吸着と侵入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 10:24 UTC 版)
他のファージと同様に、T偶数ファージはランダムに宿主の菌体表面に吸着するわけではない。ファージは菌体の表面にある、特定の構造を持つタンパク質である、受容体に選択的に結合する。受容体の種類はファージの種ごとに異なり、タイコ酸、細胞壁を構成するタンパク質やリポ多糖、鞭毛、線毛など多岐にわたる構造が受容体としてファージとの結合に寄与しうる。ファージが細菌に感染してその生活環を完成させるためには、感染の最初の過程である菌体表面への吸着を果たす必要がある。吸着はファージ毎に特異的な宿主細菌に対してのみ生じるものであり、2つの段階を経て行われる。第1の過程は可逆的な結合であり、ファージのLTFが宿主細菌の持つ受容体に結合する。第2の過程である不可逆的過程においては、ファージの基盤がファージと細菌の結合を担う。 不可逆的な吸着を果たしたT4ファージは尾部の外側を覆う鞘を収縮させ、その内部に存在する管状構造を細菌の細胞壁と細胞膜に向けて注入する。細胞壁にはペプチドグリカンの層が存在するが、先端のgp5がこれを分解する。近年の研究により、注入された内筒は菌体の内膜を貫通せず、内膜と融合することが明らかにされた。このようにしてできた通路をファージのゲノムDNAが通過し、菌体内へと侵入する。
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