世界女子ラグビー選手権大会とは? わかりやすく解説

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ラグビーワールドカップ (女子)

(世界女子ラグビー選手権大会 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/27 07:30 UTC 版)

女子ラグビーワールドカップ
最新のシーズン・大会:
女子ラグビーワールドカップ2025
スポーツ ラグビーユニオン
主催 ワールドラグビー
創設 1991年
チーム数 16
最新優勝  ニュージーランド (2021年)
最多優勝  ニュージーランド(6回)
ウェブサイト https://www.rugbyworldcup.com/2025

女子ラグビーワールドカップは、1991年ウェールズ第1回大会が行われ、ワールドラグビーの主催により4年ごとに行われる女子ラグビーの世界一決定戦、世界選手権に当たる。

沿革

1988年以前の女子ラグビーの歴史は「女子ラグビー」を参照。

黎明期

1988年、第1回「女子ヨーロッパラグビーカップ」がフランスのブール=カン=ブレスで開催、フランス、イギリス、イタリア、オランダが参加した[1]国際アマチュアラグビー連盟(現在のラグビーヨーロッパ)からの公認は得られなかった。

1990年に、ニュージーランドで「1990 Women's World Festival」(1990年世界女子フェスティバル英語版、ラグビー・フェスト)が開催され、初めて結成されたニュージーランド代表のほか、オランダ代表、ソ連代表、アメリカ合衆国代表が出場しトーナメントを行った[2][3][4]。日本の女子チームである レディース全東京A・Bと名古屋レディースも招待された[5][6]

フランスやニュージーランドでの世界大会の成功により、イギリス女子ラグビー側でも世界大会の開催準備が進む。

第1回大会(1991年)

1991年春、第1回女子ラグビーワールドカップ(1991 Women's Rugby World Cup)が、イギリスのウェールズで開催された[7]

決勝戦でアメリカ合衆国がイギリスを破り、優勝。大会は商業的には失敗に終わったものの、世論と告知効果では成功を収めた[8]。大会の赤字は、非公式にイングランドラグビー協会によって補填された[9]

この大会は、女子日本代表として最初の国際試合となる[10][11]女子日本代表チームは、全額自己負担で、コーチやドクターが帯同せず、選手のみの渡航となった[12]

第2回大会(1994年)

国際ラグビーフットボール評議会(IRFB、現在のワールドラグビー)は、女子ラグビーワールドカップに対して否定的立場をとった[2]

一方、女子ラグビーフットボール協会(Rugby Football Union for Women、RFUW)は、新たに結成されたスコットランド女子ラグビー協会の支援を得て、1994年に第2回女子ラグビーワールドカップをスコットランドで開催した[2]

ニュージーランド、オランダ、イタリア、ドイツが不参加となり、スペインはグループ分けが行われた直後に棄権したため、スコットランド学生チームが代わりに出場した。参加予定だったソ連は崩壊したため、その代わりにロシアとカザフスタンが出場し、日本を含む11か国12チーム(スコットランドは学生チームを含む2チーム出場)で行われた[13][14]

日本はスウェーデンから1勝を挙げた[15][16]が、4月15日のアメリカ戦では0-121で大敗し、これが女子日本代表チームにとって「最大差敗戦試合」記録となる[16]

決勝戦でイングランドアメリカ合衆国を破って優勝。この大会は予選のイングランド対スコットランドの試合に4,000人の観客が、決勝戦には7,000人の観客が来場したことで、経済的成功も収めた[2]

第3回大会(1998年)

1998年、第3回女子ラグビーワールドカップは、国際ラグビー評議会(IRB、現在のワールドラグビー)公式の大会となった[17]

書類選考で出場国が決められる際に、日本は「国際試合の資料に乏しい」(「国際試合が少ない」という意味)と指摘され[18][19][20]、出場ができなくなった[18][19]ワールドラグビーは、当時のことを「出場資格の ”international matches” の解釈に誤解があった」(「4年間海外遠征が無かったことのみを判断材料にし、4年間に2回 海外チームが来日して対戦した実績を見落とした」という意味)と記している[21]。これを受け、以後日本は北米やサモア、ニュージーランドへと積極的に海外遠征をするようになる。

第4回大会(2002年)

2002年、第4回女子ラグビーワールドカップをスペインで開催。決勝でニュージーランドがイングランドを19対9で破り、2度目の優勝を果たした。女子日本代表は、日本ラグビーフットボール協会の日本代表チームとして「桜のエンブレム」がジャージに付く[22]

第5回大会(2006年)

女子ラグビーワールドカップ2006は、カナダエドモントンで開催され、北米で開催された初の主要国際ラグビーユニオン大会となった。ニュージーランドが3連覇を果たした[23]

第6回大会(2010年)

女子ラグビーワールドカップ2010の開催に関心を示し立候補した国は、過去最多の4か国(イングランド、ドイツ、カザフスタン、南アフリカ共和国)となり、イングランドで開催。決勝戦はロンドンのトゥイッケナム・ストゥープで行われた[24][25]

第7回大会(2014年)

女子ラグビーワールドカップ2014は、カザフスタン、アメリカ合衆国、ニュージーランド、サモアが立候補したが[26]、紆余曲折の末にフランスでの開催となった[27][28]

第8回大会(2017年)

女子ラグビーワールドカップ2017は、アイルランドラグビー協会のエリアで開催となり、試合は、アイルランド共和国ダブリンと、北アイルランドベルファストを会場にして行われた。

前年の2016年リオデジャネイロオリンピックおよび翌2018年に開催されるラグビーワールドカップセブンズとの相乗効果を高めるために、例年より1年前倒しでの開催となった。以降、この2017年を基準に4年周期開催となり、男子ワールドカップの中間年に実施することが決まった。

2019年8月21日、ワールドラグビーは、ラグビーワールドカップ女子大会(Women’s Rugby World Cup)について、性別に関する記述「Women's」を取り除くことを発表した[29][30]。これにより、ワールドカップは男子大会・女子大会のいずれも、「ラグビーワールドカップ」という名称となる。2021年ニュージーランドでの女子大会(実際は2022年に延期開催)は「ラグビーワールドカップ2021」(Rugby World Cup 2021)となり[31]、続いてフランスで開催の男子大会は「ラグビーワールドカップ2023」(Rugby World Cup 2023)となる。しかし、この試みは2023年男子大会までで打ち切られた[32]

第9回大会(2021年→2022年)

ラグビーワールドカップ2021は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、2022年に開催された[33][34]

第10回大会(2025年)

2023年の男子大会終了後、大会名において「Women's」「Men's」の名称を復活させた。これにより「Women's RWC 2025」「Men's RWC 2027」などの表記が公開された[32]

女子ラグビーワールドカップ2025では、6つの地域すべてから出場国を選出し、出場国は12から16に増やした。ロゴが一新され、それまでの「U」をデザイン化したものから[35][36]、ラグビーボール型の楕円内に「RWC」の文字を入れたものになった[37][38]。また、トロフィーも新しくなった[39]

第11回大会(2029年)

ワールドラグビーは、法人企業「ラグビーワールドカップリミテッド(RWCL)」を作り、ワールドカップの運営管理を行う[40][41]。オーストラリアで開催される2027年男子大会と2029年女子大会では、ワールドラグビーとオーストラリア協会との合弁企業を作り、運営される予定[42]

歴代開催国・優勝国

各大会の結果

回数
開催年
開催国 決勝戦 3位決定戦 参加数 備考
優勝 得点 準優勝 3位 得点 4位
第1回
(1991年)
ウェールズ
アメリカ合衆国
19-6
イングランド

フランス
同率3位
[注釈 1]

ニュージーランド
12
第2回
(1994年)
スコットランド
イングランド
38-23
アメリカ合衆国

フランス
27-0
ウェールズ
12
第3回
(1998年)
オランダ
ニュージーランド
44-12
アメリカ合衆国

イングランド
31-15
カナダ
16
第4回
(2002年)
スペイン
ニュージーランド
19-9
イングランド

フランス
41-7
カナダ
16
第5回
(2006年)
カナダ
ニュージーランド
25-17
イングランド

フランス
17-8
カナダ
12
第6回
(2010年)
イングランド
ニュージーランド
13-10
イングランド

オーストラリア
22-8
フランス
12
第7回
(2014年)
フランス
イングランド
21-9
カナダ

フランス
25-18
アイルランド
12
第8回
(2017年)
アイルランド
ニュージーランド
41-32
イングランド

フランス
31-23
アメリカ合衆国
12
第9回
(2021年)
ニュージーランド
ニュージーランド
34-31
イングランド

フランス
36-0
カナダ
12
第10回
(2025年)
イングランド 16
第11回
(2029年)
オーストラリア 16
第12回
(2033年)
アメリカ合衆国 16

トロフィー

第3回(1998年)から第9回(2021年)まで使われた2代目トロフィー

現在のトロフィーは3代目となる。

第1回大会(1991年)のトロフィーは、大会組織委員会のマネージャーであるスー・ドリントン英語版が、ロンドンの商業地区ハットン・ガーデン英語版のアンティークショップで1,000ポンド(当時のレートで25万7000円)強で購入した、1924年に製造された純銀製のものが使われた。第2回大会(1994年)でも使用された後、しばらくして行方不明となった[43]

第3回大会(1998年)から2代目トロフィーとなる。2021年、ヘレン・エイムズ(Helen Ames)の実家の屋根裏部屋で、1代目トロフィーが発見された[43]

第10回大会(2025年)から、6地域協会すべてからチームが参加することを記念して、3代目トロフィーとなる。純銀製で24金メッキが施されている[44]

脚注

注釈

  1. ^ 3位決定戦が行われ、フランスが勝利した。ただしこの試合は当初の計画にはない。この試合の結果は大会のいかなる公式記録にもなく、またニュージーランド協会の国際戦記録にもない。

出典

  1. ^ (フランス語) Coupe d'Europe de rugby féminin à Bourg en Bresse | INA, https://www.ina.fr/ina-eclaire-actu/video/caa88019487/coupe-d-europe-de-rugby-feminin-a-bourg-en-bresse 2025年7月28日閲覧。 
  2. ^ a b c d “Women's World Cup history” (英語). (2002年5月13日). http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/rugby_union/international/1960497.stm 2025年7月28日閲覧。 
  3. ^ Curtin, Jennifer (2016-11-21). “Before the ‘Black Ferns’: Tracing the Beginnings of Women’s Rugby in New Zealand”. The International Journal of the History of Sport 33 (17): 2071–2085. doi:10.1080/09523367.2017.1329201. ISSN 0952-3367. https://doi.org/10.1080/09523367.2017.1329201. 
  4. ^ 20 facts about the Women's Rugby World Cup” (英語). All Blacks. 2025年7月28日閲覧。
  5. ^ JRFU (2004年4月8日). “女子ラグビー15年の歴史 - 海外遠征と外国チーム招聘の記録”. www.rugby-japan.jp. 日本ラグビーフットボール協会|RUGBY:FOR ALL「ノーサイドの精神」を、日本へ、世界へ。. 2021年9月27日閲覧。
  6. ^ 年代史 女子ラグビー国際交流試合”. JRFU. 2023年1月21日閲覧。
  7. ^ WebCite query result”. www.webcitation.org. 2025年7月28日閲覧。
  8. ^ World Cup: review”. womensrugbyhistory.blogspot.com. 2025年7月28日閲覧。
  9. ^ “The history of the Women’s Rugby World Cup” (英語). RFU. https://www.englandrugby.com/news/features/the-history-the-women-rugby-world-cup/ 2025年7月28日閲覧。 
  10. ^ サクラ15・世界挑戦のこれまでとこれから”. RUGBY JAPAN365. 2023年1月16日閲覧。
  11. ^ 15人制女子日本代表 代表キャップ対象試合”. JRFU. 2023年1月16日閲覧。
  12. ^ worldrugby.org. “日本女子ラグビー、開拓の挑戦とワールドカップ Part 1 | ワールドラグビー”. www.world.rugby. 2023年1月24日閲覧。
  13. ^ Max (1994年4月24日). “Women’s Rugby World Cup 1994” (英語). Women's Rugby Data : For Women's Rugby Statistics. 2025年8月25日閲覧。
  14. ^ Rugby World Cup Women’s Stats Archive” (英語). Your Scrumhalf Connection - Women's Rugby News. 2025年8月25日閲覧。
  15. ^ 年代史 女子日本代表の活動”. JRFU. 2023年1月21日閲覧。
  16. ^ a b 年代史 女子ラグビー国際交流試合”. JRFU. 2023年1月21日閲覧。
  17. ^ World Cup: Home nations prepare”. womensrugbyhistory.blogspot.com. 2025年7月28日閲覧。
  18. ^ a b 日本ラグビーフットボール史 日本の女子ラグビーが正式加盟”. JRFU. 2023年1月21日閲覧。
  19. ^ a b 年代史 女子日本代表の活動”. JRFU. 2023年1月21日閲覧。
  20. ^ 年代史 女子ラグビー国際交流試合”. JRFU. 2023年1月21日閲覧。
  21. ^ worldrugby.org. “日本女子ラグビー、開拓の挑戦とワールドカップ Part 1 | ワールドラグビー”. www.world.rugby. 2023年1月24日閲覧。
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  23. ^ WOMEN'S RWC”. www.rwcwomens.com. 2025年8月25日閲覧。
  24. ^ Woods, Penny (2008年11月12日). “Women's rugby looking to sidestep the doubters” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/sport/blog/2008/nov/12/rugbyunion1 2025年8月25日閲覧。 
  25. ^ A History of the Women's Rugby World Cup” (英語). users.ox.ac.uk. 2025年8月25日閲覧。
  26. ^ IRB.com. “Womens RWC - Record interest for Women’s RWC 2014” (英語). www.rwcwomens.com. 2025年8月25日閲覧。
  27. ^ IRB.com. “Womens RWC - France awarded Women’s Rugby World Cup 2014” (英語). www.rwcwomens.com. 2025年8月25日閲覧。
  28. ^ IRB.com. “Womens RWC - Reaction from Women's RWC 2014 decision” (英語). www.rwcwomens.com. 2025年8月25日閲覧。
  29. ^ ラグビーマガジン編集部 (2019年8月22日). “女子ラグビーW杯の大会名から「女子」外す。ワールドラグビーが平等の問題に率先して主導へ。”. Rugby Republic 2019. Baseball Magazine Sha Co., Ltd. 2019年11月18日閲覧。
  30. ^ World Rugby announces gender neutral naming for Rugby World Cup tournaments』(プレスリリース)World Rugby、2019年8月21日https://www.world.rugby/news/4442502019年8月22日閲覧 
  31. ^ world.rugby. “ホーム | ラグビーワールドカップ 2021ニュージーランド” (英語). www.rugbyworldcup.com. 2023年2月6日閲覧。
  32. ^ a b worldrugby.org. “Women's Rugby World Cup 2025, England | ワールドラグビー”. www.world.rugby. 2025年2月26日閲覧。
  33. ^ 女子ラグビーワールドカップ2021 大会概要 | J SPORTS【公式】”. www.jsports.co.jp. 2023年2月6日閲覧。
  34. ^ world.rugby. “Rugby World Cup 2025 | World Rugby” (英語). www.rugbyworldcup.com. 2023年2月6日閲覧。
  35. ^ Auckland Rugby Union”. www.aucklandrugby.co.nz. 2024年8月8日閲覧。
  36. ^ News, Americas Rugby (2016年11月9日). “Pools drawn for Women’s Rugby World Cup 2017” (英語). Americas Rugby News. 2024年8月8日閲覧。
  37. ^ worldrugby.org. “New visual identity revealed as Rugby World Cup embraces exciting future and rugby’s unique energy | ワールドラグビー”. www.world.rugby. 2024年8月8日閲覧。
  38. ^ Rugby World Cup 2025” (英語). Rugby World Cup 2025 England (2024年6月29日). 2024年8月8日閲覧。
  39. ^ England awaits era-defining tournament as new Women’s Rugby World Cup trophy unveiled and further tickets released” (英語). Rugby World Cup 2025 England (2025年5月14日). 2025年5月16日閲覧。
  40. ^ world.rugby. “ラグビーワールドカップ2019試合会場視察を実施中 | ラグビーワールドカップ”. www.rugbyworldcup.com. 2024年2月5日閲覧。
  41. ^ ASCII. “迫るラグビーワールドカップ2019 日本に何を残すのか”. 週刊アスキー. 2023年2月6日閲覧。
  42. ^ world.rugby. “サー・ロッド・エディントン、ラグビーワールドカップ2027大会と2029大会の独立理事長に就任 | ラグビーワールドカップ”. www.rugbyworldcup.com. 2024年2月5日閲覧。
  43. ^ a b worldrugby.org. “The story of the inaugural women’s Rugby World Cup trophy | ワールドラグビー”. www.world.rugby. 2025年8月27日閲覧。
  44. ^ worldrugby.org. “新たなトロフィーのお披露目、追加チケットのリリース、イングランドは時代を画す女子ラグビーワールドカップ大会の開催準備を整える | ワールドラグビー”. www.world.rugby. 2025年8月27日閲覧。

関連項目

外部リンク

  • Rugby World Cup(英語)(フランス語)(スペイン語)(日本語)



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