第2次メイ内閣とは? わかりやすく解説

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第2次メイ内閣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/20 06:32 UTC 版)

第2次メイ内閣
イギリス 第97代内閣
成立年月日 2017年6月11日
終了年月日 2019年7月24日
組織
元首 女王エリザベス2世
首相 テリーザ・メイ
与党 保守党
影の内閣 コービン影の内閣
野党 労働党
野党党首 ジェレミー・コービン
詳細
成立直前の選挙 2017年総選挙
議会任期 第57議会期
前内閣 第1次メイ内閣
次内閣 第1次ジョンソン内閣

第2次メイ内閣(だいにじメイないかく)は、2017年6月に行われた庶民院(下院)の総選挙の結果を受けて、女王エリザベス2世の要請により、2017年6月11日にテリーザ・メイが組閣したイギリスの内閣である。総選挙では、与党であった保守党が庶民院(下院)での単独過半数を失い、どの政党も過半数を得ていないハング・パーラメント(宙ぶらりんの議会)状態に至る結果となった。2017年6月9日にメイ首相は、北アイルランド地域政党である民主統一党との協力協定 (confidence and supplyに基づいて、保守党の少数党内閣英語版を組織する意向を表明した。両党間の最終合意は、2017年6月26日に署名され、発表された[1][2]

経緯

2017年の急な総選挙ハング・パーラメントという結果に終わり、保守党は下院議会庶民院で最多数の議席を獲得したものの、絶対多数(過半数)には届かなかった。民主統一党は、交渉次第では、保守党と連立政権を組むか協力協定 (confidence and supplyを結ぶ用意があることを表明していた[3]。2017年6月9日に、保守党のテリーザ・メイ首相は、民主統一党からの支持を得て、新しい少数党内閣英語版を組む意向を表明した[4]。両党は、この民主統一党による支持は、正式な連立内閣の組成ではなく協力協定 (confidence and supply agreement) の形態をとることを表明した。この保守党と民主統一党の合意に対しては、聖金曜日協定贈収賄法に抵触するものとして、法的な異議申立てがなされている[5]

6月10日に保守系ウェブサイトConservativeHome英語版の1,500人の読者を対象に行われた調査では、保守党の党員のほぼ3分の2はテリーザ・メイ首相の辞任を望んでいることがわかった[6]。1,720人のThe Sunday Timesの成人読者を対象としたYouGovの世論調査では、48%がテリーザ・メイ首相は辞任すべきだと回答し、辞任すべきでないと回答したのは38%であった[7]メール・オン・サンデー英語版の1,036人の成人読者を対象にしたSurvationのオンライン世論調査によれば、49%の人はテリーザ・メイ首相の辞任を望んでおり、38%の人は辞任を望んでいないことがわかった[7]

2017年6月10日に首相官邸保守党と民主統一党との間の協定英語版大枠で合意に達したとする声明を発表した[8]。その数時間後、この声明は「誤って発表された ("issued in error") 」として取り消され、保守党と民主統一党との協議はまだ継続中であるとされた[9]ジョン・メージャー元首相は、「保守党と民主統一党との間の協定は北アイルランドの和平交渉を危険にさらすおそれがあるとの不安を抱いている」ことを明らかにした[10]

ジョージ・オズボーン財務大臣は2017年6月11日に、メイ首相について「歩く女の屍 ("dead woman walking") [注釈 1]」と表現した[11]デイヴィッド・リディントン英語版はこれに異議を唱えた[12]労働党の複数の長老政治家は、早期に保守党の少数党政府に異議を唱え、女王演説に応えて、対案となる諸政策を提案することを考えていると述べた。ジェレミー・コービン労働党党首(影の首相)は「労働党が"共感している" ("is sympathetic") 多くの問題に対して、議会には多数派がいる」と信じており、Under-occupancy penalty(いわゆる寝室税)の廃止、年金に関する「トリプルロック」[注釈 2]および冬期燃料手当の維持が例に挙げられると述べた。6月11日に行われたインタビューで、コービンは一年以内にもう一度選挙が行われることを期待すると述べた[13][14]

マイケル・ゴーヴは、少数党政府はおそらく緊縮英語版を緩め、公共サービスへの支出を増やすであろうと述べた[15]。雑誌『New Statesman英語版』のスティーブン・ブッシュも緊縮の緩和に期待している。ブッシュは、もし投票者がイングランドスコットランドおよびウェールズで緊縮が続いていると感じたならば、政府が民主統一党との協定を維持するために北アイルランドで気前よく支出する間に保守党の評判は悪化するかもしれないと述べている[16]。首相官邸によれば、パブリックセクターの労働者に対する1%の報酬割合の上限は検討中であり[17]、それを終わらせたいと思う高い地位にある保守党員の数は増えている[18]

6月11日の午後、テリーザ・メイ首相は新内閣の構成を最終決定した[19]。重要閣僚である財務大臣、外務大臣、内務大臣、EU離脱大臣の4つの閣僚ポストについては、現職の4名全員を留任させることが6月9日の時点で既に固まっていた。新内閣はボリス・ジョンソンデイヴィッド・デイヴィスなどの卓越したEU離脱派の議員が留任されたが、2016年の国民投票でEU残留派を支持していたダミアン・グリーンデービッド・ガウキ英語版の昇進人事もみられた[20]。翌日には下級大臣の人事も割り当てられ、6月12日に新しい内閣および政府の大臣の任命が完了した[21]

2017年7月3日の世論調査では、6月8日の選挙以来、メイ首相の支持率は急落した。回答者の60%は選挙期間中よりもメイ首相に対する印象が悪化したとし、メイ首相に賛成すると答えた回答者よりも賛成しないと回答した人のほうが20%上回り、メイ首相の指導力に期待できないと答えたのが51%であったのに対し、期待すると答えたのは31%であった[22]。7月7日までに、YouGovは保守党より労働党に8ポイントのリード(46%対38%)を与えた。『New Statesman』の記事は、この優位にある要因は家庭の可処分所得が2011年以降で最も急速に下がっていることを示す国家統計局の統計にあると主張している[23]

2018年7月、首相の穏健なEU離脱方針に反発して、欧州連合離脱大臣および外務大臣が相次いで辞職した[24]。また同年11月には離脱計画をめぐって欧州連合離脱大臣と労働年金大臣が辞職し[25]、それぞれステファン・バークレーおよびアンバー・ラッドに交代するなど、欧州連合離脱をめぐる軋轢が政権を苦しめた。議会はEUとの離脱協定案を承認することなく離脱は延期を繰り返し、2019年6月にメイ首相が退陣を表明。7月24日に終焉を迎えた。

閣僚の一覧

イギリスの内閣[26][27]
役職 画像 大臣 任期
内閣の閣僚
首相
第一大蔵卿
国家公務員担当大臣
テリーザ・メイ 2016年7月13日 - 2019年7月24日
筆頭国務大臣 ダミアン・グリーン 2017年6月11日 - 2017年12月20日
内閣府担当大臣 ダミアン・グリーン 2017年6月11日 - 2017年12月20日
デイヴィッド・リディントン 2018年1月8日 - 2019年7月24日
財務大臣
第二大蔵卿
フィリップ・ハモンド 2016年7月13日 – 2019年7月24日
内務大臣 アンバー・ラッド 2016年7月13日 - 2018年4月29日
サジド・ジャヴィド 2018年4月30日 - 2019年7月24日
外務・英連邦大臣 ボリス・ジョンソン 2016年7月13日 - 2018年7月9日
ジェレミー・ハント 2018年7月9日 - 2019年7月24日
欧州連合離脱大臣 デイヴィッド・デイヴィス 2016年7月13日 - 2018年7月8日
ドミニク・ラーブ 2018年7月9日 - 2018年11月15日
ステファン・バークレー 2018年11月16日 -
国防大臣 マイケル・ファロン 2014年7月15日 - 2017年11月1日
ギャヴィン・ウィリアムソン 2017年11月2日 - 2019年5月1日
ペニー・モーダント 2019年5月1日 - 2019年7月24日
保健・社会介護大臣 ジェレミー・ハント 2012年9月4日 - 2018年7月9日
マット・ハンコック 2018年7月9日 -
大法官
司法大臣
デイヴィッド・リディントン 2017年6月11日 - 2018年1月8日
デイヴィッド・ゴーク 2018年1月8日 - 2019年7月24日
教育大臣
ジャスティン・グリーニング 2016年7月14日 - 2018年1月8日
ダミアン・ヒンズ 2018年1月8日 - 2019年7月24日
女性・平等担当大臣 ジャスティン・グリーニング 2016年7月14日 - 2018年1月8日
アンバー・ラッド 2018年1月9日 - 2018年4月30日
ペニー・モーダント 2018年4月30日 - 2019年7月24日
国際貿易大臣
通商会議議長
リアム・フォックス 2016年7月13日 - 2019年7月24日
ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣 グレッグ・クラーク 2016年7月14日 - 2019年7月24日
環境・食糧・農村地域大臣 マイケル・ゴーヴ 2017年6月11日 - 2019年7月24日
運輸大臣 クリス・グレイリング 2016年7月14日 - 2019年7月24日
住宅・コミュニティ・地方自治大臣 サジド・ジャヴィド 2016年7月14日 - 2018年4月30日
ジェームス・ブロークンシャー 2018年4月30日 - 2019年7月24日
貴族院院内総務
王璽尚書
ボウズ・パークのエヴァンス女男爵 2016年7月14日 -
スコットランド大臣 デイヴィッド・マンデル 2015年5月11日 - 2019年7月24日
ウェールズ大臣 アラン・ケアンズ 2016年3月19日 -
北アイルランド大臣 ジェームス・ブロークンシャー 2016年7月14日 - 2018年1月8日
カレン・ブラッドリー 2018年1月8日 - 2019年7月24日
国際開発大臣 プリティ・パテル 2016年7月14日 - 2017年11月8日
ペニー・モーダント 2017年11月9日 - 2019年5月1日
ローリー・スチュアート 2019年5月1日 - 2019年7月24日
デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣 カレン・ブラッドリー 2017年7月3日 - 2018年1月8日
マット・ハンコック 2018年1月8日 - 2018年7月8日
ジェレミー・ライト 2018年7月9日 - 2019年7月24日
労働年金大臣 デイヴィッド・ゴーク 2017年6月11日 - 2018年1月8日
エスター・マクヴェイ 2018年1月8日 - 2018年11月15日
アンバー・ラッド 2018年11月15日 -
ランカスター公領大臣 パトリック・マクローリン 2016年7月14日 - 2018年1月8日
デイヴィッド・リディントン 2018年1月8日 - 2019年7月24日
無所任大臣
(保守党幹事長)
パトリック・マクローリン 2016年7月14日 - 2018年1月8日
ブランドン・ルイス 2018年1月8日 - 2019年7月24日
閣議に出席する閣外の役職
庶民院院内総務
枢密院議長
アンドレア・レッドサム 2017年6月11日 - 2019年5月22日
大蔵省首席担当官 リズ・トラス 2017年6月11日 - 2019年7月24日
庶民院院内幹事
大蔵政務次官
ギャヴィン・ウィリアムソン 2016年7月14日 - 2017年11月2日
ジュリアン・スミス 2017年11月2日 - 2019年7月24日
法務長官 ジェレミー・ライト 2014年7月15日 - 2018年7月9日
ジェフリー・コックス 2018年7月9日 -
移民担当大臣 ブランドン・ルイス 2017年6月11日 - 2018年1月8日
キャロライン・ノークス 2018年1月8日 - 2019年7月24日

脚注

注釈

  1. ^ 「死刑を待つ人=死刑囚」を意味する定型句 "dead man walking" (死んだ男が歩くこと)をもじった表現
  2. ^ 「トリプルロック」とは、物価上昇率、平均賃金上昇率、2.5%アップの3つのうち、最も高いものを基礎年金の上昇率に適用し、基礎年金の上昇率を保証するもの。

出典

  1. ^ “May to form 'government of certainty' with DUP backing”. BBC News. http://www.bbc.com/news/election-2017-40219030 2017年6月9日閲覧。 
  2. ^ “Conservatives agree pact with DUP to support May government” (英語). BBC News. (2017年6月26日). http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-40403434 2017年6月26日閲覧。 
  3. ^ “Who are the DUP and will they demand a soft Brexit to prop up the Tories?”. The Daily Telegraph. http://www.telegraph.co.uk/news/2017/06/09/suddenly-become-important-democratic-unionist-party-could-hold/ 2017年6月9日閲覧。 
  4. ^ “General Election 2017 result live: We will work with DUP friends http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-40547775allies in interests of all UK, says Theresa May”. Belfast Telegraph. (2017年6月9日). http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/general-election-2017/general-election-2017-result-live-we-will-work-with-dup-friends-and-allies-in-interests-of-all-uk-says-theresa-may-35806871.html 2017年6月9日閲覧。 
  5. ^ Tory-DUP deal: Legal challenge launched BBC
  6. ^ Jack Maidment (2017年6月10日). “Almost two-thirds of Conservative Party members want Theresa May to resign as Prime Minister”. telegraph.co.uk. 2017年7月31日閲覧。
  7. ^ a b 48% think Theresa May should step down as Prime Minister, poll shows”. home.bt.com (2017年6月11日). 2017年7月31日閲覧。
  8. ^ Election 2017: DUP agrees 'confidence' deal with Tories” (2017年6月10日). 2017年7月31日閲覧。
  9. ^ http://www.huffingtonpost.co.uk/entry/dup-tory-deal_uk_593ce995e4b0c5a35ca037cd?cop&utm_hp_ref=uk
  10. ^ John Major: Tory-DUP deal risks jeopardising Northern Ireland peace The Guardian
  11. ^ Theresa May is a dead woman walking, says Osborne
  12. ^ Theresa May 'quit' stories blamed on 'warm prosecco' BBC
  13. ^ Jeremy Corbyn: Labour will call on other parties to defeat government
  14. ^ Jeremy Corbyn: 'I can still be prime minister' BBC
  15. ^ Tories may have to ease austerity plans, says Michael Gove The Guardian
  16. ^ The Tories' DUP alliance creates opportunities for Labour New Statesman
  17. ^ PMQs review: Jeremy Corbyn prompts Tory outrage as he blames Grenfell Tower fire on austerity New Statesman
  18. ^ Boris Johnson joins calls to end public sector pay cap BBC
  19. ^ “Cabinet reshuffle: Theresa May praises Tory 'talent'”. The Guardian. (2017年6月11日). http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-40241229 2017年6月11日閲覧。 
  20. ^ Casalicchio, Emilio (2017年6月11日). “Damian Green promoted in Theresa May's reshuffle in hint her Brexit stance will be softened”. Politics Home. https://www.politicshome.com/news/uk/political-parties/conservative-party/theresa-may/news/86608/damian-green-promoted-theresa 2017年6月11日閲覧。 
  21. ^ “Full list of new ministerial and government appointments: June 2017”. gov.uk. (2017年6月12日). https://www.gov.uk/government/news/election-2017-ministerial-appointments 2017年6月21日閲覧。 
  22. ^ Theresa May's ratings slump in wake of general election – poll The Guardian
  23. ^ How excited should Labour be about its 8-point poll lead? New Statesman
  24. ^ “[https://www.theguardian.com/politics/2018/jul/09/boris-johnson-resigns-as-foreign-secretary-brexit Boris Johnson resigns as foreign secretary - Senior Conservative becomes third minister to walk out over Theresa May’s Brexit plan]”. 2018年7月10日閲覧。
  25. ^ Brexit Secretary Dominic Raab resigns over EU agreement”. BBC News (2018年11月15日). 2018年11月15日閲覧。
  26. ^ "Election 2017: Prime Minister and ministerial appointments". gov.uk (Press release). British Government. 11 June 2017. 2017年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月12日閲覧
  27. ^ Her Majesty's Government”. parliament.uk. Parliament of the United Kingdom. 2017年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月12日閲覧。
先代
第1次メイ内閣
イギリスの内閣
2017年6月11日 - 2019年7月24日
次代
第1次ジョンソン内閣



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