脂肪族アルコール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 15:11 UTC 版)

脂肪族アルコール(しぼうぞくアルコール、英: Fatty alcohol)は、脂肪族炭化水素の水素原子 (-H) をヒドロキシ基 (-OH) に置換した化合物で、様々な物質の合成材料となる[1]。芳香族化合物の側鎖の飽和炭素原子にヒドロキシ基がついているベンジルアルコールなどは芳香族アルコールと呼ぶ[1]。
一般に、炭素数が5以下のアルコールを低級アルコール、炭素数が6以上のものを高級アルコールと慣用的に呼んでいる[2]。アルコール分子中のヒドロキシ基の個数をアルコールの価数といい、一価、二価、および三価アルコールに分類される[3]。
生産と生成
天然に生成するほとんどの脂肪族アルコールは、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステルである蝋の形で見られる[4]。細菌や植物、動物が、浮力を得るためや水やエネルギーの代謝源、反響定位のレンズ(海洋ほ乳類)、熱絶縁(植物や昆虫)等を目的として生産する[5]。1900年代初頭になって初めて、脂肪族アルコールが利用されるようになり、当初はブーボー・ブラン還元反応を用いてナトリウムで蝋エステルを還元して製造されていた。1930年代に触媒水素化が実用化され、ヘット等の脂肪酸エステルをアルコールに変換できるようになった。1940年代から1950年代には、石油が化学製品の重要な原料となり、またカール・ツィーグラーがエチレンの重合を発見した。この2つの発見が脂肪族アルコール合成の道を拓いた。
天然物から
伝統的で現在も重要な脂肪族アルコールの原料は、脂肪酸エステルである。蝋エステルはかつてマッコウクジラ油から抽出されていた。その代替となる植物由来の原料はホホバであった。トリグリセリドとして知られる脂肪酸トリエステルは、植物や動物から得られていた。それらのトリエステルはエステル交換反応によってメチルエステルとされ、水素化されてアルコールに変換される。ヘットは通常C16からC18であったが、植物由来の鎖長はより変化に富んでおり、長いC20からC22はセイヨウアブラナから、短いC12からC14はココナッツオイルから得られる。
石油から
脂肪族アルコールは、石油原料からも作られる。ツィーグラー過程により、エチレンをトリエチルアルミニウムを用いてオリゴマー化し、その後空気酸化することにより、偶数番号のアルコールが生産される。
- 脂肪族アルコールのページへのリンク