持続的漁獲量と一次生産量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 00:17 UTC 版)
沿岸海域の生態系の中から、長期間に渡り持続的に得ることができる漁獲量(持続的漁獲量)を決める要因としては、ボトムアップ過程とトップダウン過程が考えられている。ボトムアップ過程は、海域に供給される栄養塩量が多いと一次生産量(基礎生産量:植物プランクトン量)が大きく、それが高次の栄養段階に転送され、面積あたりの持続的漁獲量も大きいという過程である。一方、トップダウン過程は、高次の捕食者側を中心として、捕食や漁獲の影響によって持続的漁獲量が決まるという過程である。 海洋生態系の両過程について、欧米で先進的に研究がなされてきたが、Ware & Thomson(2005)は、北米西海岸のカリフォルニアからアラスカに至る11漁業ブロックにおいて、一次生産量と長期平均した漁獲量の関係を調べ、植物プランクトン・動物プランクトン・魚類の詳しい時系列データを用いて栄養段階間の関係を調べた。彼らは、過去の両過程の議論を踏まえた上で、沿岸海域の定在性魚類の生産量は、広い海域から1万km2程度の小海域まで、ボトムアップ過程によると結論づけている。つまり、海域表層に供給される栄養塩量、一次生産量(基礎生産量:植物プランクトン量)によって持続的漁獲可能量が決まることが、現代の調査技術によって確認されている。
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