並びの巻としての貌鳥
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/06 14:56 UTC 版)
寺本直彦は、「貌鳥」を「宿木」の異名とする文献と「宿木」の並びの巻とする文献がともに存在することに注目し、「桐壺」に対する「壺前裁」や若菜において上巻が「箱鳥」の異名で、下巻が「諸鬘」の異名で呼ばれるのに対し、上下巻を合わせたときも「箱鳥」の異名で呼ばれることがあるなどほかのいくつかの類似の事例を根拠として、「源氏物語における巻名の異名とは、かつて別々の巻であったものが一つの巻になったときの統合された方の巻の名前が残った痕跡である」として、かつて「貌鳥」は「宿木」に続く「宿木」の並びの巻であったが、この二巻は一つの巻になって「宿木」と呼ばれるようになり、「貌鳥」は「宿木」の異名として残ったと考えた。そしてもし並びの巻である「貌鳥」に浮舟が初めて登場する場面が含まれていたとすると、この部分を抜き取って「貌鳥」部分を取り除いた寺本が想定するかつての「宿木」巻を現行の次の巻「東屋」につなげても話が全く繋がらないため現在の宿木巻後半から夢浮橋末までに渡って描かれている、いわゆる「浮舟物語」に欠かせない部分であると考えられる。このような部分を並びの巻に含めることは、並びの巻を成立過程に関連づけて理解して後記挿入された巻であるとする武田宗俊の説でも、武田説を否定して並びの巻を構想論の観点から短編的な巻・副想的な巻・傍系的な巻・外伝的な巻などと理解する説でもいずれも説明できないと指摘している。
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