対角関手と極限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 14:11 UTC 版)
積、引き戻し、等化子、核はどれも圏論的な極限の例である。全ての極限関手は対応する対角関手(考えている極限の種類から決まる)の右随伴である。随伴の余単位は極限対象からの(つまり、関手圏における、考えている極限に対応する対角関手からの)定義射を与える。以下に個々の例を示す。 積 関手Π : Grp2 → Grpを各対(X1, X2)に直積群X1×X2を対応させるものとし、関手Δ : Grp2 ← Grp を各群Xに積圏Grp2の対象(X, X)を対応させる対対角関手とする。直積群の普遍性からΠはΔの右随伴であることが分かる。この随伴のcounitは極限を定めるX1×X2からX1 と X2への2つの射影の対である射である。unitは群XからX1×X2の中への対角包含射(xを(x, x)に写す)である。 集合のデカルト積や環の直積や位相空間の直積なども同じである。さらに2つ以上の場合も素直な方法で拡張できる。もっと一般には、どの種類の極限も対角関手の右随伴である。 核 アーベル群の準同型の圏Dを考える。Dの2つの対象f1 : A1 → B1 とf2 : A2 → B2に対して、f1 から f2 への射は、対(gA, gB)であって、gBf1 = f2gAを満たすもののことをいう。関手G : D → Abを各準同型をその核に対応させるものとし、関手F : D ← Abを各群Aを群準同型A → 0に対応させるものとする。GはFの右随伴であり、これは核の普遍性を示している。この随伴の余単位射は準同型の核をその始域に埋め込む射であり、単位射は群Aを準同型A → 0の核と同一視する射である。 この例の適切な変種として、線形空間や加群の核関手も右随伴である。同様に、アーベル群や線形空間や加群の余核関手が左随伴であることも分かる。
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