絶対配置と相対配置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/13 15:31 UTC 版)
これらの語にはすでに述べたのとは別の意味が歴史的に存在する。エミール・フィッシャーは立体配置を論じるにあたって、グリセルアルデヒドの不斉炭素がどのような立体配置をとっているかを仮定した(原子の空間的な配置を決定するような手段は当時存在しなかったので仮定するしかなかったのである)。この仮定によって、グリセルアルデヒドを出発物質として化学変換を行っていけば、他の化合物の立体配置がどのようになっているかを論じることができた。これによって立体配置が決定された化合物の鏡像異性体は立体配置がグリセルアルデヒドのD体とL体のどちらに対応するかに応じてDL表記法によって区別がなされた。これらの立体配置はフィッシャーの仮定に依存しており、それと相対的に決定されたという意味で相対配置と呼ばれた。後にX線回折の異常分散の測定からフィッシャーの仮定に依存せず直接的に立体配置を決定する方法が開発された。この方法で決定された立体配置を(他の化合物の立体配置に依存していないので)絶対配置と呼んだ。フィッシャーの仮定(とそれから導かれた相対配置)が実際の原子の空間的な配置と一致していたことが確認されたので、ここで挙げた意味の相対配置と絶対配置は特に区別して扱う必要はないことが分かった。もしフィッシャーの仮定が誤りであったら、それまでに報告されていた相対配置はすべてその鏡像の配置に読み替えなくてはならなかった。この用法からの派生として、ある化合物の不斉点上の置換基の1つを立体保持で変換して別の化合物にできるとき、変換前後の化合物でこの不斉点の相対配置は等しいといわれる。
※この「絶対配置と相対配置」の解説は、「立体配置」の解説の一部です。
「絶対配置と相対配置」を含む「立体配置」の記事については、「立体配置」の概要を参照ください。
- 絶対配置と相対配置のページへのリンク