内積の幾何学性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 02:57 UTC 版)
一つのベクトル空間に定義される内積は 一つとは限らない。また、ある内積 ⟨,⟩ に対して ‖ x ‖ := ⟨ x , x ⟩ {\displaystyle \lVert x\rVert :={\sqrt {\langle x,x\rangle }}} と定めると、1 つのノルム ‖ • ‖ が定義できる。これを内積が誘導するノルムまたは内積が定めるノルムと呼ぶ。ノルムは与えられた内積ではかった "ベクトルの大きさ" であり、 cos θ = ⟨ a , b ⟩ ‖ a ‖ ‖ b ‖ {\displaystyle \cos \theta ={\frac {\langle a,b\rangle }{\lVert a\rVert \lVert b\rVert }}} とおくことで、二つのベクトルのなす角が定められる。この意味で内積はベクトル空間に計量 (metric) を定めるという。 このように定義されたノルムは必ず中線定理 ‖ x + y ‖ 2 + ‖ x − y ‖ 2 = 2 ( ‖ x ‖ 2 + ‖ y ‖ 2 ) {\displaystyle \lVert x+y\rVert ^{2}+\lVert x-y\rVert ^{2}=2(\lVert x\rVert ^{2}+\lVert y\rVert ^{2})} を満たすという意味でこの等式は幾何学的な性質を示すものと捉えられる。逆に与えられたノルムが内積から誘導されるものであるならば、(実数体 ℝ 上の内積空間のとき) ⟨ x , y ⟩ := 1 4 ( ‖ x + y ‖ 2 − ‖ x − y ‖ 2 ) ( ∀ x , y ) {\displaystyle \langle x,y\rangle :={\frac {1}{4}}(\lVert x+y\rVert ^{2}-\lVert x-y\rVert ^{2})\qquad (\forall x,y)} または(複素数体 ℂ 上の内積空間のとき) ⟨ x , y ⟩ := 1 4 ( ( ‖ x + y ‖ 2 − ‖ x − y ‖ 2 ) + i ( ‖ x + i y ‖ 2 − ‖ x − i y ‖ 2 ) ) ( i = − 1 , ∀ x , y ) {\displaystyle \langle x,y\rangle :={\frac {1}{4}}((\lVert x+y\rVert ^{2}-\lVert x-y\rVert ^{2})+i(\lVert x+iy\rVert ^{2}-\lVert x-iy\rVert ^{2}))\qquad (i={\sqrt {-1}},\,\forall x,y)} で定められる函数 ⟨,⟩ は内積の性質を満たし、所期の通り与えられたノルムはこの内積から誘導される。この関係式を分極公式、または偏極公式(英語版)という。 このように、内積はベクトル空間の代数的な性質と幾何的な性質の橋渡しをするものである。詳細については計量ベクトル空間の項を参照されたい。
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