大域的対称性の固定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 21:26 UTC 版)
「パリティ (物理学)」の記事における「大域的対称性の固定」の解説
「(−1)F」も参照 標準模型では弱い相互作用によってパリティ対称性は破れているが、その影響を無視できる状況下ではパリティが保存されるとみなすことができる。パリティ演算子Pに対し、パリティが保存される理論では、ハミルトニアンHが、 P H P − 1 = H {\displaystyle PHP^{-1}=H} を満たす。また、標準模型においては、バリオン数 B、レプトン数 L および 電荷 Q は保存されるが、これを用いて、新しいパリティ演算子 P ′ = P e x p ( i α B + i β L + i γ Q ) {\displaystyle P'=P~{\rm {exp}}(i\alpha B+i\beta L+i\gamma Q)} を定義すると、 P ′ H P ′ − 1 = H {\displaystyle P'HP'^{-1}=H} が成立する。すなわち保存量であるパリティの定義は一意に決めることができない。この自由度を用いることにより、B、L および Qのチャージを持ち方が線形独立な3つの粒子に対して、固有パリティが+1となるようなパリティを定義することが可能となる。陽子、中性子および電子に+1のパリティを割り当てるものが、よく用いられるパリティの定義である。 一般には、全ての粒子に対して固有パリティを+1か-1に取ることはできない。以下、スティーヴン・ワインバーグの議論に従う。 P {\displaystyle P} が保存量である場合 P 2 {\displaystyle P^{2}} も保存量となる。もし、 P 2 = e x p ( i α B + i β L + i γ Q ) {\displaystyle P^{2}={\rm {exp}}(i\alpha B+i\beta L+i\gamma Q)} と書くことができた場合には、 P ′ = P e x p ( − i α B / 2 − i β L / 2 − i γ Q / 2 ) {\displaystyle P'=P~{\rm {exp}}(-i\alpha B/2-i\beta L/2-i\gamma Q/2)} に対して、 P ′ 2 = 1 {\displaystyle P'^{2}=1} が成立するため、全ての粒子の固有パリティは+1か-1に取ることが可能である。ただし、 P 2 {\displaystyle P^{2}} が離散的な対称変換の元になっていた場合はこのような再定義ができるかどうかはただちに結論付けることはできない。具体的には P 2 {\displaystyle P^{2}} が次のように書かれる可能性がある。 P 2 = ( − 1 ) F {\displaystyle P^{2}=(-1)^{F}} ここで、Fはフェルミオン 数演算子である。このような場合に、レプトン数などの保存量を持たないフェルミオンが存在すると P 2 = − 1 {\displaystyle P^{2}=-1} から、そのような粒子のパリティは+iか-iである、ということが導かれる。ただし、今までに知られている粒子については全てフェルミオン数Fはレプトン数とバリオン数の和F=B+Lであることが知られているため、上記のような場合にも、 P ′ = P e x p ( i π B / 2 + i π L / 2 ) {\displaystyle P'=P~{\rm {exp}}(i\pi B/2+i\pi L/2)} と定義しなおすことで全ての粒子の固有パリティは+1か-1に取ることが可能である。
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