骨髄非破壊的前処置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/29 13:51 UTC 版)
「造血幹細胞移植」の記事における「骨髄非破壊的前処置」の解説
より新しい治療法である骨髄非破壊的同種移植は、減量強度前処置(reduced-intensity conditioning、略称: RIC)とも呼ばれ、レシピエントの全ての骨髄細胞を除去するには低すぎる用量の化学療法と放射線照射を用いる:320–321。代わりに、骨髄非破壊的移植は重篤な感染症と治療関連死亡のリスクを低下させる。付いて回るがん再発のリスク上昇に対抗するためには「移植片対腫瘍」効果を当てにしている。また重要なことに、治療の初期段階において高用量の免疫抑制剤を必要とするものの、これらの用量は従来型移植よりも低い。この移植後早期、骨髄空間はレシピエントとドナー両方の造血幹細胞が共存する混合キメラの状態となる。 このような骨髄非破壊的前処理を行う移植は「ミニ移植」とも呼ばれる。ミニ移植に関するエビデンスは2016年現在まだ十分とはいえず、研究的治療の段階にある。 免疫抑制療法の用量低下によって、ドナーのT細胞が残存するレシピエントの造血幹細胞を排除すること、移植片対腫瘍効果を誘導することができる。この効果はしばしば軽度の移植片対宿主病(GVHD)を伴う。GVHDの症状が現われることは多くの場合望ましい移植片対腫瘍効果が出現している代理マーカーであり、免疫抑制剤の用量が持続的治療のために適切であるというシグナルとしても機能している。 より穏やかな前処置レジメンのため、これらの移植は移植関連死亡のリスクを低下させ、したがって従来の同種造血幹細胞移植にはリスクが高すぎると見なされている患者が治癒の可能性がある治療を受けることができるようになる。個々の病気ならびにレシピエントに対する最適な前処置戦略は十分に確立されていないが、RICは骨髄破壊的前処置レジメンに適さず、がん再発のより高いリスクを許容することのできる高齢の患者において選択肢となり得る。
※この「骨髄非破壊的前処置」の解説は、「造血幹細胞移植」の解説の一部です。
「骨髄非破壊的前処置」を含む「造血幹細胞移植」の記事については、「造血幹細胞移植」の概要を参照ください。
- 骨髄非破壊的前処置のページへのリンク