最適化問題の解として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 14:11 UTC 版)
随伴関手は各種の問題に決まりきった方法を使ってもっとも効率的な解を与える方法といえる。たとえば、環論の初等的な問題として、非単位的環を環に変える問題がある。もっとも効率的に行うには、'1'を追加し、環の公理で要求されている元(環の各元rに対するr+1等)を全て(そして最小限を)追加し、公理が要求する以上の関係は持たない新しい環を構成すればよい。さらに、この構成方法は本質的にはどの非単位的環についても同じやりかたになる。 曖昧にして示唆的であるが、圏論の言語によって次のように簡潔に表現できる。 「構成がもっとも効率的であるとは普遍的であること、決まりきったとは関手を定めることとする。」 ここで、普遍的であるということには「始」普遍的と「終」普遍的の2つの種類があり、これらは双対であるので、片方のみについて考えるだけで十分である。 「始」の場合の普遍性とは、問題を記述できる圏Eを準備して、構成したいものがEの始対象になるようにすることである。この方法の利点は、上限を求めることと同様に、最適化(ここでは、もっとも効率的な解を見つけること)が正確な結果を与え、認識しやすいことにある。正しいEを選ぶには少しこつがいる。たとえば、単位的でない環Rがあった場合に、圏Eの対象は非単位的環の準同型 R → S であって、Sが乗法的単位元をもつものであるする。対象 R → S1 と 対象R → S2 の間の射は三角可換図式(R → S1,R → S2, S1 → S2)のうち、S1 → S2 が単位元を保存する環の準同型になっているとする。対象 R → S1 と 対象R → S2 の間に射が存在するということは、S1 は少なくとも S2 よりもより効率的な解であることを示している。すなわち、S2 は S1 よりも多くの元を持っていたり、公理にない関係を満たすことが可能である。よって、R → R* が E の始対象であるということは、始対象からはE の他のどの対象へも射が存在するということから、R* はもっとも効率的な解であることがいえる。 非単位的環を環に変えるこの方法がもっとも効率的で決まりきった方法であるということを、この方法が随伴関手を定めていると一言で表現することができる。
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