転写因子結合領域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 15:19 UTC 版)
転写因子が結合するDNA配列のことを、転写因子結合領域と呼ぶ。転写因子は水素結合とファンデルワールス力の組み合わせにより、これらの領域と化学的に結合する。これらの化学的相互作用の特性から、ほとんどの転写因子は個々のDNA配列に特異的に結合する。しかし、転写因子結合領域の全ての塩基が実際に転写因子と接触するわけではなく、また結合力の程度も部位によってまちまちである。このため、転写因子はたった一つのDNA配列にしか結合しないということはなく、似通った配列を持つ複数の領域を結合対象とすることができる。 例として、TATA結合タンパク質(en)(TBP)と呼ばれる転写因子群の共通の結合領域は「TATAAAA」であるが、TBPはこれに類似した配列である「TATATAT」あるいは「TATATAA」にも結合することができる。 転写因子はこのように似通った配列に結合可能で、しかも比較的短い配列を対象とする傾向がある。このため、DNAが充分に長ければ、結合可能な領域が偶然現れても不思議ではない。ところが実際には、転写因子が互換性のある全ての配列に結合するということはない。DNAへの接近性や共役因子の利用可能性など、他の制約が転写因子の実際の結合範囲を狭めている。したがって、あるDNA配列が判明したとしても、そこに実際に転写因子が結合するかどうかの予測は簡単にはできない。
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