高速で自転する大質量星は、最終的に極超新星として、長周期ガンマ線バーストを起こすことが期待されるが、HD 269810のように質量があまりに大きいと、激しい質量放出と外層の急膨張のせいで、自転速度がどんどん低下すると予想され、長周期ガンマ線バーストにはならないのではないかと考えられる[8]。
脚注
注釈
- ^ 距離(光年)は、3.26×距離(パーセク)により計算。
- ^ 光度と表面温度から、シュテファン=ボルツマンの法則に基づいて計算。
- ^ 出典での表記は、
05h 35m 13.905s, −67° 33′ 27.51″
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