ワームホール計量(metric)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 00:19 UTC 版)
「ワームホール」の記事における「ワームホール計量(metric)」の解説
通過可能なワームホールの一例を示す。 d s 2 = − e 2 Φ ( r ) c 2 d t 2 + d r 2 1 − b ( r ) / r + r 2 ( d θ 2 + sin 2 θ d ϕ 2 ) . {\displaystyle ds^{2}=-e^{2\Phi (r)}c^{2}dt^{2}+{\frac {dr^{2}}{1-b(r)/r}}+r^{2}(d\theta ^{2}+\sin ^{2}\theta d\phi ^{2}).\,} この式において Φ ( r ) {\displaystyle \Phi (r)} は重力赤方偏移の尺度を、 b ( r ) {\displaystyle b(r)} はワームホールの3次元形状を定義する。 この式を単純化するために特殊な場合として重力赤方偏移のない球状のワームホールを仮定し、 Φ ( r ) = 0 , b ( r ) = k 2 / r {\displaystyle \Phi (r)=0,b(r)=k^{2}/r} とする。さらに新たな空間座標の尺度として l = ± r 2 − k 2 {\displaystyle l=\pm {\sqrt {r^{2}-k^{2}}}} なる l {\displaystyle l} を導入し、変数変換を行う。 その結果、ワームホールを記述する計量は以下のような単純な表現に書き換えられる。 d s 2 = − c 2 d t 2 + d l 2 + ( k 2 + l 2 ) ( d θ 2 + sin 2 θ d ϕ 2 ) . {\displaystyle ds^{2}=-c^{2}dt^{2}+dl^{2}+(k^{2}+l^{2})(d\theta ^{2}+\sin ^{2}\theta d\phi ^{2}).\,} この式において l {\displaystyle l} は"想像図"に示されるようなワームホール球に向かって落下質点から引いた接線の長さを意味する。 l = 0 {\displaystyle l=0} のとき落下質点は半径 k {\displaystyle k} のワームホールの球面上に存在し、そこを超えると落下質点は反対側の宇宙に抜けることになる。ワームホールでは空間的に半径 k {\displaystyle k} より小さい領域へは立ち入ることができず、ここがブラックホールと同様に一種の地平面を形成することになる。 さらに、この計量の空間的な意味を掴むために時計を止めて d t = 0 {\displaystyle dt=0} とし、ワームホールへの落下質点の突入方向を θ = π / 2 {\displaystyle \theta =\pi /2} で固定してさらなる簡略化を行う。表記中に変数 r {\displaystyle r} を復活させ、さらに d z 2 = d l 2 − d r 2 {\displaystyle dz^{2}=dl^{2}-dr^{2}} で定義される z {\displaystyle z} 座標を導入すると、ワームホール計量はさらに単純な以下の表現にまとまる。 d s 2 = d z 2 + d r 2 + r 2 d ϕ 2 . {\displaystyle ds^{2}=dz^{2}+dr^{2}+r^{2}d\phi ^{2}.\,} これは円筒座標系の計量である。ここで z {\displaystyle z} 座標はワームホールで結ばれた2つの宇宙の間の距離を定義する超空間座標であり、落下質点の存在する宇宙の外を記述している。この計量を用いて図示された宇宙形状が"概念図"に示されるような有名な虫食い穴状の時空である。この図において宇宙に相当するのはトンネル状の平面上であり、筒の中は宇宙の外の超空間であって落下粒子が立ち入ることはない。 この時空図において z {\displaystyle z} 軸はトンネル形状の中心軸として存在しており、この中心軸から時空面までの超空間的な距離が r {\displaystyle r} 座標として記述される。上下の宇宙の接続点であるトンネルの中央にあたる円が r = k {\displaystyle r=k} の球面(地平面)に相当する。そして l {\displaystyle l} はその円からの時空面上での距離を記述することになる。
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