環境汚染と水道水汚染
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 04:54 UTC 版)
「ヘキサメチレンテトラミン」の記事における「環境汚染と水道水汚染」の解説
ヘキサメチレンテトラミンの不適切な処理が問題になったことがある。2012年5月、埼玉県本庄市の電子材料メーカーが、群馬県高崎市の産業廃棄物処理業者にヘキサメチレンテトラミン10.8 トンを含んだ廃液65.91 トンの処理を委託した。 この電子材料メーカーは廃液のサンプルを産業廃棄物処理業者に渡して「処理できる」との回答を得た上で処理の委託を行った。しかし、この電子材料メーカーは廃液中にヘキサメチレンテトラミンが大量に含まれていることを明示的に伝えていなかったため、産業廃棄物処理業者はこのことを認識していなかった。結果として、産業廃棄物処理業者は処理を受託した廃液に対して中和処理こそ施したものの、ヘキサメチレンテトラミンを積極的に分解するような処理を行わずに利根川水系の烏川へと放流し、少なくとも5トン前後のヘキサメチレンテトラミンが河川水中へと断続的に流入し続けた。 河川水中でヘキサメチレンテトラミンは比較的安定であるものの、ヘキサメチレンテトラミンを含む水に対して塩素消毒を行うとホルムアルデヒドとアンモニアに分解する。このうちアンモニアは有害物質ではあるものの、塩素消毒でクロラミンとなって除かれる。しかしホルムアルデヒドはそのようなわけにはいかず、しかも発がん性のある物質であり、日本では一定濃度以上含んだ水を水道水として供給できないことが定められている。 2012年、鳥川よりも下流の利根川や、利根川の派川である江戸川から取水している水道水を作るための浄水場では、塩素消毒によってヘキサメチレンテトラミンから大量のホルムアルデヒドが発生。一部の浄水場では日本における水道水の水質基準を超えるホルムアルデヒドが水道水中から検出されるに至った。やむを得ず一部の浄水場では取水が停止され、結果として約35万世帯が断水する事態となった。この事件について群馬県警察が捜査を行ったものの、捜査時点でヘキサメチレンテトラミンの放流を直接規制する法制が日本では整備されていないことから立件はされず、埼玉県による排出事業者への行政指導に留められることとなった。
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