群論における恒等関係式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/04 03:05 UTC 版)
交換子についての関係式は群論における重要な道具である。以下、ax は x による a の共軛変換(共軛元) x−1ax を表す。 x y = x [ x , y ] . {\displaystyle x^{y}=x[x,y].} [ y , x ] = [ x , y ] − 1 . {\displaystyle [y,x]=[x,y]^{-1}.} [ x y , z ] = [ x , z ] y [ y , z ] {\displaystyle [xy,z]=[x,z]^{y}[y,z]} かつ [ x , y z ] = [ x , z ] [ x , y ] z . {\displaystyle [x,yz]=[x,z][x,y]^{z}.} [ x , y − 1 ] = [ y , x ] y − 1 {\displaystyle [x,y^{-1}]=[y,x]^{y^{-1}}} かつ [ x − 1 , y ] = [ y , x ] x − 1 . {\displaystyle [x^{-1},y]=[y,x]^{x^{-1}}.} [ [ x , y − 1 ] , z ] y [ [ y , z − 1 ] , x ] z [ [ z , x − 1 ] , y ] x = 1 {\displaystyle [[x,y^{-1}],z]^{y}[[y,z^{-1}],x]^{z}[[z,x^{-1}],y]^{x}=1} かつ [ [ x , y ] , z x ] [ [ z , x ] , y z ] [ [ y , z ] , x y ] = 1. {\displaystyle [[x,y],z^{x}][[z,x],y^{z}][[y,z],x^{y}]=1.} 最後の 5 番目の式はホール–ヴィットの恒等式 (Hall–Witt identity) として知られるものである。これは環論的な意味での交換子に対するヤコビの恒等式(次節の環論における恒等関係式)の群論的な対応物である。 上記の x による a の共軛変換の定義は群論の研究者がよく使うものだが、 xax−1 を x による a の共軛変換の定義とする(この場合はしばしば xa と書いたりする)こともよくあるので注意を要する。こちらの定義についても(適当に読み替えを行えば)上述の群論における恒等関係式と同様の関係式が成立する。 特定の部分群で割った剰余群を考えれば、広くさまざまな恒等式が成り立つようにできる。これは可解群や冪零群の研究においてとくに有用である。たとえば、任意の群において積の自乗は ( x y ) 2 = x 2 y 2 [ y , x ] [ [ y , x ] , y ] {\displaystyle (xy)^{2}=x^{2}y^{2}[y,x][[y,x],y]} が成り立つという意味でよく振舞う。したがって、導来部分群が群の中心に含まれる(中心的)ならば ( x y ) n = x n y n [ y , x ] ( n 2 ) {\displaystyle (xy)^{n}=x^{n}y^{n}[y,x]^{\binom {n}{2}}} という関係が成り立つ。
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