法令違憲判決の効力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 05:52 UTC 版)
下級審が法令違憲の判断をしても、下級審に最終的な違憲審査権が帰属するわけではないから、違憲判決の効力は、当該事件についてのみ及び、他の事件に及ばないことは問題ない。 これに対し、最高裁判所は違憲審査権に関する終審裁判所であるため(日本国憲法第81条)、最高裁判所が法令違憲の判断をした場合、当該法令が直ちに無効になるのかについては、争いがある。この点については、大別して、法令違憲と判断した事件についてだけ法令の適用が排除されるにとどまるとする見解(個別的効力説)と、問題となった具体的な事件だけでなく一般的に法令の効力が失われるとする見解(一般的効力説)とに分かれる。 前者の見解に対しては、内閣は法令違憲とされた「法律を誠実に執行」(日本国憲法第73条1号)しなければならないのかという問題などが指摘されることがあり、後者の見解に対しては、法的安定性が害されるという問題などが指摘されており、両者とも必ずしも徹底して主張されているわけではないが、個別的効力説が通説となっている。 なお、最高裁判所が違憲の裁判をした場合は、「その要旨を官報に公告し、且つその裁判書の正本を内閣に送付する。その裁判が、法律が憲法に適合しないと判断したものであるときは、その裁判書の正本を国会にも送付する」とする最高裁判所規則が存在するが(最高裁判所裁判事務処理規則14条)、この規定はあくまでも国会や内閣による対応措置を期待するものであると理解されている。 もっとも、実際の運用としては、法令違憲の判断がされたほとんどの場合において、すぐに違憲とされた規定を改正する措置が施されている。もっとも、前述の尊属殺重罰規定違憲判決に対しては、直ちに尊属殺に関する規定を削除する措置は採られなかったが(1995年の刑法改正により削除)、係属中の訴訟については普通殺人に罪名を切り換える措置が採られ、既に訴訟が確定している場合は、個別的に恩赦をすることにより対応された。
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