他の古細菌への寄生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/30 06:25 UTC 版)
寄生対象は4種ともクレン古細菌である。増殖には宿主細胞が必須で、最も研究が進んでいるN. equitansは、I. hospitalisの細胞破砕液中や、I. hospitalisと半透膜で区切っての培養実験でも増殖しなかった。培養溶液中では、しばしば10個程度のN. equitansに寄生されたI. hospitalisが観察される。N. equitansの遊離細胞も観察されるが、これが感染性を持つかどうか詳細は不明である。 宿主への影響は、培養液中にN. equitansが存在すると、I. hospitalisの増殖条件や培養最終濃度に変化はないが、定常状態に達するまでの必要時間が増加する。個々の細胞単位で見ると、寄生されたI. hospitalisは増殖能力が明らかに低下し、寄生体の数が3個を超えると増殖できない。また、寄生されたI. hospitalisは、収奪されたエネルギーを補うためか代謝系が単純化する。最終的に、寄生されたI. hospitalisは死滅するように見える。 一方で、I. hospitalis-N. equitans共培養系と異なり、Acidilobus sp.-Nanopusillus acidilobi共培養系では、'Acidilobus sp.単独の場合と増加曲線が変わらないという報告もある。 I. hospitalisは直径2.5μmとかなり大型で、堅い細胞壁の代わりに外細胞膜と複雑な内膜系を持つ特殊な古細菌であるが、ナノ古細菌とは別系統であるが同じDPANN系統に属すCa. Micrarchaeum acidiphilumやCa. Parvarchaeum acidiphilumも、やはり同様に細胞壁を欠くユーリ古細菌Ferroplasma acidarmanusに寄生する。このことから関連性が疑われたが、その後発見されたN. stetteriやN. acidilobiの宿主であるAcd1やAcidilobus sp.は、S層からなる細胞壁を持つ典型的なスルフォロブス目古細菌であった。 なお、N. equitansは、I. hospitalisの表面に付着しているだけで、宿主細胞内部に入り込んでいる様子はない。接触面ではN. equitansのS層が崩れ、I. hospitalisの外細胞膜は破壊される。
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