例外としての債権者主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 23:58 UTC 版)
2017年の改正前民法は、次のような場合には、例外として債権者主義(債権者が履行不能の危険を負担する)をとっていた。 特定物についての物権の設定移転の場合 - 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する(旧534条1項)。 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷した場合(旧535条2項) 債務や物の消滅について債権者に帰責性がある場合(旧536条2項) 上記2の例でいえば、買主Bが引渡し前に下見をした際に失火して、Aの別荘が消滅すれば、別荘引渡債務の債権者であるBの代金支払債務は存続する。このため、引渡債務の債権者Bは債務者Aから別荘の引渡しを受けられないにもかかわらず代金の3000万円は支払わなければならないという結論になる。この場合、消滅した債務の債権者(別荘の買主B)が、目的物が消滅したことによるリスクを負担したということになる。 しかし、旧534条は買主が何も引渡しを受けていないのに売主は代金を請求できるとしており極めて不当と批判されていた。また、旧535条1項の物の瑕疵と物の滅失の区別はローマ法に由来するものであるが、ほとんど支持されていなかった。旧535条2項の停止条件付双務契約で危険負担が問題になることはほとんどなく、それが判例で問題になった例もなかった。 2017年の改正民法で極めて不当と批判を受けていた旧534条と旧534条の特則になっていた旧535条は廃止され、536条も反対給付が消滅するのではなく債権者に反対給付の履行拒絶権を認める規定に変更された(2020年4月1日施行)。
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