技法と構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 16:00 UTC 版)
構図は事前に慎重に練られた。彼は黄金比、正多角形、円に基づいた構成によって、鑑賞者の注目を集める技術を熟知していた。 円に関しては、習慣的に中心円と画面の上半分に書かれたもう一つの円を使っていた。2つの円は互いに真価を発揮している。第一の円が全体を、第2の円が部分を演出する。左の2枚の絵により、画面の幅と長さの変化が2つの円に影響を与えている事が示されている。 左の1枚目の絵では大きな中心円が顔、両腕、両手を形作る一方で、小さい円が顔と帽子を縁取る。2枚目のシャルル7世の肖像では、小さい円が顔、帽子、襟を形作り、大きな円は両手、両腕、カーテンの位置を決定している。 下左、3枚目のピエタは多くの絵を縦長で描いていたため、不慣れであった横長の絵である。2つの円によって構図が組み立てられているが、どこか奇妙に感じられる。これは水平に配置された2つの円より垂直に配置された円の方が鑑賞者が目で追いやすいためだと考えられる。或いは熟達した鑑賞者は絵の左側より先に右に目がいくものだという事を無視したためだとも考えられる。4枚目では、画家は2つの垂直円の使用をやめて、画面上部に接触するたった1つの円で構成している。 黄金比に関しては古代から知られていたが、ルネサンス時代には完全な比率と考えられ、非常に多く使われた。 黄金比の正確な値は、 Φ = 1 + 5 2 ≈ 1 , 618 {\displaystyle \Phi ={\frac {1+{\sqrt {5}}}{2}}\approx 1,618\,} である。 ピュタゴラス教団は、彼らが完全な形と考えた正方形と円を用いた幾何学的な方法でこれを導き出した。 図のAS (a) はAB (a+b) の黄金比である。SB (b) もまたAS (a) の黄金比である。 フーケは画面の全幅を全高に対する黄金比で割り出していた。2枚目のシャルル7世の絵では王の顔を決定付ける左右対称の垂直の2本の平行線をたどる2つの黄金比が使われている。4枚目の絵では、黄金比による垂直線の1本が馬上の人物の位置を決めており、水平の線は路上に立つ人物の上限を決めるために使われている。
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