遺伝子カセットとは? わかりやすく解説

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遺伝子カセット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/07 05:08 UTC 版)

遺伝子カセット(Gene cassette)は、可動性遺伝因子の1つであり、遺伝子及び組換え部位を含む。インテグロンに組み込まれるか環状DNAとして存在する[1]。遺伝子カセットはしばしば抗性物質耐性遺伝子を含む。例えば、kanMXカセットは、細菌カナマイシン耐性を与える。

インテグロン

インテグロンは細菌に存在する遺伝子構造であり、遺伝子カセットの発現、獲得、交換を行う。インテグロンは、プロモーター、組換え部位、部位特異的組換え英語版を行うリコンビナーゼ英語版から構成される[2]。これまでに3つのクラスのインテグロンが記載されている[1]。インテグロンに挿入される可動性ユニットが遺伝子カセットである[2]。プロモーターを持たない単一遺伝子を運搬するカセットでは、インテグロン内の近傍プロモーターからカセット全体が転写される[3]。遺伝子カセットは環状DNAの中間体を介して挿入と切り出しが行われていると考えられている[4]。この過程では、カセット末端に存在する59塩基要素(59-be)とも呼ばれる短い配列と間で組換えが起こる。59-beは、部位特異的リコンビナーゼ(インテグラーゼ)の認識部位として作用する多様な配列であり、必ずしも59塩基長であることを意味しない[5]

遺伝子工学

遺伝子工学では、遺伝子カセットは、1つ以上の制限酵素認識部位の間に1つ以上の任意の遺伝子を挿入するためのDNA運搬用の操作可能な小断片として用いられる。(通常はベクター上の)DNA配列から制限酵素を用いて断片を「カット」し、新しい配列内に「ペースト」することで、別のDNA配列に転移させることができる。

遺伝子の水平伝播

遺伝子の水平伝播は、親からの遺伝以外の方法で細胞間の遺伝的要素の転移を行う機構である。水平伝播は、細菌間での抗生物質耐性遺伝子の拡散の多くを担っている[6]。抗生物質耐性遺伝子や、外毒素など他の病原性因子を含む遺伝子カセットは、ファージ形質導入、環境からの取り込み、形質転換[7]、細菌間の接合[8]によって細胞から細胞へ転移する。生物間で遺伝子カセットの転移を行う能力は、原核生物の進化に大きな役割を果たしてきた。大腸菌など片利共生生物の多くは、通常は抗生物質耐性遺伝子を含む遺伝子カセットを1つまたはそれ以上持っている[9]。非病原性の片利共生生物から無関係の生物種への遺伝的エレメントの水平伝播によって、多剤耐性を有するビルレンスの高い病原体が生じる。耐性を持つ生物の増加は研究者や医師にとって困難な課題となっている。

出典

  1. ^ a b Hall, RM; Collis, CM (1995). “Mobile gene cassettes and integrons: Capture and spread of genes by site-specific recombination”. Molecular microbiology 15 (4): 593–600. doi:10.1111/j.1365-2958.1995.tb02368.x. PMID 7783631. 
  2. ^ a b Rapa, Rita A.; Labbate, Maurizio (2013-12-09). “The function of integron-associated gene cassettes in Vibrio species: the tip of the iceberg”. Frontiers in Microbiology 4: 385. doi:10.3389/fmicb.2013.00385. ISSN 1664-302X. PMC 3856429. PMID 24367362. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24367362. 
  3. ^ Collis, C. M.; Hall, R. M. (1995-01). “Expression of antibiotic resistance genes in the integrated cassettes of integrons”. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 39 (1): 155–162. doi:10.1128/aac.39.1.155. ISSN 0066-4804. PMC 162502. PMID 7695299. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7695299. 
  4. ^ Collis, Christina M.; Hall, Ruth M. (1992-10). “Gene cassettes from the insert region of integrons are excised as covalently closed circles” (英語). Molecular Microbiology 6 (19): 2875–2885. doi:10.1111/j.1365-2958.1992.tb01467.x. ISSN 0950-382X. http://doi.wiley.com/10.1111/j.1365-2958.1992.tb01467.x. 
  5. ^ Hall, R. M.; Brookes, D. E.; Stokes, H. W. (1991-08). “Site-specific insertion of genes into integrons: role of the 59-base element and determination of the recombination cross-over point”. Molecular Microbiology 5 (8): 1941–1959. doi:10.1111/j.1365-2958.1991.tb00817.x. ISSN 0950-382X. PMID 1662753. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1662753. 
  6. ^ Gyles, C.; Boerlin, P. (2014-03). “Horizontally transferred genetic elements and their role in pathogenesis of bacterial disease”. Veterinary Pathology 51 (2): 328–340. doi:10.1177/0300985813511131. ISSN 1544-2217. PMID 24318976. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24318976. 
  7. ^ Domingues, Sara; Harms, Klaus; Fricke, W. Florian; Johnsen, Pål J.; da Silva, Gabriela J.; Nielsen, Kaare Magne (2012). “Natural transformation facilitates transfer of transposons, integrons and gene cassettes between bacterial species”. PLoS pathogens 8 (8): e1002837. doi:10.1371/journal.ppat.1002837. ISSN 1553-7374. PMC 3410848. PMID 22876180. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22876180. 
  8. ^ Sun, J.; Zhou, M.; Wu, Q.; Ni, Y. (2010-08). “Characterization of two novel gene cassettes, dfrA27 and aadA16, in a non-O1, non-O139 Vibrio cholerae isolate from China”. Clinical Microbiology and Infection: The Official Publication of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases 16 (8): 1125–1129. doi:10.1111/j.1469-0691.2009.03060.x. ISSN 1469-0691. PMID 19906273. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19906273. 
  9. ^ Kheiri, Roohollah; Akhtari, Leili (2016). “Antimicrobial resistance and integron gene cassette arrays in commensal Escherichia coli from human and animal sources in IRI”. Gut Pathogens 8 (1): 40. doi:10.1186/s13099-016-0123-3. ISSN 1757-4749. PMC 5006490. PMID 27582900. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27582900. 
  • Stokes, H.W. et al., Structure and function of 59-base element recombination sites associated with mobile gene cassettes. Mol Microbiol. 1997 Nov;26(4):731-45. [1]
  • Partridge S, Tsafnat G, Coiera E, Iredell J. Gene cassettes and cassette arrays in mobile resistance integrons. FEMS Microbiology Reviews 2009;33(4),757-784. [2]

遺伝子カセット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/12 16:17 UTC 版)

インテグロン」の記事における「遺伝子カセット」の解説

詳細は「遺伝子カセット」を参照 さらに、インテグロンには通常過去組み込まれ1つ上の遺伝子カセットが存在している。この遺伝子カセットは、抗生物質耐性に関する遺伝子コードすると考えられているが、インテグロン中の遺伝子大部分同定されていない。59-beとも呼ばれるattC配列カセット隣接して存在しカセットがattI部位組み込まれることを可能とし、遺伝子の水平伝播実現する

※この「遺伝子カセット」の解説は、「インテグロン」の解説の一部です。
「遺伝子カセット」を含む「インテグロン」の記事については、「インテグロン」の概要を参照ください。

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