複数の語幹を持つ動詞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/01 08:22 UTC 版)
「古代ギリシア語の動詞」の記事における「複数の語幹を持つ動詞」の解説
これよりさらに不規則な動詞もある。英語のbe動詞("am/is, was, been")やgo("go, went, gone")のような例に相当し、時制ごとに異なる語幹を用いる(元になった動詞そのものが異なっている)。例えば、φέρω(phérō、「私は運ぶ」、"I bring, I bear")では、6つの主要部分が3つの異なる動詞から派生したものとなっている。 φέρω, οἴσω, ἤνεγκα/ἤνεγκον, ἐνήνοχα, ἐνήνεγμαι, ἠνέχθην phérō, oísō, ḗnenka/ḗnenkon, enḗnokha, enḗnegmai, ēnékhthēn 「私は運ぶ、運ぶだろう、運んだ、運んだことがある、運ばれたことがある、運ばれた」 (現在、未来、アオリスト、現在完了、中・受動態現在完了、受動態アオリスト) ("I bring, I will bring, I brought, I have brought, I have been brought, I was brought") ὁράω(horáō、「私は見る」、"I see")では、6つの主要部分が3つの異なる語幹、ὁρά(horá), ὀπ(op), ἰδ(id)から作られたものとなっている(最後のものは元はϝιδ- (wid-)と発音されたものであり、ラテン語の動詞video(「私は見る」)の語幹につながっている)。 ὁράω, ὄψομαι, εἶδον, ἑόρᾱκα/ἑώρᾱκα, ἑώρᾱμαι/ὦμμαι, ὤφθην horáō, ópsomai, eîdon, heórāka/heṓrāka, heṓrāmai/ômmai, ṓphthēn 「私は見る、見るだろう、見た、見たことがある、見られたことがある、見られた」 (現在、未来、アオリスト、現在完了、中・受動態現在完了、受動態アオリスト) ("I see, I will see, I saw, I have seen, I have been seen, I was seen") ἔρχομαι(érkhomai、「私は来る/行く」、"I come/go")は主要部分に受動態の2つが欠けていて、4つのみとなっている。 ἔρχομαι, ἐλεύσομαι/εἶμι, ἦλθον, ἐλήλυθα érkhomai, eleúsomai/eîmi, êlthon, elḗlutha 「私は来る/行く、来るだろう/行くだろう、来た/行った、来たことがある/行ったことがある」 (現在、未来、アオリスト、現在完了) ("I come/go, I will come/go, I came/went, I have come/gone") この動詞が複雑なのは、アッティカ方言(古典期の主要なギリシア語方言)で現在(直説法以外)、未完了過去、未来に不規則動詞εἶμι(eîmi、「私は行く(だろう)」、"I (will) go")の活用形が用いられる点である。εἶμι(eîmi)の直説法は古典期には未来の意味(「私は行くだろう」)で用いられていたが、その他の語形、例えば不定詞ἰέναι(iénai、「行くこと」、"to go")は未来の意味にはならない。
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