裁判による契約内容の修正
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/14 08:11 UTC 版)
「損害保険契約」の記事における「裁判による契約内容の修正」の解説
約款解釈の態度は「客観的に」かつ「平均的な保険契約者の理解可能性」を標準として行うべきであるとされる。裁判所は一般に約款の拘束力を認めている。火災保険の例だが、大正4年12月4日大審院判決(民録21輯(しゅう)2182頁)がある。 裁判実務において約款解釈が保険者に不利とされる「作成者不利の原則(疑わしきは約款作成者不利に)」は、信義則(民法1条2項)から導き出される。保険者は約款を一方的に作成しうる地位にあるが、そうした地位にある保険者としては自己の利益のみを考慮した約款を作成することは許されず、その内容を公正なものとすることが信義則上要請されるからである。また、保険契約者にとって保険約款を完全に理解することは難しく、契約条件を十分に理解しないまま契約が締結されることも少なくない。なお、この「作成者不利の原則」は、約款の拘束性を認めたうえでの解釈指針にとどまるものであることに注意が必要である、つまり、前記のとおり行政による契約内容への一定程度の介入があることを前提とすれば、法的安定性の要請から、裁判所の解釈による修正は、文字通りの意味ではとくに不合理な結果となる場合に限定され、解釈により修正が行われる場合でも比較的狭い範囲に限定することが適当とされている。 例1 最高裁平成9年3月25日判決(民集51巻3号1565頁)で、火災保険普通保険約款22条ただし書にある「30日条項」は合理性がなく、当該期間経過後は保険金支払の遅滞責任がある、とされた。 例2 最高裁平成15年7月18日判決(民集第57巻7号838頁)で、税理士特約第5条第2項に関し、モラルリスクがない場合には適用されないとされた。
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