出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 08:28 UTC 版)
「スペクトル分解 (関数解析学)」の記事における「双対作用素のスペクトル」の解説
X* を X の双対空間とし、T* : X* → X* を T の共役作用素とするとき、σ(T) = σ(T*) が成立する。 定理 有界作用素 T に対して、σr(T) ⊂ σp(T*) ⊂ σr(T) ∪ σp(T) が成立する。 証明 記号 <·, φ> で、X*内のある元を表すことにする。すなわち、x → はある有界線型汎函数 φ の作用を表すものとする。λ ∈ σr(T) とする。このとき、Ran(T - λ) は X において稠密とならない。するとハーン-バナッハの定理より、Ran(T - λ) 上で消失するようなある非ゼロの φ ∈ X* が存在する。すべての x ∈ X に対して、 ⟨ ( T − λ ) x , φ ⟩ = ⟨ x , ( T ∗ − λ ) φ ⟩ = 0 {\displaystyle \langle (T-\lambda )x,\varphi \rangle =\langle x,(T^{*}-{\lambda })\varphi \rangle =0} が成立する。したがって (T* - λ)φ = 0 ∈ X* であり、λ は T* の固有値となる。このことから、定理の前半の包含関係が示される。続いて (T* - λ)φ = 0, φ ≠ 0 を仮定する。すなわち、 ∀ x ∈ X , ⟨ x , ( T ∗ − λ ) φ ⟩ = ⟨ ( T − λ ) x , φ ⟩ = 0 {\displaystyle \forall x\in X,\;\langle x,(T^{*}-\lambda )\varphi \rangle =\langle (T-\lambda )x,\varphi \rangle =0} を仮定する。Ran(T − λ) が稠密であるなら、φ はゼロ汎函数でなければならず、これは矛盾である。以上より、主張は示される。 特に、X が回帰的バナッハ空間であるときは、σr(T*) ⊂ σp(T**) = σp(T) が成立する。
※この「双対作用素のスペクトル」の解説は、「スペクトル分解 (関数解析学)」の解説の一部です。
「双対作用素のスペクトル」を含む「スペクトル分解 (関数解析学)」の記事については、「スペクトル分解 (関数解析学)」の概要を参照ください。