過失の推定
過失の推定(かしつのすいてい)
”過失の推定”とは、反証がない限り、過失があったものと判断することをいう。特許権、意匠権、商標権を侵害した者は過失があったものと推定される(特許法第103条、商標法第39条等)。
一般に不法行為に基づく損害賠償請求権は、侵害者が故意あるいは過失によって侵害行為を行った場合に認められる(民法第709条)。しかし、特許権や商標権が侵害された場合には、侵害者に過失があったものと推定される。特許発明の内容については、特許公報、特許登録原簿等によって公示されているからである。したがって、事業として製品の製造や販売を行おうとする者は、当該製品が他人の特許等を侵害していないかどうかを調べておかなければならない。自らが開発した技術であっても、他人の特許権を侵害する場合もあり得るので注意が必要である。このような意味で、特許権や商標権等は、絶対的独占権といわれる。
一方、著作権法には、上記のような過失を推定する規定はない。したがって、独自に創作したものである限り、他人の著作権を侵害するおそれはない。このような意味で、著作権は、相対的独占権といわれる。
(執筆:弁理士 古谷栄男)
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