ディネオベラトルとは? わかりやすく解説

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ディネオベラトル

(Dineobellator から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/20 03:02 UTC 版)

ディネオベラトル
ディネオベラトルの骨格図。発見された部位は白色で示されている。
地質時代
後期白亜紀マーストリヒチアン
分類
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : デイノニコサウルス類 Deinonychosauria
: ドロマエオサウルス科
Dromaeosauridae
階級なし : 真ドロマエオサウルス類
Eudromaeosauria
亜科 : ヴェロキラプトル亜科
Velociraptorinae
: ディネオベラトル属 Dineobellator
学名
Dineobellator
Jasinski et al., 2020
下位分類群(
  • Dineobellator notohesperus Jasinski et al., 2020

ディネオベラトル学名Dineobellator、「ナバホ族の戦士」の意)は、約7000万年前から約6800万年前に生息した、ドロマエオサウルス科に属する獣脚類恐竜化石は2008年にアメリカ合衆国ニューメキシコ州で発見され、ペンシルベニア大学などの研究チームにより2020年にタイプ種ディネオベラトル・ノトヘスペルス(学名:D. notohesperus)が記載・命名された[1]

大腿骨上腕骨尾椎末節骨など、約20におよぶ部位が特定されている。体高約1メートル、全長約2メートルの羽毛恐竜と見られている。記載者の一人であるスティーブン・ヤシンスキは、ディネオベラトルの動作は小回りが利き、前肢を使って小鳥トカゲおよび他の恐竜を捕食していたと推測した[1]

発見と命名

標徴的な骨

ホロタイプ標本 SMP VP-2430 は2008年にロバート・M・サリヴァンとスティーブン・E・ヤシンスキおよびジェームズ・ニカスによりオホアラモ累層から回収された。2009年にもサリヴァンとヤシンスキにより追加のマテリアルが収集され、2011年に学術論文で報告された[2]。さらなる発掘はヤシンスキにより2015年と2016年に実施された[3]

発見された化石は新たな分類群に属することが判明し、その分類群は2020年にヤシンスキとサリヴァンおよびピーター・ドッドソンにより記載・命名された。命名された種名は Dineobellator notohesperus であり、属名はナバホ語ナバホ族を指す Diné と、ラテン語で「戦士」を意味する bellator に由来する。種小名はギリシア語で「南」を意味する noto~ (νότος) と「西」を意味する hesperis (Ἑσπερίς)に由来し、全体として「南西」を意味する。これは、発見地がアメリカ合衆国の南西部であることにちなむ[3]

記載

生体復元図

ディネオベラトルは全長約2メートル、体重約18 - 22キログラムと推定された[4]。骨格のユニークな特徴からは、ディネオベラトルが通常のドロマエオサウルス科恐竜と比較して手首の関節がより大きく屈曲可能であり、また前肢末節骨の握力が強く、かつ尾の基部の可動域が広いことが示唆される。これらは敏捷性と捕食行動に寄与した可能性がある。加えて、尺骨には羽軸の突起に類似する構造が存在しており、これは全てのドロマエオサウルス科恐竜と同様である[3]

分類

系統解析では、ディネオベラトルはヴェロキラプトル亜科に置かれた。アケロラプトル英語版ダコタラプトルと共に、ディネオベラトルはドロマオサウルス類が白亜紀の末まで多様化を遂げつつあったことを示唆している。北アメリカのヴェロキラプトル亜科の第二の種が発見されたことからは、カンパニアン-マーストリヒチアンの分散イベントの後に北アメリカで分断分布が起きたことが示唆される。以下は、ヤシンスキらによる系統樹である[3]

真ドロマエオサウルス類英語版
サウロルニトレステス亜科

Saurornitholestes

Atrociraptor

ドロマエオサウルス亜科

Dakotaraptor

Dromaeosaurus

Boreonykus英語版

Bayan Shireh dromaeosaurid

Deinonychus

Adasaurus

Utahraptor

Achillobator

ヴェロキラプトル亜科

Acheroraptor英語版

Velociraptor mongoliensis

Velociraptor osmolskae

Dineobellator

Tsaagan

Linheraptor

古生物学

ディネオベラトルのタイプ標本の右手の鉤爪の1つには、同様のサイズの獣脚類の鉤爪と大きさが一致する削られた跡が存在する。これはおそらく別個体のディネオベラトルに起因するものである。治癒した痕跡はなく、この負傷は死の間際に負ったことが示唆される。この標本では、骨折して治癒した肋骨もまた纏められている[3]

古環境

ディネオベラトルと生態系の復元

ディネオベラトルはララミディア大陸南部のオホアラモ累層動物群の一部であり、当時の環境には湿地と水辺の裸子植物森林が優占する豊かな氾濫原が広がっていた。ディネオベラトルと共存した大型恐竜には角竜類オジョケラトプストロサウルス)、ハドロサウルス類エドモントサウルスクリトサウルス)、2タイプの曲竜類ノドサウルス科グリプトドントペルタ英語版を含む)、ティタノサウルス類アラモサウルスがいた。生態系に小型の植物食・雑食恐竜はまだ化石が発見されていないものの、テスケロサウルスなどのテスケロサウルス亜科英語版鳥脚類や、パキケファロサウルスのような堅頭竜類が考えられる。本層の生態系の頂点捕食者アズダルコ科翼竜であるケツァルコアトルスと、ティラノサウルス科の恐竜であるティラノサウルスであった。ドロマエオサウルス科の化石が産出していることは、大型のティラノサウルスが生息していながら活発な捕食者の生態的地位が不連続であったことを示唆する。ディネオベラトルと共存した他の獣脚類には、カエグナトゥス科英語版オジョラプトロサウルス英語版)、オルニトミムス科トロオドン科、また分類が定かでないもののリカルドエステシアがいた。また、本層からは少なくとも8個体の哺乳類化石が産出しており、アルファドンエッソノドン英語版メソドゥマ英語版メニスコエッススといったものが挙げられる。カメの化石は5種類から7種類におよび、アスピデレトイデス、コンプセミスホプロケリス英語版ネウランキルス英語版、プラストメヌス、およびおそらくアドクスバシレミスが産出している。魚類化石はミレダプスとスクアチルヒナ英語版およびおそらくレピソステウス英語版を含む4つの化石が知られている。これらの小動物はディネオベラトルの一般的な獲物になり得たと考えられている[2][3]

出典




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