集団的合意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 03:36 UTC 版)
集団の合意によって「砂山」という言葉の意味を決めることもできる。この手法は、砂粒の集まりがどれだけの量になれば「砂山」と呼べるか、集団の各人の大半が納得する定義を決定することである。言い換えれば、集団の各人の考え方の分布の期待値で「砂山」の意味を確率的に決めるといえる。 例えば、ある集団では次のように決めるかもしれない。 一粒の砂は砂山ではない。 大量の砂粒は砂山である。 この2つの極値の間で、その集団の各人は必ずしも個々の量の砂を砂山と呼ぶか否かについて合意できているとは限らない。各人の意見を集約すれば、明確に「砂山」か否かが決定されるのではなく、ある量の砂についてそれを「砂山」と呼ぶ確率が0と1の間の何らかの値に定まるだけである。 この手法は用語の意味をしっかり定義するという点で便利である。 明確な言葉は、その言葉の使用が妥当かどうかを他人が納得できる機構を持っている。曖昧な言葉はそのような機構を持たない。ある人が身長2メートルの男の背が低いと言った場合、その人はプロのバスケットボール選手を基準としているのかもしれない。曖昧な言葉は合意が形成されている場合には便利だが、その範囲外の使い方をすると混乱を生じさせる。 砂山のパラドックスは単に、人が曖昧な言語をどのように使うのかについての論理的分析を示したものである。それは、曖昧な言葉の定義に万人が合意すると仮定することが誤謬であることを示している。ある人々はその使い方を正しいと判断したとしても、万人がそれに合意するわけではない。合意形成の手法は、「砂山」の定義を主観的な定義から客観的な定義に変えるものである。
※この「集団的合意」の解説は、「砂山のパラドックス」の解説の一部です。
「集団的合意」を含む「砂山のパラドックス」の記事については、「砂山のパラドックス」の概要を参照ください。
- 集団的合意のページへのリンク