水硬性石灰とは? わかりやすく解説

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水硬性石灰

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/17 09:24 UTC 版)

スミートンズタワー英語版ジョン・スミートン18世紀の水硬性石灰開発の先駆者とされ、これがポルトランドセメント、ひいては現代コンクリートの発展につながった。ジョン・リン英語版作の絵画。

水硬性石灰(すいこうせいせっかい、英:Hydraulic lime)とは、に触れると水和反応によって硬化するケイ酸カルシウムおよびアルミン酸カルシウムを主成分とする、酸化カルシウム生石灰)とは異なる種類の石灰の総称である。これに対し、水酸化カルシウム消石灰)は石灰モルタル英語版の結合材として用いられ、炭酸化英語版空気中の二酸化炭素の再吸収)によって硬化する(空気硬化)。水硬性石灰は空気硬化石灰に比して初期硬化が速く、圧縮強度が高く、水中を含むより過酷な条件下でも硬化する。

石灰窯において、石灰中のカルシウム粘土鉱物と反応してケイ酸塩を生成し、その結果、一部の石灰は水和反応により硬化できるようになる。反応しなかったカルシウムは消化されて水酸化カルシウムとなり、炭酸化によって硬化する。これらはしばしば半水硬性石灰と呼ばれ、弱水硬性および中庸水硬性の区分(後述のNHL2および NHL3.5)を含む。

製造法

製造方法は大きく分類して、二種類存在する。 一つは、古代ローマで行われていた技法で、消石灰を製造後に火山灰などのポゾラン質(ポッツォラーナ)を添加し、水和物を生成する方法である。この技法は「人工水硬性石灰」あるいは単に「水硬性石灰」と呼ばれている。

一方で、主に産業革命時に考案された技法として、原料の石灰岩に粘土質が含まれることでポゾラン質を発揮する「天然水硬性石灰」がある。これは、粘土質の石灰岩(炭酸カルシウム、Ca(OH)2)を焼成し、消火することにより得られる。製造方法は通常の消石灰に類似しているものの、炭酸カルシウムを主原料とする消石灰とは異なり、原料の鉱石に粘土分が含まれることが水で固まる水硬性の特質を発揮する。

水硬性石灰の規格

水硬性石灰の定義は欧州規格に明記されており、「水硬性石灰=HL」および「天然水硬性石灰=NHL」が区別されている(HLは"Hydraulic Lime"、NHLは"Natural Hydraulic Lime")。 欧州規格では、水硬性石灰の強度による区分があり、水硬性石灰の場合はHL2, HL3.5, HL5、天然水硬性石灰の場合はNHL2, NHL3.5, NHL5と、保有すべき最低圧縮強度(単位:MPa)の数値を規格名の後ろに記述する規定となっている。

用途および性質

水硬性石灰は水で硬化する性質を保有しており、などの骨材と混合してモルタルとして利用できる。古代ローマにおいては、建物の土台から組積内部に渡って現在のコンクリートのように充填して使われており、炭酸化作用により石灰化していることで現在も建設時のまま建物が保存されている。水硬性石灰を利用したコンクリートとしてパンテオンローマ)のドームが知られている。現在、水硬性石灰は、主に天然水硬性石灰NHLとして欧州において左官材として使用されており、特に歴史的建造物など伝統建築の補修材として推奨されている。

外部リンク

日本NHL委員会
クスノキ石灰ーNHLについて
シリカライムー水硬性石灰




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