収集家の部屋を訪ねるアルブレヒト大公とイサベル大公夫人とは? わかりやすく解説

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収集家の部屋を訪ねるアルブレヒト大公とイサベル大公夫人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/14 00:24 UTC 版)

『収集家の部屋を訪ねるアルブレヒト大公とイサベル大公夫人』
オランダ語: Aartshertogen Albert en Isabella bezoeken de collectie van Pierre Roose
英語: The Archdukes Albert and Isabella Visiting a Collector's Cabinet
作者 ヤン・ブリューゲル (父)とヒエロニムス・フランケン2世
製作年 1621-1623年ごろ
種類 キャンバス上に油彩
寸法 94 cm × 123.3 cm (37 in × 48.5 in)
所蔵 ウォルターズ美術館ボルチモア

収集家の部屋を訪ねるアルブレヒト大公とイサベル大公夫人』(しゅうしゅうかのへやをたずねるアルブレヒトたいこうとイサベルたいこうふじん、: Aartshertogen Albert en Isabella bezoeken de collectie van Pierre Roose: The Archdukes Albert and Isabella Visiting a Collector's Cabinet)は、17世紀フランドルバロック期の画家ヤン・ブリューゲル (父) とヒエロニムス・フランケン2世が1621-1623年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。現在、メリーランド州ボルチモアにあるウォルターズ美術館に所蔵されている。なお、マドリードプラド美術館には、アドリアーン・ファン・スタルベムトに帰属される本作と類似した作品が所蔵されている[1][2]

作品

大公アルブレヒト・フォン・エスターライヒイサベル・クララ・エウヘニアは17世紀初めにスペインネーデルラントを共同で統治したが、芸術の庇護者でもあった。1621年にアルブレヒトが死去するまで、フランドル地域は平和と繁栄を享受していた。本作のような絵画は、収集家の展示室を表す画廊画 (constkamer) として知られ、当時のフランドルで人気があった。本作はヤン・ブリューゲルとヒエロニムス・フランケン2世の共同制作になるものであるが、かつてはヒエロニムスの兄弟のフランス・フランケン2世アドリアーン・ファン・スタルベムトに帰属されていた。

ヤン・ブリューゲル (父)『花瓶』 (1606-1607年)、美術史美術館ウィーン

絵画は、多くの人々がおり、様々な美術品などが展示されている大きな部屋を描いている。特定化されていないフランドルの美術収集家が、座っているイサベルと彼女の後に立っている夫アルブレヒトに付き添っている。画面はおそらく、実際の場面を忠実に写し取ったものではない。壁にはフランドルの画家たちの作品が掛けられ、ジャンボローニャの『建築の寓意』を含む数多くの彫刻も見える[3]

画面には、自然界の驚異である事物 (動物、植物、鉱物) が人間の創造物 (絵画、彫刻) 、五感を表す事物とともに表されている。この初期「百科全書的」時代に、この種の絵画は当時の好奇心を表す文化を反映している。芸術作品、科学の道具、自然の産物、人間の産物は等しく研究と称賛の対象であり、本作に描かれているような収集室には、絵画を称賛するように科学の道具に興味を持っていた人物が登場する[4]

中央の椅子に立てかけられている絵画は「偶像破壊寓意」で、ロバ、猫、愚か者、サル (無知と邪悪の象徴) が楽器、絵画、科学の道具を破壊している様が描かれている。マントルピースの上にある絵画は、「賢明と名声によって無知から救出される絵画の寓意」である。左側にいる犬は2つの頭部を持っているように見えるが、それは下絵が表面に透けて見えるようになったためである[1]。テーブルの上の地球儀は、コルネリウス・ドレベルが永遠に作動する時計を作成しようとした試みの1つの例となっている。左端の大きな花瓶はヤン・ブリューゲルの手になる。花々の上には大きなヒマワリがあるが、それはアメリカ大陸種で4メートル以上になる。少し前にヨーロッパにもたらされたばかりのもので、植物図鑑には載せられていたが、絵画に表されるのは本作が初めてである。ヒマワリは太陽ではなく、アルブレヒトとイサベルの大公夫妻の方を向いている。

「偶像破壊の寓意」や「賢明と名声によって無知から救出される絵画の寓意」など画中の美術作品は、16世紀にネーデルラントで巻き起こったベールデンストルム英語版の偶像破壊運動を示唆している。その偶像破壊運動に言及する「偶像破壊の寓意」は、本作全体の意味を提供している。芸術は保護され (ドアの開口部にいる兵士たちによって示される)、大公夫妻の統治下で繁栄するということである[1][5]。彼らの方を向いているヒマワリは、大公夫妻の庇護という光と暖かさにより生育し、花開く[3]

他のヴァージョン

本作の諸題名

  • 古物商の店の訪問
  • 収集家の部屋を訪ねるアルブレヒト大公とイサベル大公妃
  • 収集家の部屋にいるアルブレヒト大公とイサベル大公妃
  • 古物商の店を訪問するアルブレヒト大公とイサベル大公妃[6]

展覧会

2012年に、本作はメリーランド州ボルチモアの通りにおける展覧会「Off the Wall」で脚光を浴びた。また、作品の複製がアンティーク通りで展示されることとなるであろう[7]ロンドン・ナショナル・ギャラリーは2007年に収蔵品を外に展示することを始め、米国ではデトロイト美術館も同じことを始めた。「Off the Wall」の展覧会用の絵画は天候に影響を受けないビニール上の複製であり、スマートフォン用のQRコードで絵画の説明が示される[8]

脚注

  1. ^ a b c Zafran, Eric M. (1988). Fifty old master paintings from the Walters Art Gallery. Baltimore, Md.: Trustees of the Walters Art Gallery. pp. 104. ISBN 0-911886-34-6. https://archive.org/details/fiftyoldmasterpa0000walt/page/104 
  2. ^ Hieronymus Francken (II), A Collector's Cabinet at Sotheby’s. The Sotheby's expert believes on the basis of Ursula Härting's analysis that the painting in the Prado should also be attributed to Hieronymus Francken II
  3. ^ a b The Walters Art Museum - The Archdukes Albert and Isabella Visiting a Collector's Cabinet
  4. ^ Alexander Marr (2010), 'The Flemish 'Pictures of Collections' Genre: An Overview', Intellectual History Review, 20: 1, p. 7
  5. ^ James Simpson, Under the Hammer: Iconoclasm in the Anglo-American Tradition, Oxford University Press, 2010
  6. ^ The Frick Art Reference Library - The Archdukes Albert and Isabella Visiting a Collector's Cabinet
  7. ^ Walters Art Museum - Off the Wall Archived 2012-11-19 at the Wayback Machine.
  8. ^ Smith, T., Walters Art Museum goes of the wall, The Baltimore Sun, September 11, 2012

外部リンク




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