水紡機とは? わかりやすく解説

水力紡績機

(水紡機 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 01:20 UTC 版)

水力紡績機(すいりょくぼうせきき、water frame) は、水車を動力とした紡績機水紡機イギリスの発明家、リチャード・アークライトによって開発された。

ヴッパータールのthe Museum for Early Industrialisationにある模型

概要

水力を利用した紡績の機械は古代エジプト時代からあったが、綿糸の生産用に設計された本格的な水力紡績機は、1765年に最初に使用された[1][2]。 1769年にこの技術を特許取得したリチャード・アークライトによって開発された[3]。設計は、アークライトに雇われた時計職人ジョン・ケイによってトーマス・ハイズのために作られた紡績機に部分的に基づいており[4]、当時有名なジェニー紡績機より強くてより堅い糸を生産可能にし、工場制度の導入に大きく貢献した[5]。水力紡績機の原型となった装置は、アークライトが共同経営者たちとノッティンガムに建設した工場において、馬を使って駆動されていた。1770年にアークライトたちは、水力を利用した工場をダービーシャークロムフォード英語版に建設した。

また、これとは別の水力紡績機が、1760年に、いち早く産業革命が始まっていたプロイセンエルバーフェルト(後のドイツヴッパータール)で、漂白工場を営んでいたヨハン・ハインリッヒ・ボックミュールによって開発されていた[6][7]

クロムフォード

1771年、アークライトは、ダービーシャー州クロムフォードのダーウェント川英語版に面して建設した綿糸紡績工場クロムフォード工場英語版に、水力紡績機を設置し、これによって、単に労働者たちをひとつの場所に集めるのではなく、機械を設置することを目的に建設された世界でも最も古い部類の工場のひとつを作った。この工場はまた、一日の就業を、太陽の日照によってではなく、時計によって管理した最初期の事例のひとつであり、従業員たちは単なる契約ではなく、雇用契約を結んでいた。この工場は最終的には、梳綿機を組み合わせ、原料から最終製品まで様々な工程を経る連続生産英語版を適用した最初の工場であった[8]

アークライトは、水力、水力紡績機、および継続的生産を現代の雇用慣行と組み合わせたため、工場システムの開発と産業革命の発展において重要な役割を果たした[9]

機構

水力紡績機は、3対のローラーによって粗糸を引き伸ばす機構と、フライヤーの回転によって撚りをかけて、ボビンとフライヤーの回転差を利用して巻取る機構からできている。 粗糸の引き伸ばしは、粗糸を巻いたボビンとローラーとの間ではなく3対のローラー間で行う。このため均等に粗糸が引き伸ばされ、この部分で糸切れを起こすことは少ない。サクソニー紡車の系譜を受け継ぐ撚りかけ・巻取り機構によって、連続的な紡糸が可能となった。 しかしフライヤーとボビンの間に働く強い張力が糸切れの原因になり、細い糸の紡糸は困難であった。 水車を用いることによって、必要とされる人間の労働量が減り、スピンドル数が劇的に増加した。

参考文献

  1. ^ John Simkin. “British History - The Textile System - The Water Frame”. Spartacus Educational Publishers Ltd., 1997. 2019年1月9日閲覧。
  2. ^ A History of the World - Arkwright's Water Frame spinning machine”. BBC. 2019年1月9日閲覧。
  3. ^ Sir Richard Arkwright”. 2019年3月19日閲覧。
  4. ^ McNeil, Ian (1990). An Encyclopedia of the History of Technology. London: Routledge. pp. 827–30. ISBN 0415147921 
  5. ^ Richard L. Hills, "Hargreaves, Arkwright and Crompton. Why Three Inventors?." Textile history 10.1 (1979): 114-126.
  6. ^ Industrial Heritage Expeditions - Textile in Wuppertal”. Bergische Struktur- und Wirtschaftsförderungsgesellschaft mbH. 2019年1月9日閲覧。
  7. ^ Hinrich Heyken. “Von Bleichern, Färbern und Fabrikanten”. City of Wuppertal. 2019年1月9日閲覧。
  8. ^ 最初の連続した工程 (continuous process) と考えられることがよくある高炉は、単一の工程である。水力紡績機は、あるいは水力紡績機を組み込んだ綿糸工場は、原料の綿花の梱から紡がれた綿糸までの一連の工程を連続させたものである。
  9. ^ Maxine Berg, The age of manufactures, 1700-1820: Industry, innovation and work in Britain (Routledge, 2005).

関連項目

外部リンク


水紡機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 15:54 UTC 版)

リチャード・アークライト」の記事における「水紡機」の解説

その後、生の木綿から綿糸作る工程である梳綿紡績機械化興味を持つうになる1768年時計職人だったジョン・ケイとともに当時織物中心地だったノッティンガム転居しジェニー紡績機改良して綿糸強度長さなどの品質を向上させた。1769年水力紡績機特許取得従来人間の指で行っていたことを木製または金属製シリンダーで行うようにし、糸に強い撚り与えられるようになった。これにより綿糸安価に生産可能となり、それを使って安価なキャラコ織れるようになり、その後綿織物産業発展基盤築いた

※この「水紡機」の解説は、「リチャード・アークライト」の解説の一部です。
「水紡機」を含む「リチャード・アークライト」の記事については、「リチャード・アークライト」の概要を参照ください。

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