GNUの派生とは? わかりやすく解説

GNUの派生

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/20 03:22 UTC 版)

GNUの派生GNU ディストリビューションまたはGNU ディストロとも呼ばれる)は、GNUHurdカーネルGNU Cライブラリ、システムライブラリ、GNU Core UtilitiesBashGNOMEGNU Guixなど)をベースとしたオペレーティングシステム (OS) である[1][2][3][4][5]GNUプロジェクトによると、これにはLinuxカーネルを使うOSの大部分と、多少のBSDベースのカーネルを使うOSが含まれる[6][7]

GNUのユーザーは、通常OSをダウンロードして用いるが、このOSは、組み込みデバイスからパーソナルコンピュータ (PC)、スーパーコンピュータにいたるまで、様々なシステムで利用可能である。

Hurdカーネル

Debian GNU/Hurd.

Hurdは、Linux-libreが公式のGNUパッケージとなる以前は、公式な形で、GNUシステムのために、GNU自身によって開発されているカーネルであった。Debian GNU/Hurdは、Debian 7.0 (Wheezy) において、テクノロジープレビューとしてリリースされることが議論されたが、これはシステムが充分に成熟していなかったため、実現しなかった[8]。しかしながら、Debian GNU/Hurdのメンテナは、非公式のリリースをDebian 7.0のリリース日に合わせて公開することを決断している。Debian GNU/Hurdは、依然として実務に使うためにはパフォーマンスと安定性の問題があると考えられており、同時に、JavaX.orgグラフィカルユーザインタフェース (GUI) とグラフィックドライバの実装が不十分であるという問題もある[9]。Debianパッケージのうち、3分の2がHurdに移植されている[10]

Arch Hurdは、Arch Linuxの派生ディストリビューションで、これはArchをP6アーキテクチャに最適化されたパッケージとセットでGNU Hurdシステムに移植したものである。このプロジェクトのゴールは、BSDスタイルのinitや、Pacmanローリングリリース、シンプルなセットアップなどのArch的なユーザー環境をGNU Hurdにおいて提供することであり、一時的にシステムを利用する分には充分に安定していた。しかしながら、プロジェクトは2018年に中止された。プロジェクトは、評価目的のためのLive CDと、インストール利用のための文書を提供していた。

Linuxカーネル

Parabola

GNU/LinuxまたはGNU+Linuxという単語は、フリーソフトウェア財団 (FSF) とその支援者によって使われているが、これはLinuxカーネルとともにGNUのシステムソフトウェアを用いていることを表すためのものである。そのようなディストリビューションにおいては、Linuxカーネルに加えて、基本的なGNUパッケージとプログラムがインストールされている。これらのディストリビューションのうち、GNU/Linuxという単語を使うもので最も有名なのがDebian GNU/Linuxである。

BSDカーネル

Debian GNU/kFreeBSD

Debian GNU/kFreeBSDは、IA-32x86-64アーキテクチャのコンピュータのためのOSで、FreeBSDのカーネルに、Debianのパッケージ管理システムとGNUのソフトウェアを組み合わせた構成となっている。kFreeBSDのkは、カーネル (kernel) の省略で[11]、FreeBSDからはカーネルのみ完全な形で利用していることを反映している。OSは、2011年2月6日にDebian Squeeze (6.0) として公式にリリースされている[12]

Debian GNU/NetBSDは、GNUのユーザーランドをNetBSDに移植した実験的なシステムで、公式なリリースはなされていない。IA-32[13]DEC Alpha[14]の両アーキテクチャへの移植が進められていたが、2002年からメンテナンスは行われておらず、現在はダウンロードも不可能である[15]

OpenSolaris (Illumos) カーネル

Nexenta OSは、OpenSolarisのカーネルに、Debianのパッケージ管理システムとGNUのユーザーランド(ただしlibcはOpenSolarisのものが使われている)を結びつけた最初のディストリビューションである。Nexentaは、IA-32とx86-64の両アーキテクチャ向けに利用可能である。このプロジェクトはNexenta Systems Incによって始動され、また開発に対する継続的な支援がなされた[16]。また、先に述べたように、NexentaはOpenSolarisのlibcを用いているため、GNUの派生とは見られれないこともある。複数のIllumosディストリビューションはGNUのユーザーランドを標準で用いている[17]

Darwinカーネル

Windowsカーネル

Cygwinプロジェクトは、Microsoft Windowsにおいて、POSIX APIの機能性をCライブラリの形態で提供する互換レイヤーのプロジェクトで、GNUや他のUnix系のプログラムも合わせて提供されている。最初のリリースは、1995年に現在レッドハットの一部であるシグナスソリューションズによってなされた。

2016年マイクロソフトカノニカルは、公式に、LinuxカーネルのシステムコールをWindows NTのものに翻訳する互換レイヤーをWindows 10に加えた。これは、WindowsでELF形式の実行ファイルを実行可能にするものであり、Web開発向けにGNUのユーザーランドを提供することを意図していた[18][19][20]。しばしば、これは"Linux for Windows"と呼ばれるが、これはLinuxカーネルを欠いたものである。

関連項目

脚注

出典

  1. ^ Guix: A New Package Manager & GNU Distribution - Phoronix” (英語). www.phoronix.com. 2018年4月2日閲覧。
  2. ^ UG, Awesome Developers. “Source Code & GPL Open Source” (英語). www.snom.com. 2018年4月8日閲覧。 “Variants of the GNU operating system, which use the kernel Linux, are now widely used; though these systems are often referred to as "Linux", they are more accurately called "GNU/Linux systems".”
  3. ^ “The GNU Operating System” (英語). LinuxReviews. http://en.linuxreviews.org/The_GNU_Operating_System 2018年4月2日閲覧。 
  4. ^ Outreachy internships working with GNU Guix”. www.outreachy.org. 2018年4月2日閲覧。
  5. ^ “13 Lightweight Linux Distributions to Give Your Old PC a New Lease of Life” (英語). MakeUseOf. https://www.makeuseof.com/tag/6-lightweight-linux-distributions-give-pc-lease-life/ 2018年4月2日閲覧。 
  6. ^ Stallman, Richard (2007年6月19日). “Linux and the GNU Project”. About the GNU Project. Free Software Foundation. 2007年7月22日閲覧。
  7. ^ The Debian Project (2007年7月11日). “What is Debian?”. About Debian. 2007年7月22日閲覧。
  8. ^ List of potential release architektures for Debian Wheezy
  9. ^ GNU Hurd news
  10. ^ Debian Wiki: Debian GNU/Hurd
  11. ^ Debian GNU/kFreeBSD FAQ”. 2019年12月7日閲覧。
  12. ^ Debian 6.0 Squeeze released”. 2019年12月7日閲覧。
  13. ^ Debian GNU/NetBSD”. Debian.org. 2012年7月20日閲覧。
  14. ^ Debian GNU/NetBSD for Alpha”. Debian.org. 2012年7月20日閲覧。
  15. ^ Debian GNU/*BSD News”. Debian.org. 2012年7月20日閲覧。
  16. ^ Nexenta Systems, Inc. (2007年6月20日). “Unix Portal:Nexenta OS - Nexenta OpenSolaris”. Sponsors & Support. 2007年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月22日閲覧。 “This work is initiated and sponsored by Nexenta Systems, Inc. Technical support is available from a variety of sources, including Community and Web Forums.”
  17. ^ Illumos Foundation. “Distributions”. Distributions. 2019年12月7日閲覧。 “Default Userland”
  18. ^ “Why Microsoft Making Linux Apps Run on Windows Isn't Crazy” (英語). WIRED. https://www.wired.com/2016/03/microsoft-making-linux-apps-run-windows-isnt-crazy/ 2018年4月8日閲覧。 
  19. ^ scooley. “Frequently Asked Questions (FAQ)” (英語). docs.microsoft.com. 2018年4月8日閲覧。
  20. ^ Rogoff, Zak (2018年3月14日). “Thoughts on GNU/kWindows — GNU programs running natively on top of the Windows kernel”. Medium. 2018年4月8日閲覧。

GNUの派生

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 08:46 UTC 版)

GNU」の記事における「GNUの派生」の解説

詳細は「GNUの派生」を参照 GNUプロジェクトの公式カーネルGNU Hurdマイクロカーネルである。しかしながら2012年時点LinuxカーネルLinux-libreという形で公式にGNUプロジェクト一部となったLinux-libreは、Linuxカーネルから全てのプロプライエタリコンポーネントを削除した派生物である。 FreeBSDカーネルのようなLinux以外のカーネルも、実用的なオペレーティングシステム構成するGNUソフトウェア連携して機能するFSFGNUツールユーティリティと共に利用されるLinuxはGNUの派生とみなすべきである主張しており、そのようなシステムGNU/Linuxという用語で表現するよう奨励している(なおこのことがGNU/Linux名称論争原因となっている)。GNUプロジェクトgNewSenseTrisquelおよびParabola GNU/Linux-libreといったLinux用いた派生支持している。カーネルとしてHurd使用しない派生Linux以外のカーネル用いるものとしては、BSDカーネル上にGNU初期計画実現したDebian GNU/kFreeBSDDebian GNU/NetBSDがある。さらにGNUNetBSDOpenSolarisなどのカーネル動作させる移植プロジェクトもある。

※この「GNUの派生」の解説は、「GNU」の解説の一部です。
「GNUの派生」を含む「GNU」の記事については、「GNU」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「GNUの派生」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「GNUの派生」の関連用語

GNUの派生のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



GNUの派生のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのGNUの派生 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのGNU (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS