相当因果関係の危機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 03:44 UTC 版)
「因果関係 (法学)」の記事における「相当因果関係の危機」の解説
いわゆる大阪南港事件の最高裁判例解説において、担当した大谷直人調査官が、上記の三説(判断基底論)のいずれも実務に適切な思考形態でなく、現に使われていないと批判したことに端を発した議論をいう。 これに対して、あくまで従来の判断基底論を堅持しこれによっても判例は説明可能であるとする考え方がある一方、従来の判断基底論を変容させ、例えば個々の介在事情を考慮する・しないの二択ではなく、実行行為や結果の具体的なあり方との関係で、その危険をどれだけ促進したか・すべきものかといった考慮も相当因果関係の判断に含めるべきとする考え方も現れてきた。 また、ドイツでは、後述の客観的帰属論が有力であり、日本においても注目されている。相当因果関係説の中でも後者のような考え方は、客観的帰属論に近いとされる。それは相当因果関係説の論者も認めるところであるが、そうであるにもかかわらず客観的帰属論としないのは、客観的帰属論は本来、因果関係に対するのみならず、刑法体系全体に関わるものであるところ、すでに判例実務・学説の確立している部分と相容れないところがあるため、相当因果関係に関する部分でのみ、相当因果関係論の名のもとに客観的帰属論の成果を取り込めば足りるとするからである。
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