影の生物圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/23 10:03 UTC 版)
人類が理解できているタイプの生命とは異なる仕組みで成り立っている仮想的な生命群をさして、影の生物圏(shadow biosphere)と呼ぶ場合がある。仕組みが根本的に異なるため、人類からは生命として認識されていない可能性があるという意味で「影」と呼ばれる。影の生物圏の候補としては、例えばDNAの代わりにRNAを遺伝物質として用いる生物(特に微生物)が考えられる。我々が知る通常の生物の検出にはリボソームと呼ばれる生物固有の物質の有無を調べる。しかし、DNAを用いない生物は我々が知るようなリボソームに基づく通常の生化学系を持たないと予想されるため、通常の方法では検出できていない可能性がある。RNAを用いる仮説上の生物は、RNAワールド仮説に基づいた生命の進化を想定するならば、DNA出現以前の太古の生命(または生命の前段階)の子孫と考えることもできる。この他にも、通常の生命がもつ生化学とは異なる「代わりの生化学」について、複数の仮説が提案されている。ただし2021年現在のところ、影の生物圏の存在を示唆する証拠はない。 影の生物圏が地球上に実際に存在するかどうかは別として、通常の生命とは異なる生命の理論的検証や人工的合成の試みは、合成生物学(synthetic biologyまたはxenobiology)の主要テーマの一つでもある。
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