脊髄の血管
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/13 09:48 UTC 版)
脊髄の血管として特に重要なのが1本の前脊髄動脈と2本の後脊髄動脈である。前脊髄動脈は発生過程では左右の分節動脈から各分節レベルで前神経根動脈が脊髄の腹側で上行枝と下行枝に分かれて分布する。それぞれ縦方向の吻合が形成されやがて腹側縦走動脈が2本形成され、それが正中で1本の縦走動脈となる。これが前脊髄動脈となる。多くの前神経根動脈はその後退縮する。その一方で後神経根動脈は前神経根動脈ほど退縮しない。前脊髄動脈は各分節レベルで両側に中心溝動脈と軟膜動脈叢への外側枝を分枝し、脊髄の腹側の2/3の主に遠心性に栄養する。中心溝動脈の頭尾方向の密度は出生児時は全脊髄で一定であるがその後胸髄が他の部位より成長するため中心溝動脈の密度が低くなる。このため胸髄は虚血に弱いとされている。前脊髄動脈も後脊髄動脈も両側の椎骨動脈からはじまり途中で肋間動脈や腰動脈などからの血流(脊髄枝)が加わる。この血管網は複雑で必ずしも頭側から尾側へ血流が流れているわけではない。前脊髄動脈は前正中裂を縦走するが後脊髄動脈は通常は2本の動脈とされるが、動脈叢と考えたほうがよい。前脊髄動脈の閉塞は脊髄梗塞にいたるが、後脊髄動脈は閉塞しても動脈叢が側副路となるため脊髄梗塞になりにくい。脊髄枝はほとんどは前根、後根、後根神経節のレベルで終わる。何本かの脊髄枝は前根、後根のどちらかに分布する分枝が特に発達して前脊髄動脈または後脊髄動脈に流入する。これを前根動脈、後根動脈という。腰髄に分布する1本の前根動脈が他の前根動脈より太くアダムキュービッツ動脈(英語版)といわれる。アダムキュービッツ動脈は脊髄の下位半分の前脊髄動脈を栄養する動脈であり、T9とL1の間のレベルで(まれにL2とL3の間のレベルで)左側から分枝することが多い。
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